PRO-CTCAEの日本語版の実臨床および臨床試験における有効性の評価

文献情報

文献番号
202203002A
報告書区分
総括
研究課題名
PRO-CTCAEの日本語版の実臨床および臨床試験における有効性の評価
研究課題名(英字)
-
課題番号
20AC1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
山口 拓洋(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科医学統計学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 下妻 晃二郎(学校法人立命館 立命館大学 生命科学部)
  • 中島 貴子(京都大学 医学部附属病院 次世代医療・iPS細胞治療研究センター (Ki-CONNECT))
  • 清水 千佳子(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター がん総合診療センター / 乳腺・腫瘍内科)
  • 渡邊 知映(昭和大学 保健医療学部)
  • 矢嶋 宣幸(昭和大学 医学部内科学講座リウマチ膠原病内科学部門)
  • 佐野 元彦(星薬科大学 実務教育研究部門)
  • 東 加奈子(東京医科大学 薬剤部)
  • 関根 祐介(東京医科大学病院 薬剤部)
  • 長沼 未加(クオール株式会社 クオールアカデミー・教育研修部)
  • 川口 崇(東京薬科大学 医療実務薬学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
15,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PRO-CTCAE日本語版の実臨床及び臨床試験・臨床研究における有効性評価と利用推進を目的とする。
研究方法
臨床研究の対象者の登録とデータの収集を中心にマネジメントし、収集されたデータの解析と評価を行う。
結果と考察
①がんの日常診療におけるePROによる症状モニタリングの有用性の評価および、有害事象とQoLの実態調査に関するレジストリ研究
電子カルテと連動したePROプラットフォームを用いたがん患者レジストリ構築の研究は、通常診療コホート(紙製の患者日誌)、ePRO診療コホートにおいて症例登録を開始し、2022年度末(3月23日時点、以下同じ)までに通常診療コホート141例、ePRO診療コホート132例が登録された。PRO-CTCAE評価を含むePRO-電⼦カルテ統合システムを日常診療へ実装することは可能であり、様々なメリットがあることが考えられた。
②免疫チェックポイント阻害薬を投与しているがん患者におけるePROを用いた症状関連有害事象に関するレジストリ研究
外来化学療法室で免疫チェックポイント阻害薬を投与している患者レジストリの組み入れについて、219例が登録されている。医療者はePROで得られたscoreの解釈を行い、行動できる必要があり、PRO-CTCAEの情報に病歴を合わせることで病態を推測できれば、受診勧奨や支持療法提案を行うことができると考えられた。
③補助化学療法後の乳がん患者を対象とした電子的患者報告アウトカムによる遷延性症状関連有害事象に関する観察研究
術前・術後補助化学療法を終了する乳がん患者に対し毎月ePROによる有害事象情報を収集する患者レジストリについて、235例が登録されている。多くの患者さんが協力的で積極的に入力していることからもPRO-CTCAE評価を含むePROに対する興味関心は高いと考えられたが、一方で、デバイスの問題、医療施設のインフラ整備状況など課題もみられた。
④クオール薬局におけるPRO-CTCAEを用いた外来がん患者継続的薬学管理の有用性研究:多施設共同研究
外来がん薬物治療患者に対する薬局薬剤師の継続的薬学的管理において、電子化されたPRO-CTCAEの有用性を調査するための研究の登録を開始し、45例が登録された。薬局薬剤師が行うがん患者の薬学的管理において、PRO-CTCAE評価を含むePROは1次スクリーニングとして有効であることが確認された。
⑤全身性エリテマトーデス(SLE):Lupus registry of nationwide institutions: LUNA
非がん患者SLEを対象としたPRO-CTCAEの有用性の検討について、201例が登録された。膠原病領域のPRO-CTCAE評価を含むePROはまだ我が国ではメジャーではなく、本研究が活性化につながる可能性がある。
⑥HIV領域:抗レトロウイルス療法開始後のHIV感染症患者における患者報告による症状関連有害事象に関する研究
抗HIV 療法の有害事象管理に PRO-CTCAEを導入し、症状関連有害事象を明らかにする研究について、121例が登録されている。PRO-CTCAE評価を含むePROについて肯定的な意見があったが、患者自身へのメリットが少ないと入力率は低下する可能性が考えられた。
⑦アンケート調査
上記②PROSPECT研究、③ASTRO研究、⑥RESPECT研究に参加した患者にePROに関するアンケート調査を実施した。セッティングの違いによる研究間差も認められたが、PRO-CTCAE評価を含むePROへの患者の満足度は総じて高かった。
⑧その他
有害事象評価にPRO-CTCAEを含めた「進行再発がん患者におけるオピオイド鎮痛薬導入前後の心理的障壁と疼痛:多施設共同研究」については、51例が登録された。また、薬局のセッティングでePROを活用する「経口抗がん薬開始後の消化器がん患者を対象としたePROによる症状関連有害事象のフォローアップに関する研究:観察研究」については、17例が登録されている。有害事象評価にPRO-CTCAEを含めた「AYA世代のがんサバイバーシップケアを促進するためのモバイル端末によるセルフケアプログラムの構築」研究について、18例が登録されている。
PRO-CTCAE小児版(Ped-PRO-CTCAE)は、National Cancer Institute(NCI)については、NCIと研究体制や方法の調整を続けている。
患者、一般国民への(e)PROの啓発・普及および(e)PRO臨床研究への理解を深め参加を円滑化するための(e)PROビデオコンテンツを作成した。
結論
