地域包括ケアシステムにおいて活用可能な国際生活機能分類(ICF)による多領域にまたがる評価手法の確立に資する研究

文献情報

文献番号
202202003A
報告書区分
総括
研究課題名
地域包括ケアシステムにおいて活用可能な国際生活機能分類(ICF)による多領域にまたがる評価手法の確立に資する研究
課題番号
20AB1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
向野 雅彦(北海道大学病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 孝子(兵庫県立大学 経営研究科)
  • 小松 雅代(大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
  • 德永 亜希雄(橫浜国立大学 教育学部)
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院 統括研究官)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年,国内外で急激に進む高齢化に対応し, 地域包括ケアシステムの多領域における最適化を図っていくにあたり,その実態およびそれに対する施策の効果を正確に理解していく上で,日常生活活動(以下ADL)をはじめとする生活機能についての評価を統一的なルールの下で行い,国際的にも比較可能な統計情報とすることは重要である. 国際生活機能分類(ICF)はそのような生活機能評価の標準化に適した構造を持っており,実際の活用方法について臨床現場に適した検討が求められている.特に,活用の中心的な場の一つとなる地域包括ケアシステムにおける医療・介護連携への活用を始めとして,様々な領域での実地における活用のための具体的な取り組みと,その使用可能性の検証が必要不可欠である.
そこで本研究は,地域包括ケアシステムにおいて活用可能な多領域にまたがるICFの評価手法の確立に向けた基礎資料を提示するため,1)多領域におけるICFを活用したデータの収集・分析に基づく活用例の提示,2)既存情報を活用したICFの評価法の開発を目的とした取り組みを実施した.
研究方法
初年度および2年度には,①医療分野において進められるICD-11 V章,そして②福祉分野で活用されるWHO-DAS2.0(WHO disability schedule2.0),そして,③教育分野で活用されるICFを取り上げ,それぞれで基礎調査を行うとともに調査用の質問紙を開発し,実地でテストを行うことにより有用性・妥当性の検証を実施した.また,既存情報を活用して生活機能情報を収集,分析を行うための仕組みの構築に取り組んだ. 研究の最終年度である今年度は,実際の活用に向けた活用事例の提示をテーマとして,1) ICD-11 V章のリハビリテーション分野における活用,2)WHO-DAS2.0の障害福祉サービスおよび統計への活用,3)独自にICFから抜粋した項目を用いた保育,特別支援学級の教育における活用,の各分野においてそれぞれ取り組みを行った.また, 既存の評価からICFへの換算式の作成に関しても実証に取り組んだ.
結果と考察
今年度の事業においては, 主に初年度および2年目に作成したマニュアルや評価ツールを実際に実際の活用例の提示に取り組み,リハビリテーション臨床におけるICD-11V章"一般的機能の構成要素",障害福祉事業所におけるWHO-DAS2.0,障害教育分野において作成されたICFの共通シート用の項目セット,健康統計におけるWHO-DAS2.0の活用についてそれぞれ検証をおこない,その結果,リハビリテーションの分野においては自立度の段階に応じた目標設定と生活機能のモニタリング,就労支援における生活機能評価と目標設定,教育分野における支援の最適化,健康統計における評価指標としての活用など,それぞれの分野において具体的な活用手法の提示を行うことができた.また,既存の評価を用いたICFの情報収集を進める上で重要となる換算式について,FIMを例としてアンケートによる換算式の作成を前年度に作成したルールに基づき実際に試行した.ICFは普及の推進がなされている状況にあるが,統一された枠組みで生活機能を総合的に評価できるシステムを作ることは,ICDにコードされる様々な疾患が患者にどのように映るのかを深く理解し,患者を中心とした医療・福祉を実現する上で重要である.今後はこれらの成果を橋頭堡として,利用促進に向けた取り組みをさらに幅広く具現化していくことが求められる.
結論
今年度の事業においては,多領域におけるICFの現場における活用方法について,具体的な手法の検証を行った.今後はこれらの成果を基礎として,社会実装の推進に向けた取り組みが求められる.

