長期的人口減少と大国際人口移動時代における将来人口・世帯推計の方法論的発展と応用に関する研究

文献情報

文献番号
202201006A
報告書区分
総括
研究課題名
長期的人口減少と大国際人口移動時代における将来人口・世帯推計の方法論的発展と応用に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20AA2007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では2008 年頃より長期的な人口減少時代に突入しているが,近年では出生 数の急速な減少ともに,将来人口の動向に対していっそう注目が集まっている。また,2019 年の新規在留資格の創設に伴って外 国人労働者のさらなる拡大が見込まれていることに加え,国内では,東京圏における人口一極集中の継続や地方圏における著しい人口減少及び超高齢化の顕在化など,人口に関連する問題は非常に多岐にわたっている。本研究では,新たなフェーズに入っ たと考えられる国際人口移動をはじめ,出生・死亡・国内人口移動の短期的・長期的傾向を的確に把握して分析するとともに,国立社会保障・人口問題研究所(社人研) が実施する人口・世帯の将来推計の精度向上および推計手法の方法論的発展およびその応用に関する研究を行うものである。
研究方法
研究は以下の(1)〜(3)の3領域に分けて進めた。
(1)長期的人口減少と大国際人口移動時代 における人口・世帯分析の深化
(2)外国人人口の急増や新たな出生・死亡のトレンドに対応した将来人口・世帯推計モデルの開発
(3)将来推計の政策的シミュレーションへの応用に関する研究
なお,研究全般にわたり,社人研や研究者個人が属する国際的研究ネットワークを 最大限に活用し,諸外国や国際機関などと緊密な国際的連携を図って研究を進めた。また,研究所が有する人口・世帯の将来推計に関する研究蓄積を方法論やモデル構築研究に活かすとともに,所内外の関連分野の複数の研究者に研究協力者として参加を要請し,総合的に研究を推進した。
結果と考察
地域別出生率と地域間移住が日本の人口減少に与える影響を多地域レスリー行列モデルにより分析したところ、 都市部の30代以上の出生率の改善と都市部の20代までが高出生率地域へ移住することが人口減少を緩和することが明らかになった。
新型コロナウイルス感染症拡大期以降の国際人口移動及び外国人人口の動向を分析したところ、日本への国際人口移動は、2020年には若干の入国超過が維持されたものの、2021年は東日本大震災による影響を受けた2011-12年以来の出国超過に転じたことが示された。この出国超過については、とりわけ外国人の流入減による影響が大きいが、2010年代の日本への流入拡大の主要因であった留学生や技能実習性等の新規入国が制限されたことにより、直前までの流入拡大期にこうしたアジア諸国からの若年層を中心とした外国人の急速な増加を経験した非大都市圏において、外国人人口の減少が顕著となった。また、東京都においては、外国人の減少が中心部に集中する傾向がみられる一方で、近隣の埼玉県・千葉県では、国際人口移動による外国人の転出超過が、国内移動による転入超過によって相殺されるという特徴的な傾向がみられた。
外国人受入れ拡大の公的年金への財政影響は、老年従属人口指数と賦課保険料率の相似関係に見られるように、長期的な人口動向の変化に大きく影響を受けること、また、受け入れた外国人を厚生年金へ適用する場合、基礎年金の水準低下幅の拡大が抑えられることから、基礎年金水準低下問題に対応する効果があることが明らかとなった。
多相生命表の応用に関する研究では、死亡率の将来推計に連動した配偶関係別の死亡率や、配偶関係別多相生命表の試算結果を得ることができ、これらから将来の出生水準の推計にも有用となる将来の女性の配偶関係構造などが得られることが理解された。
結論
多地域レスリー行列は、人口統計学で広く用いられる数理モデルである。このモデルの実用性は、都市計画や人口政策の立案、ビジネスの地域展開戦略の立案など、様々な分野で利用できる。人口政策においては、少子高齢化対策や地方創生に向けた施策の立案に役立てることができると期待している。
新型コロナウイルス感染症拡大期以降の国際人口移動に関する研究からは、今後の国際人口移動の動向及びその影響を見通すうえで、2010 年代における外国人人口の急速な増加およびその影響に関する地域差を考慮することの重要性があらためて示唆された。
令和元年財政検証や最新の結果を踏まえた外国人推計を前提とした社会保障財政シミュレーションはこれまで十分に示されていなかったものであり、今後の政策議論の基礎資料として活用が可能である。
配偶関係別多相生命表や配偶関係別将来人口推計は、全国将来人口推計における将来の出生率推計や、全国世帯数推計における配偶関係の推計にも応用が可能であり、これらを基礎とする様々な政策議論の基礎として活用が可能なものと考える。