実臨床及び臨床試験・臨床研究においてセッティングに応じた利活用を考慮すれば、PRO-CTCAEは医療者・患者双方にとって有効であり、利用可能であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202203002B
報告書区分
総合
研究課題名
PRO-CTCAEの日本語版の実臨床および臨床試験における有効性の評価
研究課題名(英字)
-
課題番号
20AC1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
山口 拓洋(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科医学統計学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 下妻 晃二郎(学校法人立命館 立命館大学 生命科学部)
  • 中島 貴子(京都大学 医学部附属病院 次世代医療・iPS細胞治療研究センター (Ki-CONNECT))
  • 清水 千佳子(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター がん総合診療センター / 乳腺・腫瘍内科)
  • 渡邊 知映(昭和大学 保健医療学部)
  • 矢嶋 宣幸(昭和大学 医学部内科学講座リウマチ膠原病内科学部門)
  • 佐野 元彦(星薬科大学 実務教育研究部門)
  • 東 加奈子(東京医科大学 薬剤部)
  • 関根 祐介(東京医科大学病院 薬剤部)
  • 長沼 未加(クオール株式会社 クオールアカデミー・教育研修部)
  • 川口 崇(東京薬科大学 医療実務薬学教室)
  • 宮路 天平(東京大学大学院医学系研究科 臨床試験データ管理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PRO-CTCAE日本語版の実臨床及び臨床試験・臨床研究における有効性評価と利用推進を目的とする。
研究方法
2020年度は全体の研究計画の作成及び実施体制を構築する。2021年度は各研究計画書の倫理委員会承認後にEDC/ePROシステムを構築し研究を実施する。2022年度は対象者の登録とデータの収集を中心にマネジメントし、収集されたデータの解析と評価を行う。
結果と考察
①がんの日常診療におけるePROによる症状モニタリングの有用性の評価および、有害事象とQoLの実態調査に関するレジストリ研究
電子カルテと連動したePROプラットフォームを用いたがん患者レジストリ構築の研究は、通常診療コホート(紙製の患者日誌)、ePRO診療コホートにおいて症例登録を開始し、2022年度末(3月23日時点、以下同じ)までに通常診療コホート141例、ePRO診療コホート132例が登録された。PRO-CTCAE評価を含むePRO-電⼦カルテ統合システムを日常診療へ実装することは可能であり、様々なメリットがあることが考えられた。
②免疫チェックポイント阻害薬を投与しているがん患者におけるePROを用いた症状関連有害事象に関するレジストリ研究
外来化学療法室で免疫チェックポイント阻害薬を投与している患者レジストリの組み入れについて、219例が登録されている。医療者はePROで得られたscoreの解釈を行い、行動できる必要があり、PRO-CTCAEの情報に病歴を合わせることで病態を推測できれば、受診勧奨や支持療法提案を行うことができると考えられた。
③補助化学療法後の乳がん患者を対象とした電子的患者報告アウトカムによる遷延性症状関連有害事象に関する観察研究
術前・術後補助化学療法を終了する乳がん患者に対し毎月ePROによる有害事象情報を収集する患者レジストリについて、235例が登録されている。多くの患者さんが協力的で積極的に入力していることからもPRO-CTCAE評価を含むePROに対する興味関心は高いと考えられたが、一方で、デバイスの問題、医療施設のインフラ整備状況など課題もみられた。
④クオール薬局におけるPRO-CTCAEを用いた外来がん患者継続的薬学管理の有用性研究:多施設共同研究
外来がん薬物治療患者に対する薬局薬剤師の継続的薬学的管理において、電子化されたPRO-CTCAEの有用性を調査するための研究の登録を開始し、45例が登録された。薬局薬剤師が行うがん患者の薬学的管理において、PRO-CTCAE評価を含むePROは1次スクリーニングとして有効であることが確認された。
⑤全身性エリテマトーデス(SLE):Lupus registry of nationwide institutions: LUNA
非がん患者SLEを対象としたPRO-CTCAEの有用性の検討について、201例が登録された。膠原病領域のPRO-CTCAE評価を含むePROはまだ我が国ではメジャーではなく、本研究が活性化につながる可能性がある。
⑥HIV領域:抗レトロウイルス療法開始後のHIV感染症患者における患者報告による症状関連有害事象に関する研究
抗HIV 療法の有害事象管理に PRO-CTCAEを導入し、症状関連有害事象を明らかにする研究について、121例が登録されている。PRO-CTCAE評価を含むePROについて肯定的な意見があったが、患者自身へのメリットが少ないと入力率は低下する可能性が考えられた。
⑦アンケート調査
上記②PROSPECT研究、③ASTRO研究、⑥RESPECT研究に参加した患者にePROに関するアンケート調査を実施した。セッティングの違いによる研究間差も認められたが、PRO-CTCAE評価を含むePROへの患者の満足度は総じて高かった。
⑧その他
有害事象評価にPRO-CTCAEを含めた「進行再発がん患者におけるオピオイド鎮痛薬導入前後の心理的障壁と疼痛:多施設共同研究」については、51例が登録された。また、薬局のセッティングでePROを活用する「経口抗がん薬開始後の消化器がん患者を対象としたePROによる症状関連有害事象のフォローアップに関する研究:観察研究」については、17例が登録されている。有害事象評価にPRO-CTCAEを含めた「AYA世代のがんサバイバーシップケアを促進するためのモバイル端末によるセルフケアプログラムの構築」研究について、18例が登録されている。
患者、一般国民への(e)PROの啓発・普及および(e)PRO臨床研究への理解を深め参加を円滑化するための(e)PROビデオコンテンツを作成した。
