文献情報
文献番号
202202005A
報告書区分
総括
研究課題名
ICD-11の我が国における普及・教育に資する研究
課題番号
22AB1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
末永 裕之(一般社団法人日本病院会 執行部)
研究分担者(所属機関)
- 須貝 和則(国立国際医療研究センター 医事管理課)
- 住友 正幸(徳島県立三好病院)
- 瀬尾 善宣(社会医療法人医仁会 中村記念病院 診療部 脳神経外科)
- 高橋 長裕(公益財団法人ちば県民保健予防財団 総合検診センター)
- 塚本 哲(日本保健医療大学 保健医療学部)
- 牧田 茂(埼玉医科大学国際医療センター心臓リハビリテーション科)
- 松本 万夫(埼玉医科大学国際医療センター 医学部)
- 水島 洋(アマゾンウェブサービスジャパン合同会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 水島洋(2050219630)
所属機関名(令和4年度中に異動)
旧)国立保健医療科学院
新)アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
研究報告書(概要版)
研究目的
<ICD-11研修会の実施と考察>
令和3年度の研究(我が国におけるICD-11コーディング導入に関する問題点の抽出と解決及び先進国における疾病統計に係る情報分析(19AB0201))において作成した教材をさらに洗練されたものとし、ICD-11コーディングの指導に際しての問題点の把握や指導方法の確立、およびICD-11指導者の育成を目的とした。
<がん34症例パイロットスタディに係わる研究>
WHO MbRG(WHO Morbidity Reference Group、世界保健機関 疾病分類グループ) は2022年の年次会議において、ICD-11のがん疾患のコーディングについて継続的に議論していくこととし、目標としてICD-11のがんに関する改善を提案することとし、2022年9月26日付けでMbRGよりMbRGメンバーに対して、「34題の癌疾患」をコーディングするパイロットスタディが送付された。本邦では厚生労働省国際分類情報管理室を介してWHOの許可のもと、当研究班がこれを担当し、コーディング結果やコメントを班活動の一環として報告することとなった。
<ICD-11 TEXT 2023の作成>
ICD-11のアップデート内容も踏まえ、ICD-11研修会の実施により得られた知見を盛り込み、各地域において指導者がICD-11コーディングを普及していくツールを提供するため、新たな教材を作成する。
令和3年度の研究(我が国におけるICD-11コーディング導入に関する問題点の抽出と解決及び先進国における疾病統計に係る情報分析(19AB0201))において作成した教材をさらに洗練されたものとし、ICD-11コーディングの指導に際しての問題点の把握や指導方法の確立、およびICD-11指導者の育成を目的とした。
<がん34症例パイロットスタディに係わる研究>
WHO MbRG(WHO Morbidity Reference Group、世界保健機関 疾病分類グループ) は2022年の年次会議において、ICD-11のがん疾患のコーディングについて継続的に議論していくこととし、目標としてICD-11のがんに関する改善を提案することとし、2022年9月26日付けでMbRGよりMbRGメンバーに対して、「34題の癌疾患」をコーディングするパイロットスタディが送付された。本邦では厚生労働省国際分類情報管理室を介してWHOの許可のもと、当研究班がこれを担当し、コーディング結果やコメントを班活動の一環として報告することとなった。
<ICD-11 TEXT 2023の作成>
ICD-11のアップデート内容も踏まえ、ICD-11研修会の実施により得られた知見を盛り込み、各地域において指導者がICD-11コーディングを普及していくツールを提供するため、新たな教材を作成する。
研究方法
1,「ICD-11の我が国における普及教育」を目的として、先行研究(先述)で作成した教材を用いて、ICD-11ウェブブラウザーを用い診療情報管理士を対象としたコーディング研修会を行い、参加者の理解、ICD-11ウェブブラウザー使用時の問題点及び教材の改善点の抽出を参加者のアンケート結果より行った。また、各種学会におけるICD-11に関する広報活動の展開のため対象学会を選定/交渉した。2,WHOのMbRG (Morbidity Reference Group)によるICD-11腫瘍分類のパイロットスタディに参加し、腫瘍コーディングの問題点を検討した。
結果と考察
1,研修会:全国3か所で施行し109名が受講した。このうち66名からアンケート回答を得た。その結果、コンピューターベースであるICD-11コーディングに習熟するには実際の端末を用いた個々の研修が重要であることが示された。ICD-11英語版の自動翻訳を活用したコーディングには限界があり早期の日本語版公表が期待された。ICD-10に比べICD-11では詳細なコーディングが可能であるが、内容が広範かつ複雑で医学知識、解剖学、病理学の知識がより必要であることが示された。ICD-11特有のコード体系はICD-10に比べ数字とアルファベットが混在し、コードと疾患がイメージとして結びつきにくいこと、クラスターコーディング、ポストコーディングに習熟が必要であることが示された。エクステンションコードにおける種々の重症度等の分類選択に難渋することが示され改善の余地があることが示された。本研修会では、実際の端末によるコーディング実習により、ICD-11の詳細な理解とコーディングにおける技術面の習熟に寄与することができた。また、本研修会の経験からICD-11TEXT2023を作成した。各種学会におけるICD-11に関する広報活動展開のため対象となる学会に関しては、脳神経外科学会、日本腎臓リハビリテーション学会、日本不整脈心電学会においてセッションを計画中である。
2,腫瘍分類のパイロットスタディ:MbRGより出題された「34題の癌疾患」について全国の診療情報管理士53名がそれぞれ個別でコーディングをおこなった。コード全体の正解率は、全体で0.654±0.239、ステムコード0.882±0.170、エクステンションコード0.772±0.224であった。ステムコードに比べエクステンションコードの正解率が低かった。要因として、①5〜6桁目のY code、Z codeなど詳細不詳コードの選択の不確実性、②エクステンションコードにおけるステージ、グレードコード選択の不確実性③ステムコードが不詳細な場合に詳細項目の付加に過誤が生じやすい。が挙げられた。
2,腫瘍分類のパイロットスタディ:MbRGより出題された「34題の癌疾患」について全国の診療情報管理士53名がそれぞれ個別でコーディングをおこなった。コード全体の正解率は、全体で0.654±0.239、ステムコード0.882±0.170、エクステンションコード0.772±0.224であった。ステムコードに比べエクステンションコードの正解率が低かった。要因として、①5〜6桁目のY code、Z codeなど詳細不詳コードの選択の不確実性、②エクステンションコードにおけるステージ、グレードコード選択の不確実性③ステムコードが不詳細な場合に詳細項目の付加に過誤が生じやすい。が挙げられた。
結論
ノートパソコン等の情報端末によるコーディング実習は、ICD-11の理解とコーディングにおける技術面の習熟に有用であった。二つの研究から、コードが数字とアルファベットの混合で疾患のイメージをもちにくいこと。コード選択基準が曖昧な場合、コード選択に過誤が生じやすくなることが指摘され、適切なコード選択ルールが必要と思われた。また英語翻訳の差から異なるコード選択となる可能性があり、早期のICD-11公式日本語訳の公表が待たれる。
公開日・更新日
公開日
2024-06-06
更新日
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