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202202003B
報告書区分
総合
研究課題名
地域包括ケアシステムにおいて活用可能な国際生活機能分類(ICF)による多領域にまたがる評価手法の確立に資する研究
課題番号
20AB1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
向野 雅彦(北海道大学病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 孝子(兵庫県立大学 経営研究科)
  • 小松 雅代(大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
  • 德永 亜希雄(橫浜国立大学 教育学部)
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院 統括研究官)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国をはじめ, 諸外国で例を見ないスピードで高齢化が進行し, 医療,福祉を取り巻く環境は大きく変化がみられている.その急激な社会状況の変化に対して地域包括ケアシステムの多領域における最適化を図っていくにあたり,その実態およびそれに対する施策の効果を正確に理解していく上で,日常生活活動(以下ADL)をはじめとする生活機能についての評価を統一的なルールの下で行い,国際的にも比較可能な統計情報を収集する環境を作ることは重要である.WHOが策定する国際中心分類の一つである国際生活機能分類(以下ICF)は,2001年にWHO総会において採択された生活機能と障害の国際分類で,心身機能・身体構造,活動,参加,環境因子といった多領域の評価を念頭に置いて開発されており,そのような情報の標準化に適した構造を持つ.高齢化の進む社会において,生活機能を評価することの重要性は近年ますます強調されており,2018年6月に公表された国際疾病分類の改訂版(以下ICD-11)では,ICFをベースとした"生活機能評価に関する補助セクション"(V章)が新設された.
 このような状況下にあって, ICFおよびICD-11V章の現場への普及を進めていくことは喫緊の課題である. そのためには,活用の中心的な場となる地域包括ケアシステムにおける医療・介護連携への活用を始めとして,様々な領域での実地における活用のための具体的な取り組みと,その使用可能性の検証が必要不可欠である.
そこで本研究は,地域包括ケアシステムにおいて活用可能な多領域にまたがるICFの評価手法の確立に向けた基礎資料を提示するため,1)多領域におけるICFを活用したデータの収集・分析に基づく活用例の提示,2)既存情報を活用したICFの評価法の開発を目的とした取り組みを実施した.
研究方法
リハビリテーション分野においては, ICD-11V章のリハビリテーションの臨床における実用に向けた活用モデルの作成と検証,福祉分野においては, 障害福祉事業所におけるWHO-DAS2.0のスクリーニングツールとしての活用に向けた評価マニュアルの作成と検証,WHO-DAS2.0の健康状態の統計における活用方法の検証,教育分野におけるICFを活用した共通評価シートの作成に向けた項目セットの妥当性の検証, 既存の評価からICFへの換算式の作成をそれぞれ実施した.
結果と考察
本研究事業においては, 研究初年度において, 多領域におけるICFを活用したデータの収集・分析のため, WHO-DAS2.0を含むICD-11V章およびICFを用いた調査手法の検討およびフィールドテストを実施した. 2年目には, 医療従事者のアンケートに基づくICD-11V章の医療福祉連携における活用モデルの検討および妥当性の検証, WHO-DAS2.0の障害福祉事業所におけるWHO-DAS2.0のフィールドテスト, 障害教育分野におけるICFを活用した共通情報シート開発, 既存の生活機能情報をICFでリコードするためのルール作りと検証に取り組んだ. 3年目には,さらに実際の活用例の提示に取り組み,リハビリテーション臨床におけるICD-11V章"一般的機能の構成要素",障害福祉事業所におけるWHO-DAS2.0,障害教育分野において作成されたICFの共通シート用の項目セット,健康統計におけるWHO-DAS2.0の活用についてそれぞれ検証をおこない,その結果,リハビリテーションの分野においては自立度の段階に応じた目標設定と生活機能のモニタリング,就労支援における生活機能評価と目標設定,教育分野における支援の最適化,健康統計における評価指標としての活用など,それぞれの分野において具体的な活用手法の提示を行うことができた.また,既存の評価を用いたICFの情報収集を進める上で重要となる換算式について,FIMを例としてアンケートによる換算式の作成を前年度に作成したルールに基づき実際に試行した. 今後は, これらの成果をベースに, ICFの利用促進に向けた取り組みをさらに幅広く具現化することに取り組む予定である.
結論
本研究事業においては, 多領域におけるICFの現場における活用方法について,現場における支援ツールの作成から, フィールドテストにおいて検証を行った.今後はこれらの成果を基礎として,社会実装の推進に向けた取り組みが求められる.

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202202003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで国際的にも,ICFおよびICD-11V章の実地で活用するためのモデルを多分野で連携して構築する取り組みはほとんど行われていない. 今回の成果は, 実地において生活機能情報を統一的な枠組みの中で評価, 活用するための基礎となることが期待される.
臨床的観点からの成果
この取り組みにおいて,マニュアル, 評価表, 換算表など, ICFを幅広い分野において実地で使用していく上でのサポートツールが作成された. これらのツールは,簡単に使用することのできるよう,ウェブ上において頒布する予定である.これらの成果は今後の臨床へのICFおよびICD-11V章の普及を進める上で大きな助けとなることが期待される.
ガイドライン等の開発
マニュアル, 評価表, 換算表などの支援ツールの作成を行った.
その他行政的観点からの成果
今後の活用のための支援ツールの作成を行うとともに, フィールドテストにより, 実際の活用例の提示を行った.特にICD-11のV章の活用方法について具体的な活用可能性を示したことは,行政における疾病統計等への応用を考える上で基礎的な資料となることが期待される.
その他のインパクト
WHO国際分類協力センターネットワークの年次会議において2年連続で全体会議でのプレゼンテーションに選出された.

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
202202003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,100,000円
(2)補助金確定額
4,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,609,619円
人件費・謝金 975,072円
旅費 1,175,210円
その他 340,229円
間接経費 0円
合計 4,100,130円

備考

備考
自己資金130円

公開日・更新日

公開日
2024-10-25
更新日
-