文献情報
文献番号
202201017A
報告書区分
総括
研究課題名
急性期、回復期、慢性期の入院患者における医療ニーズ及び必要な医療資源投入量の評価体系の検討・導入に資する研究
課題番号
22AA2004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
- 林田 賢史(産業医科大学 大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,177,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
急性期から慢性期、在宅に至るまでの全医療機能を対象とした、中・長期的な入院に係る患者像の把握を通して急性期医療の患者像の具体的な評価指標を開発するために、(1) DPC対象病院に入院した高齢患者の重症度、医療看護必要度(以下、看護必要度)が医療資源の利用状況に関する検討及び(2)急性期以後の医療介護サービス施設におけるサービス利用者の状態像の把握を行った。
研究方法
本研究では以下の2種類のデータを用いて、分析を行った。
(1) 令和2(2020)年度の福岡県分DPCデータ: 一般社団法人診断群分類研究支援機構を介して調査対象施設から提供されたデータ(様式1、EFファイル、Hファイル)から75歳以上の入院患者を抽出し、入退院経路、入院中に最も医療資源を必要とした傷病(医療資源病名 DPC6桁で記述)、入退院時のB項目の得点、Charlson Comorbidity Index (CCI) を求め、入退院時のB項目の得点と入退院の経路との関係について、入院契機病名別に分析した。また、上記分析を傷病別に行った
(2) 福岡県を中心とした九州地域および岡山県を中心とした中国地方の急性期以後の医療介護施設(地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、療養病床、介護医療院、老人保健施設、特別養護老人ホーム、訪問看護)を対象として「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度のA項目、B項目(患者状態部分)を用いて、2023年1月23日から1月29日の1週間入院患者及びサービス利用者の情報を収集した。このデータを用いて、看護必要度の各項目と各施設の受け入れている利用者の主たる傷病の有病率との関係を検討するとともに、これらの情報を用いてサービス機能の分類を行うことの可能性を検討した。
(3) 研究は産業医科大学倫理審査委員会の承認(承認番号:第R4-046号)を得た。
(1) 令和2(2020)年度の福岡県分DPCデータ: 一般社団法人診断群分類研究支援機構を介して調査対象施設から提供されたデータ(様式1、EFファイル、Hファイル)から75歳以上の入院患者を抽出し、入退院経路、入院中に最も医療資源を必要とした傷病(医療資源病名 DPC6桁で記述)、入退院時のB項目の得点、Charlson Comorbidity Index (CCI) を求め、入退院時のB項目の得点と入退院の経路との関係について、入院契機病名別に分析した。また、上記分析を傷病別に行った
(2) 福岡県を中心とした九州地域および岡山県を中心とした中国地方の急性期以後の医療介護施設(地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、療養病床、介護医療院、老人保健施設、特別養護老人ホーム、訪問看護)を対象として「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度のA項目、B項目(患者状態部分)を用いて、2023年1月23日から1月29日の1週間入院患者及びサービス利用者の情報を収集した。このデータを用いて、看護必要度の各項目と各施設の受け入れている利用者の主たる傷病の有病率との関係を検討するとともに、これらの情報を用いてサービス機能の分類を行うことの可能性を検討した。
(3) 研究は産業医科大学倫理審査委員会の承認(承認番号:第R4-046号)を得た。
結果と考察
本研究の結果は以下のとおりである。
(1) 入退院時のB項目の得点を退院先別にみると、いずれの得点も退院先で有意の差が観察されてた。具体的には院内の他病棟への転棟、他の病院・診療所への転院、介護老人保健施設に入所、介護老人福祉施設に入所、社会福祉施設、有料老人ホーム等に入所、終了(死亡等)という転帰の群は家庭への退院に比較して、入退院時のB項目の得点が有意に高くなっていた。
(2) 上記分析を傷病別に行った結果でも、入退院時のB項目のスコアが、退院先の選択に影響していることが明らかとなった。ただし、脳梗塞や股関節骨折のように回復期リハビリテーション病棟の対象疾患となっている傷病では、B項目のスコアによらず他院転院の割合が高くなっていた。心不全と肺炎に関してはB項目のスコアが高い群で、入院経路に依らず他院入院が多くなっていた。ここで興味ある点は介護施設等から入院した高齢者の多くが、老健施設や特別養護老人ホームではなく有料老人ホーム等に退院していることである。この点についてはデータの正確性も含めて検討が必要である。
(3) 福岡県を中心とした九州地域および岡山県を中心とした中国地方の急性期以後の医療介護施設として、地域包括ケア病棟を有する132施設、回復期リハビリテーション病棟を有する88施設、療養病床を有する107施設、介護医療院を有する107施設、老人保健施設242施設、特別養護老人ホーム302施設、訪問看護ステーション393施設に調査票を配布した。使用した調査票は、患者状態として看護必要度のA項目、B項目(患者状態部分及び実施の有無)を参考に、患者・利用者の属性、疾患名、リハビリの実施状況等を加えた調査票を作成した。調査は、2023年1月23日から1月29日の1週間入院患者及びサービス利用者に対して実施され、現在、返却された調査票をもとに、分析用のデータベースの構築を行っている。
(1) 入退院時のB項目の得点を退院先別にみると、いずれの得点も退院先で有意の差が観察されてた。具体的には院内の他病棟への転棟、他の病院・診療所への転院、介護老人保健施設に入所、介護老人福祉施設に入所、社会福祉施設、有料老人ホーム等に入所、終了(死亡等)という転帰の群は家庭への退院に比較して、入退院時のB項目の得点が有意に高くなっていた。
(2) 上記分析を傷病別に行った結果でも、入退院時のB項目のスコアが、退院先の選択に影響していることが明らかとなった。ただし、脳梗塞や股関節骨折のように回復期リハビリテーション病棟の対象疾患となっている傷病では、B項目のスコアによらず他院転院の割合が高くなっていた。心不全と肺炎に関してはB項目のスコアが高い群で、入院経路に依らず他院入院が多くなっていた。ここで興味ある点は介護施設等から入院した高齢者の多くが、老健施設や特別養護老人ホームではなく有料老人ホーム等に退院していることである。この点についてはデータの正確性も含めて検討が必要である。
(3) 福岡県を中心とした九州地域および岡山県を中心とした中国地方の急性期以後の医療介護施設として、地域包括ケア病棟を有する132施設、回復期リハビリテーション病棟を有する88施設、療養病床を有する107施設、介護医療院を有する107施設、老人保健施設242施設、特別養護老人ホーム302施設、訪問看護ステーション393施設に調査票を配布した。使用した調査票は、患者状態として看護必要度のA項目、B項目(患者状態部分及び実施の有無)を参考に、患者・利用者の属性、疾患名、リハビリの実施状況等を加えた調査票を作成した。調査は、2023年1月23日から1月29日の1週間入院患者及びサービス利用者に対して実施され、現在、返却された調査票をもとに、分析用のデータベースの構築を行っている。
結論
本分析の結果、急性期病院に入院した高齢患者について、病気別にみてもB得点の状況が退院先の決定に関係している可能性が示唆された。今後、Inter RAIのプロジェクトで行われているように、病態ごとにB項目にトリガーを設定し、退院後のケアにおいて配慮すべき事項が明示できる仕組みの構築を目指すことが必要である。また、こうした取り組みはケアの成果指標の構築にも資するものであると考える。
公開日・更新日
公開日
2023-06-01
更新日
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