文献情報
文献番号
202201014A
報告書区分
総括
研究課題名
大学病院における医師の労働時間短縮に向けた取組のプロセスと効果の検証
課題番号
22AA2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小林 欣夫(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 横手 幸太郎(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
- 大塚 将之(千葉大学大学院医学研究院)
- 中島 裕史(千葉大学大学院医学研究院)
- 吉野 一郎(千葉大学大学院 医学研究院 呼吸器病態外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
15,582,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医師の働き方改革において、令和6年4月から診療に従事する勤務医の時間外・休日労働の上限規制が適用開始となるが、一部の大学病院および診療科においては、時間外・休日労働が特例水準における時間外労働の上限規制である年 1,860 時間を超過する可能性のある医師が一定数存在していることが明らかになっている。また、時間外・休日労働が年 1,860 時間を超過する可能性のある医師が多い、外科、産婦人科等の特定の診療科においては、実態に応じたより一層実効性のある労働時間短縮への取組が必要とされ、その取組の具体化に向けた議論が今後の検討課題となっている。大学病院においては診療と教育の切り分けが明確でない点や副業・兼業への派遣が多いといった点から労務管理の複雑さがより強く存在しており、今までは労務管理がほぼ行われていなかった現状がある。本研究は限られた期間での労働時間短縮を実現するため、大学病院における労働時間短縮に向けた取組を経て、その取組の前後での勤務実態の変化を検証すること、またそのプロセスを含めた検証結果を踏まえたマニュアルを作成し、同様に労働時間短縮の取組に困難を抱えている全国の大学病院を主とした医療機関への好事例の横展開に繋げていくことを目的とする。
研究方法
特例水準の指定を受ける見込みである大学病院1施設において、勤怠管理システムから得られるデータと長時間勤務の想定される診療科の医師からのヒアリングを行い、勤務実態の把握を行った。ヒアリングにおいては、現状の本務先での診療体制、夜間・休日の勤務状況、副業・兼業先の勤務実態、今後効率的に実施したいと考えられる業務やタスクシェア・シフトが検討可能な業務等について聞き取りを実施した。その実態把握を元に勤怠管理システムとの連動を含め勤務時間の検証と分析を行った。また検証により明らかになった長時間勤務医師及び当該医師の所属する診療科について、労働時間短縮が見込まれる業務整理の検討を行った。
結果と考察
令和3年度の研究開始前データにおいて時間外・休日労働が年960時間を超過する医師は137名で、うち20名は年1,860時間を超過していた。対象大学病院において今までは所定労働時間内外による管理を行っていたが、今回は時間外労働の上限規制に合わせ法定労働時間内外でのデータ整理を行い、またあわせて診療実態に即した宿日直許可の有無と副業・兼業先での勤務実態、診療外業務と自己研鑽の区別を反映させた結果、令和4年度は年960時間を超過する時間外・休日労働を行っていると推計された医師は51名となり、うち6名(所属診療科は心臓血管外科、NICU)は年1,860時間を超過する時間外・休日労働を行っていると推計された。さらにヒアリングにおいては、具体的な労働時間短縮への取組について、医師事務作業補助者や特定行為研修修了看護師の活用などの希望があり、長時間勤務医師が在籍する診療科については、配置の調整を行い、業務量の削減を図っている。
結論
今年度は次年度以降の効果的な労働時間短縮への取組の実施、そのマニュアル作成のための正しい実態把握を重点的に行った。今年度、注力せざるを得なかった内容としては、法定労働時間と法定外労働時間の整理と管理であった。時間外労働の上限規制の整理を進める上では重要な内容であり、今後はシステムにも反映させることができれば、同様のシステムを使用する大学病院においても有用と考えている。
また、具体的な業務軽減策としてのタスク・シフト/シェアについては、文書作成等の事務作業の負荷を表す意見が多く、大学病院において、医師事務作業補助者へのタスク・シフトは市中病院と比較して遅れているとの現場医師からの意見もあるため、効果が出るような形で進めていく必要がある。さらに今後は医師にしかできない業務がより鮮明に洗い出され、長時間勤務が継続している診療科、医師については医師同士のタスク・シフト/シェアも考慮する必要が出てくる。次年度は最終的な目的である医師の労働時間減少に向けて効率的に院内の業務が行えるように検討を重ねながら、医師自身の意識改革および成功事例の共有を視野に、本研究を進めていく。
また、具体的な業務軽減策としてのタスク・シフト/シェアについては、文書作成等の事務作業の負荷を表す意見が多く、大学病院において、医師事務作業補助者へのタスク・シフトは市中病院と比較して遅れているとの現場医師からの意見もあるため、効果が出るような形で進めていく必要がある。さらに今後は医師にしかできない業務がより鮮明に洗い出され、長時間勤務が継続している診療科、医師については医師同士のタスク・シフト/シェアも考慮する必要が出てくる。次年度は最終的な目的である医師の労働時間減少に向けて効率的に院内の業務が行えるように検討を重ねながら、医師自身の意識改革および成功事例の共有を視野に、本研究を進めていく。
公開日・更新日
公開日
2023-06-28
更新日
-