戦没者遺骨の身元特定に係るDNA鑑定の精度向上に関する研究

文献情報

文献番号
202201010A
報告書区分
総括
研究課題名
戦没者遺骨の身元特定に係るDNA鑑定の精度向上に関する研究
課題番号
21AA2004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
橋谷田 真樹(関西医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 眞鍋 翔(関西医科大学 法医学講座)
  • 浅利 優(旭川医科大学 法医学講座)
  • 北川 美佐(大阪医科薬科大学 医学部医学科 予防・社会学講座 法医学教室)
  • 玉木 敬二(京都大学 医学研究科)
  • 中村 安孝(東京歯科大学 歯学部)
  • 松末 綾(福岡大学 医学部法医学)
  • 山田 良広(神奈川歯科大学 歯学部 社会歯科学系 法医学講座 歯科法医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
20,091,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、厚生労働省の戦没者遺骨の DNA 鑑定事業において、1柱でも多くの戦没者遺骨から正確かつ迅速に DNA 型判定を成功させることで、速やかに遺骨をご遺族のもとにお返しすることを最終目標とする。
この目標を遂行する上で、解決すべき大きな課題が 2 つある。「① 戦没者遺骨鑑定の標準プロトコルの作成」、および「② 多数の遺骨・ご遺族から該当する血縁者をスクリーニングする専用ソフトウェアの開発」である。①については、長い年月を経ている戦没者遺骨の DNA は分解が進んでおり、身元確認が進まない大きな要因となっている。そのため、鑑定人は DNA の抽出方法や増幅方法にそれぞれ独自の工夫を施している。これまで独自の試行錯誤によって行われてきた各鑑定人の解析情報を持ち寄り、遺骨の DNA 鑑定の知識や経験を共有し、統一された鑑定プロトコルを作成することで鑑定精度の向上を図る。②については、大規模災害を想定した血縁鑑定に関する先行研究はあるものの、本事業で実施する DNA 鑑定法に対応した専用ソフトウェアは開発されていない。膨大な遺族データと各鑑定人によって解析された遺骨データを効率よくマッチングさせスクリーニングを行うことで、尤度比による血縁関係の推定を速やかに行い、迅速に遺骨を遺族にお返しすることが可能となる。
研究方法
令和3年度に各研究分担者に対して遺骨のDNA 鑑定に関するプロトコルのアンケート調査を行ったところ、様々な方法を用いて鑑定を行っていることが判明した。遺骨のDNA 鑑定の工程は、「①DNA の抽出・定量」、「②DNA の増幅」、「③電気泳動による型判定」、「④ご遺族(血縁候補者)とのマッチング」となる。これらの工程のうち「②DNA の増幅」、「③電気泳動による型判定」は使用する試薬・機器が統一されているため、各人によって大きく異なるのが「①DNA の抽出・定量」部分である。ここで効率よく良好なDNA を得ることができれば、必然とDNA 型判定も良い結果となる。同じ研究者が同じ骨試料を用いて、各鑑定人の方法を実践し、DNA抽出量を比較し、最も効率の良いDNA抽出方法を確立する。
 マッチングソフトウェアの開発については、令和3年度に常染色体上STRマーカー情報を用いたソフトを作成済である。今年度はY 染色体上の STR 型(Y-STR 型)、およびミトコンドリア DNA 型(mtDNA 型)を用いた血縁者スクリーニングソフトウェアを作成する。ソフトウェアの構築には、プログラミング言語 R を用い、ボタン 1 つで簡単に操作できるようにするため、graphical user interface(GUI)化する。GUI の構築には、R 言語の tcltk パッケージ,tcltk2 パッケージを利用する。ソフトウェアには。複数人分の遺骨の Y-STR 型・mtDNA 型データ、および複数人分の遺族の Y-STR 型・mtDNA 型データを入力できるようにする。mtDNA 型については、型の情報だけでなく、実際に塩基配列を読めた範囲も併せて入力できるようにする。入力したデータを基に、Y-STR 型および mtDNA 型が一致する遺骨―遺族のペアを出力できるようにする。
結果と考察
遺骨からのDNA抽出に関する部分については、各抽出方法を整理したところ、最初の段階、つまり骨を骨粉にするか、または細片のままで抽出を行うかの二通りに分かれた。この処理後は、使用する抽出試薬も異なり、DNAの終了にも大きく影響を及ぼすものと思われる。今年度は検証実験を始めた段階であり、プロトコルの作成は来年度の予定である。大阪医科薬科大学では検証実験の結果が一部出ており、京都大学および福岡大学の方法と比較したところ、福岡大学の方法が抽出成績が良かったとの結果であった。
遺骨データと遺族データのマッチングソフトウェアは、常染色体STRデータ、Y染色体STRデータ、およびミトコンドリアDNAデータを用いたソフトウェアは作成済である。動作確認も終了し、今後は模擬データを用いて、擬陽性判定の検証等を行う予定である。
結論
遺骨からのDNA鑑定プロトコル作成は、検証実験途中であり、完成は来年度となる。遺骨と遺族とのマッチングソフト作成は、ソフトの動作確認は終了し、今後は模擬データを用いての擬陽性判定の検証に入る。

公開日・更新日

公開日
2023-07-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2023-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202201010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
22,650,000円
(2)補助金確定額
22,650,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 20,091,000円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 2,559,000円
合計 22,650,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
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更新日
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