ICTを基盤とした卒前卒後のシームレスな医師の臨床教育評価システム構築のための研究

文献情報

文献番号
202203012A
報告書区分
総括
研究課題名
ICTを基盤とした卒前卒後のシームレスな医師の臨床教育評価システム構築のための研究
課題番号
21AC1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
田中 雄二郎(国立大学法人東京医科歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 山脇 正永(東京医科歯科大学 臨床医学教育開発学分野)
  • 岡田 英理子(東京医科歯科大学 臨床医学教育開発学分野)
  • 那波 伸敏(東京医科歯科大学 国際健康推進医学)
  • 木内 貴弘(東京大学 医学部附属病院)
  • 高橋 誠(北海道大学 大学院医学研究院)
  • 福井 次矢(東京医科大学 茨城医療センター)
  • 高橋 理(聖路加国際大学 公衆衛生大学院)
  • 大出 幸子(聖路加国際大学 公衆衛生大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
卒前臨床実習・卒後臨床研修をシームレスに評価できるICTの基盤構築を進めることが喫緊の課題となっている。我々はICTを活用した卒前卒後のシームレスな評価システム(EPOC2)の開発を進めてきた。EPOC2の卒後評価システムは2020年から運用を開始しており、利用施設・研修医数は、800施設、8000名を超えており、臨床研修医の全国データがEPOC2システムに入力されている。令和4年度の目的は、1)臨床実習における侵襲的医行為の評価方法の確立、2)統計解析に用いる全国データの抽出フォーマットの改良と、全国の利用者からのフィードバックをもとに評価システムの機能追加と改修、3) EPOC2データと外部データとの紐付けを行い、医育機関、地域、病院種類・規模・研修プログラムの種類等が評価に与える影響を分析、4)研修医評価票のつけやすさ、項目について課題を抽出すること、5) 米国、英国の等をはじめとする海外での電子Portfolio(ePortfolio)の使用状況について国際比較を行うことである。
研究方法
2022年度は、臨床教育評価システム研究班では共通データセットの出力の改修のため、Python 3.6を用いてデータ抽出プログラムのチューニングを実施した。続いて研究分担者や利用者の意見をもとにPG-EPOCの機能の追加、改修を実施した。全国の臨床研修病院で2020年4月から2022年3月まで(研修開始から24ヶ月間)臨床研修を行なった臨床研修医のデータの解析を各分担班で行った。
具体的には1)侵襲的医行為の評価方法の確立班では、基本的臨床手技の経験に関して、臨床研修修了時に到達すべき望ましいレベルを「ほぼ単独でできる」と定義し、このレベルに初めて到達するまでに要した月数を用いてKaplan-Meier法を用いた分析を行った。3)評価に影響を与えうる要因の分析班では、研修医の評価票のdataを用いて、研修の進行具合に関するtrajectory analysisを検討した。4)評価の信頼性、妥当性の分析班では、全国の研修指導医に対し、研修医評価票のつけやすさ、項目が網羅されているか、わかりにくい箇所がないかなど、Webによるフォーカスグループインタビューを実施した。5)国際比較研究班では、文献調査等からePortfolioの使用状況について、実施主体の評価、使用しているePortfolioの分析方法及びユーザビリティの調査を行った。
結果と考察
EPOC2のデータ項目数、データ量は莫大であるため、抽出時間が膨大である。抽出プログラムのチューニングにより、抽出時間は、20日から4日に改善した。また機能の改修と同時にEPOC2からPG(Postgraduate)-EPOCへ2023年1月10日に名称変更した。基本的臨床手技の各手技の解析では、Kaplan-Meier法を用いて、縦軸を手技が未習得の研修医の割合、横軸を研修開始時からの月数としてplotを行った。その結果、手技が行われる頻度や難易度により習得までの時間が異なっていた。また、研修医の自己入力と上級医や指導医の入力の解析結果を比較すると、入力者の違いにより手技の習得までにかかる時間が異なっていた。この時間の差については、研修医の自己評価入力後に後日指導医が入力するため、タイムラグが生じる可能性がある。指導医が入力しやすいようなシステムの改善は有用と考えられた。評価票の分析では、評価票A,B,Cの自己評価、指導医評価のtrajectory analysisから、評価項目により、特有のパターンがあることが示された。今後これらパターンの違いを規定する因子を探索していく。評価の信頼性、妥当性の解析では、8名の指導医に対してインタビューをおこなった。今後メンバーチェッキング後にthematic codingを実施する。海外のシステム国際比較では、国レベルで実施しているのは英国、カナダの卒後教育、スイスの卒前教育があり、複数の大学/病院で使用されているものとしては、米国、カナダ、台湾、オランダで存在していた。CC-EPOC及びEPOC2のような全国の研修医が卒前・卒後をシームレスにつなげて評価を記録していくnational levelのe-portfolio システムは日本独自の貴重な試みであるということが明らかになった。
結論
全国研修医のbig dataを研究に用いるため、データ抽出プログラムの改善とEPOC2システムの改善をおこなった。また、基本的臨床手技の習得に関する解析では、手技ごとに習得までにかかる時間の差が生じること、研修医の学修のプロセスは、項目によりそれぞれ特有のパターンがあることが示された。今後この貴重な全国レベルの研修医のデータを用いて引続き検討を行っていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2023-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202203012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
9,725,000円
差引額 [(1)-(2)]
275,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,694,619円
人件費・謝金 2,495,894円
旅費 60,225円
その他 2,167,723円
間接経費 2,307,000円
合計 9,725,461円

備考

備考
研究課題の使用額および未使用額を計算したところ、461円分の自己負担分が発生したため。

公開日・更新日

公開日
2024-02-29
更新日
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