文献情報
文献番号
202202001A
報告書区分
総括
研究課題名
人口の健康・疾病構造の変化にともなう複合死因の分析手法の開発とその妥当性の評価のための研究
課題番号
20AB1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
別府 志海(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
研究分担者(所属機関)
- 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
- 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
- 篠原 恵美子(山田 恵美子)(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、原死因を決定する以前の死亡診断書データ(死亡個票データ)を用い、そこに記載されている各死因を用いた分析手法を探るとともに、分析結果の妥当性について評価し、長寿化を進展する要因を複合死因の視点から分析を試みるものである。これらの結果は健康・疾病構造の変化にともなった医療・介護・福祉への効果的な介入方法の検討に資する基礎資料となる。
研究方法
統計法に基づき人口動態統計の死亡票および死亡個票について利用可能な全期間にあたる2003~2021年分の提供を受けた。死亡個票データはテキストデータかつデータのクリーニング等がされていないため、死因データはICD-10対応標準病名マスターで定義されている病名交換用コードおよびICD-10コードに、また死因別の期間欄は日数に変換した。
こうして独自にコード化したデータから死因簡単分類に振り分けて原死因別の原死因死亡割合、複合死因割合の推移と原死因別複合死因順位を算定・図示し、その傾向を分析した。
さらに、糖尿病と新型コロナウイルス感染症について深掘りし、死亡診断書のどこに記載され、併記される死因にはどういったものが多いかについて分析を行った。
死因間の関係を表現する指標であるSRMUとCDAIについては、MultiCause Network グループが作成している標準的指標の作成方法に関するガイドラインに基づいて作成を行った。
ネットワーク分析については、Egidi(2018)によるネットワーク分析手法を適用し、複合死因間の関係分析を行った。
また、2022年度には複合死因ネットワーク(Multicause network)が開催され、各国の複合死因研究者と情報交換を行った。
こうして独自にコード化したデータから死因簡単分類に振り分けて原死因別の原死因死亡割合、複合死因割合の推移と原死因別複合死因順位を算定・図示し、その傾向を分析した。
さらに、糖尿病と新型コロナウイルス感染症について深掘りし、死亡診断書のどこに記載され、併記される死因にはどういったものが多いかについて分析を行った。
死因間の関係を表現する指標であるSRMUとCDAIについては、MultiCause Network グループが作成している標準的指標の作成方法に関するガイドラインに基づいて作成を行った。
ネットワーク分析については、Egidi(2018)によるネットワーク分析手法を適用し、複合死因間の関係分析を行った。
また、2022年度には複合死因ネットワーク(Multicause network)が開催され、各国の複合死因研究者と情報交換を行った。
結果と考察
死亡の原因欄以外にもその他付言すべき事柄・備考欄には病名が記載されることがあるが、今回のコード化では対象外としている。今後複合死因の分析を行う際にはこの2つの欄も対象に入れることを検討すべきと考えられる。
原死因割合と複合死因割合の2003年から2021年にかけての変化を直線近似しその傾きを見ると、全134の簡単分類のうち、複合死因割合、原死因割合いずれも減少傾向の死因の方が多かった。増加の傾向が著しい死因は老衰、誤嚥性肺炎、神経系の疾患であり、逆に減少が著しいのは脳血管疾患、肺炎、脳梗塞、悪性新生物などであった。死亡数が増えていて対策が必要な疾病の動向を可視化するために、変化する死因構造に合わせて適切な簡単死因分類の設定が求められよう。
糖尿病が記載される死因欄はⅡ欄が7割近くであり、糖尿病が原死因である死亡はその記載がある場合の約3割であった。Ⅱ欄へ糖尿病の記載がある場合は、Ⅰ欄アに呼吸器系疾患のほか心不全、脳梗塞、老衰の記載が、Ⅱ欄では高血圧や脳梗塞、慢性腎臓病の記載が多かった。既存の情報を活用するという観点からも、複合死因を用いた分析は重要であると考えられる。