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-05-26
更新日
2024-05-13

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202201006B
報告書区分
総合
研究課題名
長期的人口減少と大国際人口移動時代における将来人口・世帯推計の方法論的発展と応用に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20AA2007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では2008 年頃より長期的な人口減少時代に突入しているが,近年では出生 数の急速な減少ともに,将来人口の動向に対していっそう注目が集まっている。また,2019 年の新規在留資格の創設に伴って外 国人労働者のさらなる拡大が見込まれていることに加え,国内では,東京圏における人口一極集中の継続や地方圏における著しい人口減少及び超高齢化の顕在化など,人口に関連する問題は非常に多岐にわたっている。本研究では,新たなフェーズに入っ たと考えられる国際人口移動をはじめ,出生・死亡・国内人口移動の短期的・長期的傾向を的確に把握して分析するとともに,国立社会保障・人口問題研究所(社人研) が実施する人口・世帯の将来推計の精度向上および推計手法の方法論的発展およびその応用に関する研究を行うものである。
研究方法
研究は以下の(1)〜(3)の3領域に分けて進めた。
(1)長期的人口減少と大国際人口移動時代 における人口・世帯分析の深化
(2)外国人人口の急増や新たな出生・死亡のトレンドに対応した将来人口・世帯推計モデルの開発
(3)将来推計の政策的シミュレーションへの応用に関する研究
なお,研究全般にわたり,社人研や研究者個人が属する国際的研究ネットワークを 最大限に活用し,諸外国や国際機関などと緊密な国際的連携を図って研究を進めた。また,研究所が有する人口・世帯の将来推計に関する研究蓄積を方法論やモデル構築研究に活かすとともに,所内外の関連分野の複数の研究者に研究協力者として参加を要請し,総合的に研究を推進した。
結果と考察
出生力の地域差に対する結婚力効果と夫婦出生力効果の分解モデルの開発では、推計された結婚力の総合効果と夫婦出生力効果を組み合わせ,結婚力も出生力も高い自治体,結婚力は低いが夫婦出生力は高い自治体,結婚力は高いが,夫婦出生力は低い自治体,両方とも低い自治体に分類した。この点は、地域別将来人口推計における出生仮定の設定に有用な知見であると考えられる。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う人口移動傾向の変化に関する分析からは、人口構造要因を除去したモビリティ要因でみれば東京圏全体としてみた変化は比較的小さいという知見が得られた。これを地域別将来人口推計における各地域の人口移動仮定に反映させていくためには、東京圏外や東京圏内における移動傾向の変化についてより詳細に分析していく必要がある。
月別死亡率からみた季節性とその地域差に関する研究では、死亡率は初夏に低く冬に高くなる季節性のパターンは共通するが、月間変動の(相対的な)大きさには地域差があることが明らかとなった。2020 年国勢調査を基準とする地域人口推計の将来の生残率の設定においては、直近国勢調査間の死亡状況へのCOVID-19の影響の地域差を検証し、COVID-19 の特異な流行の波により(今後も)従来とは異なった季節性のパターンを生じる可能性等について早急に検討を深める必要がある。
多相生命表を利用した配偶関係別将来人口推計に関する基礎的検討で得られた配偶関係別将来人口推計を平成30年全国世帯推計の結果と比較したところ、全体としての傾向については概ね一致することが確認された。本科研の課題のひとつでもあった人口推計と世帯推計の連携強化に向けて大きく前進したといえる。
結論
人口・世帯の動向は広範な分野の施策に影響を及ぼすことから、本研究で得られた各種の動向分析結果は関連各分野の施策立案に資する基礎資料として活用が可能である。
日本における男性の無子割合・無子志向の動向と特性に関する分析において、日本の男性の無子化には、経済要因の影響と成育過程要因の影響の両方が認められた。現在、政府が行っている少子化対策では、若者の就業支援・経済的支援や生活基盤づくりへの支援は中心的課題のひとつとして取り組まれているが、意識や価値観に影響する政策は、挙げられてはいるもののそれほど大きく取り上げられていない。価値観や意識に係る政策は、特定のライフコースや行動を推奨するのではなく、多様な選択肢があることを伝えながら行う必要がある。
新型コロナウイルスの感染拡大の局面においても東京圏の転出モビリティの上昇が限定的であったことの一因としては、東京圏居住者に占める東京圏出生者割合の増加が挙げられると考えられる。東京圏一極集中の是正および地方創生の観点からは、Uターンの喚起よりもむしろコロナ禍に伴う価値観の変化から生じる大都市圏出身者のIターンの増加に活路を見いだす方向性が望ましいといえよう。
新型コロナウイルス感染症拡大期以降の国際人口移動の分析では、今後の国際人口移動の動向及びその影響を見通すうえで、2010年代における外国人人口の急速な増加およびその影響に関する地域差を考慮することの重要性が、あらためて示唆された。

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202201006C

収支報告書

文献番号
202201006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,270,000円
(2)補助金確定額
3,270,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,452,382円
人件費・謝金 153,938円
旅費 387,310円
その他 277,605円
間接経費 0円
合計 3,271,235円

備考

備考
自己資金による負担が1235円発生したため。

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-