結論
実臨床及び臨床試験・臨床研究においてセッティングに応じた利活用を考慮すれば、PRO-CTCAEは医療者・患者双方にとって有効であり、利用可能であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202203002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
患者自身による有害事象評価の世界標準であるPRO-CTCAEに関する日本人データが、がん・非がんを問わず十分に蓄積された。医師の外来のみ、外来化学療法室が中心、あるいは調剤薬局を中心にePROを活用するセッティング等の日常診療や臨床試験・臨床研究の様々な状況においてPRO-CTCAEの有効性が評価され、利用推進に向けてのアクションに結びつく情報が得られた。セッティングに応じた利活用を考慮すれば、PRO-CTCAEは医療者・患者双方にとって有効であり、利用可能であると考えられた。
臨床的観点からの成果
日常診療・臨床研究において、様々な疾患領域や診療セッティングでPRO-CTCAE評価を含むePROの活用が実践できること、そのePRO活用に対する患者の満足度も高いことが示された。ePROの活用が普及することによって、医療者が過小評価する傾向にある患者の症状に関する正確な情報を、医療者はタイムリーに把握することができるようになる。今後、ePROによる有害事象マネジメントによって、患者医療者間および医療者間のコミュニケーションが円滑になることが期待される。
ガイドライン等の開発
本研究班も協力し、厚生労働省臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業を構成する研究班の一つである「関連学会の取組と連携したPRO ガイドラインの作成」班(研究代表者:下妻晃二郎(立命館大学))から、PRO-CTCAEの使用方法やスコアリング方法なども含めた「臨床試験のためのPRO使用ガイダンス」が公表された(ライフサイエンス出版 患者報告アウトカム評価関連 特設ページhttps://www.lifescience.co.jp/pro/index.html)。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果から、日常診療や臨床試験・臨床研究へのPRO-CTCAE評価を含むePROの導入の現況や阻害要因が明らかになってきた。また、実際のPROによる有害事象評価のデータが得られ、医薬品の安全性評価に資する膨大な情報が得られた。今後も製薬企業や患者会などと協力することで、PRO-CTCAE評価を含むePROの普及・実装がより進展していくと考えられる。
その他のインパクト
患者、一般国民へのPRO-CTCAE評価を含む(e)PROの啓発・普及および(e)PRO臨床研究への理解を深め参加を円滑化するため、 (e)PROに期待する医療関係者、患者の声などを紹介している(e)PROビデオコンテンツ(医療関係者からePROへの期待、患者さんの声を聞く、ePROの意義)を作成し、Webサイト(https://oncolo.jp/epro/)へ掲載した。動画は大学の選択授業のe-Learningでも活用するなどした。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
45件
前回よりプラス4件
その他論文(和文)
1件
前回よりプラス1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
前回よりプラス12件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kuniyoshi O, Sano M, Nakano Y, et al.
Protocol for the ASTRO study (SSOP-01): a multicentre prospective cohort study investigating adverse events based on electronic patient-reported outcomes in patients with breast cancer after adjuvant chemotherapy.
BMJ Open , 13 (9) , e071500-  (2023)
10.1136/bmjopen-2022-071500
原著論文2
Hirata T, Kawaguchi T, Azuma K, et al.
Registry study of immune-related adverse events using electronic patient-reported outcome in patients with cancer receiving immune checkpoint inhibitors: protocol for a multicentre cohort study.
BMJ Open , 13 (11) , e073724-  (2023)
10.1136/bmjopen-2023-073724

公開日・更新日

公開日
2023-06-09
更新日
2025-04-30

収支報告書

文献番号
202203002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,410,000円
(2)補助金確定額
20,410,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,866,120円
人件費・謝金 599,331円
旅費 615,112円
その他 11,647,981円
間接経費 4,710,000円
合計 20,438,544円

備考

備考
研究分担者:佐野 元彦
分担金が1,000,000円のところ、実支出額が1,000,001円。
(利息1円)

研究分担者:関根 祐介
分担金が500,000円のところ、実支出額が508,543円。
(+8,543円)

研究分担者:長沼 未加
分担金が200,000円のところ、実支出額が220,000円。
(+20,000円)

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-