国際生活機能分類ICFを用いた医療と介護を包括する評価方法の確立とAIを利用したビッグデータ解析体制の構築

文献情報

文献番号
202202002A
報告書区分
総括
研究課題名
国際生活機能分類ICFを用いた医療と介護を包括する評価方法の確立とAIを利用したビッグデータ解析体制の構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
20AB1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
木村 浩彰(広島市立リハビリテーション病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 木原 康樹(広島大学大学院 医系科学研究科)
  • 塩田 繁人(広島大学病院 診療支援部リハビリテーション部門)
  • 日髙 貴之(県立広島病院 循環器内科)
  • 北川 知郎(広島大学病院 循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際生活機能分類ICFは人間の機能を数値化できるため、医療と介護に使用可能で,両者を連携できる.本研究は,ICFを臨床で簡便に活用するため,『心不全高齢者のICF評価マニュアル』を作成し,評価バッテリーからICFコードを生成できるデータベース創作を目的とした.
研究方法
研究デザイン:前向きコホート研究.
セッティング:2021年10月1日~2022年9月30日の間に広島大学病院,県立広島病院,三次地区医療センター,広島共立病院,アマノリハビリテーション病院に入院した心不全患者をリクルートした.退院前1週間に研究対象者へ説明と同意を行った.追跡調査は退院3ヶ月後と退院1年後に実施した.
研究参加者:5つの研究実施機関に入院した75歳以上の心不全患者のうち,フラミンガムうっ血性心不全診断基準を満たすものを対象とした.
調査項目:主要アウトカムを健康関連QOL(Euro QOL-5D-5Lの効用値),副次アウトカムを要介護度とした.我々が開発した『心不全高齢者のICF評価マニュアル』に基づきICF43項目を測定し,心不全治療内容と介護保険サービスの内容,ICFに基づくかかりつけ医・介護者・介護支援専門員への情報提供の有無を調査した.再入院または死亡の時点で追跡調査を終了した.
データ入力方法:測定したデータは各研究機関の代表者が管理し,Webデータベースに入力した.
統計学的解析:収集したデータは単純集計した後,退院時と退院3か月後でデータが揃った対象者のQOLと要介護度,ICF43項目を比較した.また,退院時と退院3ヶ月後,退院1年後のデータが揃った対象者のQOLと要介護度,ICF43項目についても比較した.解析にはSPSS vol.27を用い,有意水準を両側5%未満とした.
倫理面への配慮:広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:E- 2580).また,臨床試験の実施に際し,UMIN登録を行った(UMIN000045315).
結果と考察
2023年3月末で登録患者数は54例,データ入力が完了は退院時37例,退院3ヶ月後22例,退院1年後9例であった.追跡調査終了は,追跡困難7例,研究参加の取り下げ2例,退院3か月以内の再入院4例と死亡2例であった.
退院時と退院3ヶ月後のデータが揃った22例の基本情報を示す.心不全分類はHFrEF4例(18.2%),HFmrEF4例(18.2 %),HFpEF14例(63.6%),NYHA分類はclassⅠ7例(31.8%),classⅡ12例(54.5%),classⅢ3例(13.6%),classⅣ0例(0.0%)であった.血液データの中央値はBNP227.2pg/ml,NT-pr BNP 5656.2 pg/ml,eGFR 54.8mL/min/1.73m2であった.外来心臓リハビリテーションは2例,介護保険のリハビリテーションは5例,ICFを用いた情報提供は10例に実施した.要介護度なし:11例(50.0%),要支援1・2:4例(18.2%),要介護1:3例(13.6%),要介護2:3例(13.6%),要介護3:1例(4.5%)であった.薬物療法はカテコラミン3例,βブロッカー16例,ACE/ARB 5例,利尿薬18例,MRA8例,ARNI7例,SGLT2 7例で投与されていた.QOL(Euro QOL効用値)は退院時0.83±0.16,退院3ヶ月後0.75±0.21であった.退院時のICF43項目のうち,評点1(少しの問題)以上であった項目は,b134睡眠機能,b164高次認知機能,b410心機能,b455運動耐容能,b460心血管系と呼吸器系に関連した感覚,b530体重維持機能,b545水分・ミネラル・電解質のバランスの機能,b730筋力の機能,s410心臓の構造,d570健康に注意すること,d620買い物,d630調理,d640調理以外の家事,d920レクリエーションとレジャーであった.退院時の退院3ヶ月後のICF43項目には有意差を認めなかった.
退院時・退院3ヶ月後・退院1年後の3点データが揃った8例のQOLは退院時0.78±0.12,退院3ヶ月後0.78±0.14,退院1年後0.69±0.19,要介護度は維持・改善が8例,悪化1例であった.退院時のICF43項目から,心不全高齢者は心機能や心臓の構造に加えて,睡眠機能や前頭葉機能,心機能,運動耐容能,筋力,ADL,IADL, 余暇活動に問題を抱えており、退院3ヶ月後も継続していた.
結論
COVID-19パンデミックの影響で研究のデータ収集が難しく、多変量解析やQOL推計に関するAI解析は困難であった.しかし、ICF評価およびデータベースは実用可能であり、大規模調査に向けた研究体制の整備が望まれる.

