秋以降の新型インフルエンザ流行における医療体制・抗インフルエンザウイルス薬の効果などに関する研究

文献情報

文献番号
200905001A
報告書区分
総括
研究課題名
秋以降の新型インフルエンザ流行における医療体制・抗インフルエンザウイルス薬の効果などに関する研究
課題番号
H21-特別・指定-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 宏一郎(国立国際医療センター 戸山病院 国際疾病センター)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

行政効果報告

文献番号
200905001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新型インフルエンザのウイルス型、薬剤耐性、薬効評価について検討した。587検体が採取され、遺伝子の耐性変異はなく、オセルタミビル、ザナミビルに感受性で、HA解析上、ニューヨーク系のCluster 2に属した。季節性インフルは検出されなかった。小児にオセルタミビル(170名)、ザナミビル(106名)を投与で、約9割の患者が36時間以内に解熱し著効を示した。季節性インフルH1N1と比較しても明らかに薬剤投与時の解熱が早かった。息苦しさを訴えった患者の多くはSPO2を低下している傾向にあった。
臨床的観点からの成果
国内外の症例の臨床的検討から、我が国のパンデミック H1N1 2009の人的被害が国際的にみて低かったことは、我が国の社会的、医療インフラの水準の高さ、国民の意識の高さタミフルの備蓄が反映した結果であると強く推論される。つまり抗ウイルス薬の早期投与が重要であったことが強く示唆される。メキシコ国立呼吸器疾患センターにおける死亡例の検討より、いずれも合併症を有する患者であったが、発症から治療(タミフル投与)開始までの時間が長いことが認められた。主な重症肺炎はDADであった。
ガイドライン等の開発
我が国におけるパンデミック H1N1 2009の臨床像を調査し、結果と内外の知見をもって適切な診療方針を提案し、診療の標準化とガイドライン作成を企画した。厚生労働省に届けられた症例のうち、6例のパンデミック H1N1 2009感染例をまとめて症例集を作成、厚生労働省のホームページにおいて公開した。診療に関するガイドラインを作成し、厚生労働省ホームページにおいて公開した。
その他行政的観点からの成果
神戸の医療体制調査により、①国内流行を察知する地域のサーベイランスシステムの充実、②地域の人口、需要に合わせた発熱外来、隔離病床数等の確保、③正確な情報をリアルタイムに提供するシステム、④医療機関同士、行政との連携体制、⑤財政的支援などが必要であることが考察された。また、新抗インフル薬、医療資材等の流通状況調査では在庫不足等で「診療に影響があった」施設はなく、これまでの行政側の指導の効果が推察出来た。迅速診断キット、手指消毒薬、マスク等の不足は深刻であり今後の準備体制の必要が提起された。
その他のインパクト
神戸での公開市民講座(2010/1/20)、NHK WORLD RADIO JAPAN、ラジオNIKKEIでの講演、研究成果発表した。墨国現地調査を厚生労働省、文部科学省、外務省、在墨国大使館に報告。医学TV会議システムにて、豪国-越国-日本を結んだ各国からの症例報告会。新型インフルの重症、死亡例は越国で経験しているH5N1重篤・死亡例と臨床的に類似しており、越国でこれまで展開してきたH5N1に対する治療戦略は、今回の新型インフル、将来のインフルにも共通したものと認識出来た。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
メキシコと日本における新型インフルエンザの重症例の検討、社会的背景の検討など
その他成果(普及・啓発活動)
25件
医師会、学会、自治体等が主催する勉強会に講師として参加

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Zarakt H, Saito R, Suzuki Y, et al.
The Genetic Makeup of Amantadine-Resistant and Oseltamivir-Resistant Human Influenza A/H1N1 Viruses.
J Clin Microbiol. , 48 (4) , 1085-1092  (2010)
原著論文2
Baranovich T, saito R, Suzuki R, et al.
Emergence of H274Y oseltamivir-resistant A(H5N1) influenza viruses in Japan during the 2008-2009 season.
J Clin Virol. , 47 (1) , 23-28  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-