ICTを利用した医学教育コンテンツの開発と活用に向けた研究

文献情報

文献番号
202203011A
報告書区分
総括
研究課題名
ICTを利用した医学教育コンテンツの開発と活用に向けた研究
課題番号
21AC1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
河北 博文(公益財団法人 日本医療機能評価機構)
研究分担者(所属機関)
  • 伴 信太郎(名古屋大学医学部附属病院総合診療部)
  • 岡崎 仁昭(自治医科大学 医学教育センター)
  • 松山 泰(自治医科大学 医学部 医学教育センター)
  • 淺田 義和(自治医科大学 医学教育センター)
  • 川平 洋(自治医科大学 医学部メディカルシュミレーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
10,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の医学教育を充実させて医療の質の向上を図るためには、卒前・卒後教育、生涯教育など各フェーズにマッチする標準化された質の高い医学教育コンテンツを大学の垣根を超えてAll Japanで作成して、広く医学生や臨床医等が利用できる体制を整備することが重要である。本研究は、ICTによる視聴覚素材を活用してコンピュータ上でシナリオ症例の診療を体験し、臨床推論、基本的臨床手技、EBMの応用などを自己学習できる教材を作成し、広く医学生や臨床医等が利用できる体制を整備することを目的とする。
 また、医師国家試験改善検討部会において医師国家試験のCBT化が示されているが 、CBT医師国家試験を実現するためには、画像・音声・動画などを用いたマルチメディア形式の試験問題を作成して、インターネットを介して、トライアル試験を実施して、試験システムの構築、実施のためのロジスティクスの検討などを行うこと、およびCBT試験問題を多数作問して試験問題ライブラリを構築することが重要である。本研究は、現状の医師国家試験の課題を改善できるようなICTを利用した試験システムを新たに構築することを目的とする。
研究方法
医学教育コンテンツについては、厚生労働省が示している臨床研修の到達目標に記されている経験すべき症候・疾患・病態、および文部科学省が示している医学教育モデル・コア・カリキュラムに記されている症候・病態を参照し、約50症候の教材を3年間で作成するため、全国12医療教育施設の15名の作成メンバーにより、月例会議、学会でのワークショップや対面会議などを通じて20症例の教材を新たに作成した。
 また、医師国家試験CBT化については、2021年度に使用したオープンソースシステムであるTAOを用いて協力を得た各大学においてトライル試験を実施した。試験問題は、画像・音声・動画などを取り入れてより実臨床に近い問題200問を作成するとともに、IRTによる分析を行った。
結果と考察
 医学教育コンテンツについては、2021年度に完成したコンテンツ作成マニュアルと教材作成用のひな型を活用し、意識障害、認知機能障害等20症例の教材を作成した。月例会議等での共同作業や検査、診察場面の動画などの素材の共有と開発、ワークショップによる人材の確保と養成を行った。今後、成果物を医学生に公開し、必要に応じてメンテナンスを可能とするための仕組みも検討する必要がある。
 医師国家試験CBT化については、医師国家試験の出題基準に従って200問を作成し、1日間でトライアル試験を16大学450名の医学生の協力のもと基本的にスムーズに実施した。試験問題は、画像・音声・動画などを取り入れてより実臨床に近い問題を作成した。
 PBL(paper based testing)では表示しにくい疾患の臨床症状などはCBTのメリットを生かし、動画等で出題することが可能であり、より実臨床に近い形で「知識」だけではなく、「技能」に関する問題が可能となる。
結論
 ICTを活用した多様なコンテンツをAll Japanで作成するための基盤は確立しつつあり、次の段階として、素材の共有と開発、動画の撮影・編集、模擬患者、Moodleへの教材化などに関していかに質を向上させ、効率化させるかが課題となる。
 CBT化を行うことにより、動画ファイルや音声ファイルなどマルチメディアファイルを問題に取り込むことが可能になり、実際の心音や呼吸音を聴かせた問題、およびParkinson病患者の安静時振戦や歩行障害の動画、意識障害の患者の搬入時の診察の動画を取り入れた問題などにより、より実臨床に近い問題を作成した。
 CBTトライアル試験問題に関してIRTの研究を行った。作問者とともに問題内容を精査し,設問の改善を検討するとともに,良問については、類似の新作問題を作成することで,項目プールの構築に役立てることができると考えられる。
 今後、CBT医師国家試験の実施に向けては、共用試験での経験と米国のUSMLEの経験および韓国、台湾における医師国家試験のCBT化の状況を参考にして研究する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2023-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-01
更新日
2023-06-13

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202203011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,960,000円
(2)補助金確定額
12,960,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 316,672円
人件費・謝金 2,883,218円
旅費 722,779円
その他 6,693,784円
間接経費 2,500,000円
合計 13,116,453円

備考

備考
物品費の増大はワークショップなど開催時に携帯性に優れた、動画撮影機材が必要となったためである。
謝金は、遠隔会議にて月例会議などが頻繁に開催可能となったため、会議謝金が増大した。
旅費はコロナ感染拡大で出張など自粛したため減少した。

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-