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202202002B
報告書区分
総合
研究課題名
国際生活機能分類ICFを用いた医療と介護を包括する評価方法の確立とAIを利用したビッグデータ解析体制の構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
20AB1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
木村 浩彰(広島市立リハビリテーション病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 木原 康樹(広島大学大学院 医系科学研究科)
  • 塩田 繁人(広島大学病院 診療支援部リハビリテーション部門)
  • 日髙 貴之(県立広島病院 循環器内科)
  • 北川 知郎(広島大学病院 循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際生活機能分類ICFを用いた医療介護共通の評価方法の確立は喫緊の課題である.ICFはコーディングの煩雑さと評点の曖昧さがあり,臨床では利活用は進んでいないため,既存の評価バッテリーとリンクした評価手法の開発が必要である.本研究事業では医療と介護を包括するICF評価手法を確立し,多施設間前向きコホート研究にてICFデータを収集し,AIを用いた解析体制を構築することを目的とする.
研究方法
心臓リハビリテーション指導士と介護支援専門員を対象としたアンケート調査において,生活機能評価に必要なICFを43項目選定した.また,ICFリンキングルールのシステマティックレビューによって「ICF評価マニュアル」を作成した.次にエキスパートパネルによるDelphi調査においてマニュアルの適切性を明らかにし,既存の評価結果を入力することでICF評点換算が自動的にされる「ICF評価データベース」を構築した.さらに,5つの医療機関で多施設間前向き研究を開始し,患者登録と退院時・退院3ヶ月後,退院1年後のICF,QOL,要介護度,社会保障費の縦断調査を実施した.令和4年度はフォローアップデータの収集を行い,このデータを用いてAIによるQOLの予後予測アルゴリズムについて検証した.
結果と考察
退院時データ37例,退院3ヶ月後22例,退院1年後9例の追跡調査データを収集し,QOLは退院時0.78±0.12,退院3ヶ月後0.78±0.14,退院1年後0.69±0.19,要介護度は維持・改善が8例,悪化1例であった.ICF43項目については全例測定可能であったが,社会保障費は4例のみ測定可能で,5例は欠損データとなった.機械学習による退院時ICFデータから予測する退院3ヶ月後のQOL推定値についての検証では,既存の機械学習エンジンSimple ML for Sheets(Google)を用い,学習アルゴリズムDecision Tree、Random Forest、Gradient Boosted Treeの3つを用いて検証した.退院時ICFデータからQOLの推定値を算出することは可能であったが,教師データが少ないため,推定値の精度に関する検証は困難であり,精度の高い予測システムを開発するためには,教師データのさらなる充実が必須であると考えられた.令和2年度より蔓延したCOVID-19の影響で対面での全体会議や班会議は実施困難であり,Web会議またはメールで研究事業を進めることとなり,研究開始および進捗が3ヶ月~6か月程度遅延して進行した.令和2年度に予定していた医療と介護共通の評価手法の確立については,令和3年4月に「心不全高齢者のICF評価マニュアル」という形で達成することができ,予備研究を含めて令和3年度に2編,令和4年度に1編の英語論文を発表することができた.また,令和3年度上半期から開始を予定していた多施設間前向きコホート研究については,webデータベース作成に時間がかかり10月から開始することとなった.当初100~200例を予定していた患者登録についてはCOVID-19の院内クラスターの影響や外来患者の診療控えなどの影響もあり想定通りに進まず,患者登録期間を6か月延長することとなった.最終的に患者登録54例と当初予定していた半数以下の登録者数となった.AIを活用したQOL予後予測システムの検証については,9月より開発するシステムおよび仕様に関する打ち合わせを開始し,委託業者を選定し,11月より対面およびメールにて仕様に関する打ち合わせを実施した.この時点では教師データとなるデータが少なかったため,仕様の作成を優先し2月時点でのデータベースを提供してQOL予測アルゴリズムの解析を実施した.3月に委託先からの解析結果の提供を受け,研究を完了した.
結論
本研究事業で開発した「心不全高齢者のICF評価マニュアル」を用いることで医療と介護の共通言語によるアセスメントが可能となり,より大規模なデータ収集によりICFデータによる精度の高い予後予測システムの開発に繋がることが期待される.「ICF評価マニュアル」および「ICF評価データベース」は今後,広島大学病院心不全センターのホームページで公開を予定している.

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202202002C

収支報告書

文献番号
202202002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,672,000円
(2)補助金確定額
4,672,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,496,375円
人件費・謝金 0円
旅費 114,950円
その他 2,158,675円
間接経費 902,000円
合計 4,672,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
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