終末期の生活者の生き方を支える相談・支援マニュアル策定に関する研究

文献情報

文献番号
200905003A
報告書区分
総括
研究課題名
終末期の生活者の生き方を支える相談・支援マニュアル策定に関する研究
課題番号
H21-特別・指定-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
川島 孝一郎(仙台往診クリニック 診療部門)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
終末期医療のあり方に関する懇談会及び調査結果解析チームにて指摘された、終末期に関する各種用語(終末期・延命・尊厳・QOL・緩和医療・医療的無益等)に対する医師の知識不足が問題であることに対し、「説明の不備」として終末期の患者やその家族に及んでいることを示した上で、各種用語に関する医師への教育に使用し、ソフト面の体制整備に活用できるガイドラインとその解説編を作成する。また各種用語の使用の根幹となる構成概念を解説し、ICF(国際生活機能分類)の理念とともに生き方支援を明示する。
研究方法
『生きることの集大成を支える相談支援ガイドライン』作成のための検討委員会による研究検討会議を全7回開催し、その中で以下の内容に関し議論を重ね、まとめた。
・概念の再検討(実体概念と構成概念)
・終末期の概念整理
・緩和ケアの展開
・ICFの理念と整理
・ICFの理念に基づく各用語の再定義
・生きることの全体を支える体勢づくり
・「生き方を支える説明」を実践する手順 等 
結果と考察
生活活動・社会参加・環境因子・個人因子等との融合的身体機能として全体を捉えるICF(国際生活機能分類)に基づいた「生きることの集大成を支える相談・支援ガイドライン」を作成した。これは、生きることの全体を支えるために関連する職種全てが利用可能なガイドラインであり、ICDによるこれまでの集合的身体論のみでは不十分であることを示した。
本ガイドラインとその解説が正しく活用されることで、生活者は、治らない身体を持ちながら「生きてよかった」と生きることの集大成を現出させることができ、関連する職種は「生きることの全体を支える」ことを共通言語として連携を組み、「医師-患者関係」に属する様々な課題の解決につながると考えられる。また医療計画、医療費適正化計画、介護保険事業計画等の推進をソフト面から支えることになり、同時に終末期における対象者の意思に沿った医療費・介護費用の適正な分配が行われる。
結論
本研究で作成した「生きることの集大成を支える相談支援ガイドライン」により、ソフト面の整備体制確立を可能とし、ハードとしての体制整備では成し得ない「医師-患者関係」に属する課題を処理することが可能となる。重症であっても生きて行ける重要な道筋を示すものである。これにより治らない障害をありのままに受けとめることから開始される「生き方を支える説明」が可能となる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200905003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
終末期に関する各種用語(終末期・延命・尊厳・QOL・緩和医療・医療的無益等)に対する医師の知識不足の問題は「説明の不備」として終末期の患者やその家族に及んでいる。説明不足が招く不完全な自己決定は、機能しない支援体制のままに最期を迎える事態を引き起こしている。各種用語に関する医師の教育にも、本ガイドラインとその解説編はきわめて有効なツールといえる。また解説編では、各種用語の使用の根幹となる構成概念を解説し、ICF(国際生活機能分類)の理念とともに生き方支援を明示している。
臨床的観点からの成果
従来から議論されてきた終末期、延命、尊厳、QOL、緩和医療、医療的無益等の課題を構成概念とICFの理念から、新たに整理されたことで、個別具体的な見通しを立てたプロセスを重視した療養生活支援を提供可能とし、終末期の対象者は安心・安全に残された日々を安穏に過ごすことができる。同時に医療とケアの各職種に活用されることで、在宅での療養生活が円滑に行われ、より密な多職種連携が図られる。またその結果、医療計画、医療費適正化計画、介護保険事業計画等の推進をソフト面から支えることになる。
ガイドライン等の開発
本ガイドラインは、終末期医療のあり方に関する懇談会及び調査結果解析チームによって、終末期のとらえ方や各種用語に対する医師の知識不足による「説明の不備」を根底から改善するため、終末期の対象者に対する各医療とケアの関連職種が行う支援内容のマニュアル化の必要性が確認されたことを発端とする。本研究で作成された『生きることの集大成を支える相談支援ガイドライン』は、平成21年12月24日開催の第5回終末期医療のあり方に関する懇談会において、懇談会資料として用いられた。
その他行政的観点からの成果
平成21年12月24日開催にされた第5回終末期医療のあり方に関する懇談会の中で、医療問題の原因が主として「医師等の説明の不備」に起因していることを、本ガイドラインを参考資料に用いながら指摘した。そのことで行政によるハードとしての体制整備と同時に「医師-患者関係」に帰属するこの課題を処理するために、本研究成果を用いた先駆的で早急なソフト面の整備体制確立を示唆することができた。ICFの理念に沿った本ガイドラインは、医師への再教育、医学教育への応用、関連職種との連携ツールに運用することが可能である。
その他のインパクト
平成22年4月に開催された日本弁護士連合会「医療同意を含む終末期医療の諸問題に関する勉強会」において、本ガイドラインを資料に使用しながら説明を行った。また同年4月、衆議院第二議員会館において、“脳死”臓器移植を考える市民と議員の勉強会「重症患者の在宅支援医療に携わって-医師は脳死患者と家族にどう向き合うべきか!?-」と題し、本ガイドラインを用いた。宮城県医師会在宅医療推進事業の中でも在宅医療推進に不可欠な指針として提出した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
11件
医学雑誌等における論文 4件 厚生労働科学研究等(主任)3件 厚生労働科学研究等(分担)4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
平成21年厚生労働科学研究費(難治性疾患克服研究事業)特定疾患患者の生活の質の向上に関する研究班 「終末期医療の概念整理 差し控え・中止と不作為・作為を考える」12/16 東京医科歯科大学
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
平成21年12月24日に開催された第5回終末期医療のあり方に関する懇談会の資料として、本報告書中のⅢ.「生きることの集大成を支える相談支援ガイドライン」が提出され、本題が検討された。
その他成果(普及・啓発活動)
14件
各地域の介護支援専門員協議会、各都道府県の在宅医療推進事業、厚生労働省医薬食品局で開催した医薬分業指導者協議会等の中で、本研究のガイドラインを使用し、生活を支える医療の普及・啓発に努めた。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-