COVID-19は多くがⅠ欄アに記載され、その約半数にはⅡ欄に何らかの疾病が記載されていた。Ⅰ欄アに記載された死亡までの期間の平均は17.9~19.0日であった。
SRMUをわが国の複合死因データに適用し、2003〜2021年における年次推移を15死因による死因グループで観察すると、どの死因でも概ねSRMUは減少する傾向が観察された。ただし、ICDが変更となった2017年はいくつかの死因で傾向に不連続性が発生していた。
CDAIを求めた結果、原死因と複合死因の間の関係の強さが定量的に示された一方、その関係性は年次によっても変化するため、継続的な観察を行うことの重要性も明らかとなった。
ネットワーク分析を行った結果、死因によって変化の動向に相違が観察された。またコミュニティ分類の結果について2021年で見ると、分類されるコミュニティ数はアルゴリズムや年次によっても大きく異なることが観察された。
原死因割合と複合死因割合の2003年から2021年にかけての変化を直線近似しその傾きを見ると、全134の簡単分類のうち、複合死因割合、原死因割合いずれも減少傾向の死因の方が多かった。増加の傾向が著しい死因は老衰、誤嚥性肺炎、神経系の疾患であり、逆に減少が著しいのは脳血管疾患、肺炎、脳梗塞、悪性新生物などであった。死亡数が増えていて対策が必要な疾病の動向を可視化するために、変化する死因構造に合わせて適切な簡単死因分類の設定が求められよう。
糖尿病が記載される死因欄はⅡ欄が7割近くであり、糖尿病が原死因である死亡はその記載がある場合の約3割であった。Ⅱ欄へ糖尿病の記載がある場合は、Ⅰ欄アに呼吸器系疾患のほか心不全、脳梗塞、老衰の記載が、Ⅱ欄では高血圧や脳梗塞、慢性腎臓病の記載が多かった。既存の情報を活用するという観点からも、複合死因を用いた分析は重要であると考えられる。
COVID-19は多くがⅠ欄アに記載され、その約半数にはⅡ欄に何らかの疾病が記載されていた。Ⅰ欄アに記載された死亡までの期間の平均は17.9~19.0日であった。
SRMUをわが国の複合死因データに適用し、2003〜2021年における年次推移を15死因による死因グループで観察すると、どの死因でも概ねSRMUは減少する傾向が観察された。ただし、ICDが変更となった2017年はいくつかの死因で傾向に不連続性が発生していた。
CDAIを求めた結果、原死因と複合死因の間の関係の強さが定量的に示された一方、その関係性は年次によっても変化するため、継続的な観察を行うことの重要性も明らかとなった。
ネットワーク分析を行った結果、死因によって変化の動向に相違が観察された。またコミュニティ分類の結果について2021年で見ると、分類されるコミュニティ数はアルゴリズムや年次によっても大きく異なることが観察された。
結論
本研究は、死亡診断書に記載された死因間の関連について独自にコード化したデータを用いて各種分析を行うと同時に、原死因と複合死因の関係行列データを作成・公表することで、広く一般に複合死因情報が利用されるような基盤を提供した。
懸念される疾病については細分化し、どのような疾病対策が必要となるかについての情報を提供することが望まれる。
近く死因分類がICD-11へと変更されるが、複合死因は死因選択方法の変更による影響を受けないことから、死因構造および死因間の関連変化について、より適切な情報を提供できる可能性がある。
これまで原死因を用いて死因推移や死因構造を考えてきたが、生活習慣病等の広がりにともなって関連死因間の分析が必要となっている。複合死因研究は国際的にもまだ開発途上であり、死亡診断書データのさらなる有効活用や人口動態統計の分析の高度化など、将来的な公的統計に関する企画・立案に貢献できるものと考える。
懸念される疾病については細分化し、どのような疾病対策が必要となるかについての情報を提供することが望まれる。
近く死因分類がICD-11へと変更されるが、複合死因は死因選択方法の変更による影響を受けないことから、死因構造および死因間の関連変化について、より適切な情報を提供できる可能性がある。
これまで原死因を用いて死因推移や死因構造を考えてきたが、生活習慣病等の広がりにともなって関連死因間の分析が必要となっている。複合死因研究は国際的にもまだ開発途上であり、死亡診断書データのさらなる有効活用や人口動態統計の分析の高度化など、将来的な公的統計に関する企画・立案に貢献できるものと考える。
公開日・更新日
公開日
2024-09-02
更新日
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