ユーザー視点での保健医療の質に関する指標の妥当性と国際比較可能性に関する研究

文献情報

文献番号
200902002A
報告書区分
総括
研究課題名
ユーザー視点での保健医療の質に関する指標の妥当性と国際比較可能性に関する研究
課題番号
H20-統計・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 知子(国立保健医療科学院 人材育成部 国際保健人材室)
研究分担者(所属機関)
  • 種田 憲一郎(国立保健医療科学院 政策科学部 安全科学室)
  • 荻野 大助(国立保健医療科学院 政策科学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ユーザー視点を重視し、医療供給側のみでなく医療の受給者である患者・住民の立場として、保健医療の質評価を検討する。さらに国際比較においても妥当性のある客観的な指標と情報発信のあり方を検討する。
研究方法
本年度は前年度に引き続き、目的外申請より得られた厚生労働統計「受療行動調査」個票データ(個人情報を含まない)を用いた経年変化分析および2005年調査の詳細解析(性別,年齢,病床数,予約の有無及び各時間について多変量解析)を行った。また受療行動調査と並行して実施された患者調査および医療施設静態調査とリンケージされたデータを用いて、満足度項目、性別、年齢(調査時)、病院の規模、病床の種類、疾病分類(大)、治療に関する意思決定者等との関連について分析した。国際指標の妥当性としてはOECD Health Care Quality Indicator患者経験指標グループによる検討を行った。
結果と考察
受療行動調査の分析では、満足度項目は入院・外来とも性別、年齢が有意に関連していた。経年傾向として、全体の満足度は特に入院で改善しており、医師とのコミュニケーションにも改善がみられた。外来では待ち時間について満足度が下がる傾向がみられたが、病床数が少ない病院群は、病床数が多い群に比べて満足率が高い傾向にあり、診察時間については20分から30分の間が最も満足度が高かった。さらに治療の意思決定を本人が行ったことと満足度への関連(性・年齢調整)が示唆された。入院・外来調査票の各種満足度に関する信頼性評価では高い内的一貫性を認めており(2005年調査:Cronbach α=0.895, 0.863)、全体的な満足度と最も高い相関が得られたのは外来、入院とも“医師との対話”であった。費用負担と各種満足度については、いずれも相関係数は低かった。OECD医療の質における患者経験指標の国際比較では、受療行動調査項目とほぼ類似項目が採用され、特に患者による治療の意思決定への参画は重要視された。
結論
受療行動調査は病院医療の評価として極めて有用と考えられるが、疾病分類と連結したデータ数は限られており、今後は患者の受療内容に関連付けられたデータを検討する余地がある。また国際比較として診療アクセス、患者の最終学歴、受療に対する満足度に相当する受療の5段階評定が有用である。診療アクセスについても、本調査が病院で収集されることから、国民生活基礎調査などを活用して地域住民のニーズを把握することが、今後の医療政策上有用と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200902002B
報告書区分
総合
研究課題名
ユーザー視点での保健医療の質に関する指標の妥当性と国際比較可能性に関する研究
課題番号
H20-統計・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 知子(国立保健医療科学院 人材育成部 国際保健人材室)
研究分担者(所属機関)
  • 種田 憲一郎(国立保健医療科学院 政策科学部 安全科学室)
  • 荻野 大助(国立保健医療科学院 政策科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ユーザー視点を重視し、医療供給側のみでなく医療の受給者である患者・住民の立場として、保健医療の質評価を検討する。さらに国際比較においても妥当性のある客観的な指標と情報発信のあり方を検討する。
研究方法
目的外申請より得られた厚生労働統計「受療行動調査」個票データ(個人情報を含まない)を用いた経年変化分析および2005年調査の詳細解析(性別,年齢,病床数,予約の有無及び各時間について多変量解析)を行った。また受療行動調査と並行して実施された患者調査および医療施設静態調査とリンケージされたデータを用いて、満足度項目、性別、年齢(調査時)、病院の規模、病床の種類、疾病分類(大)、治療に関する意思決定者等との関連について分析した。海外諸国の類似調査収集および文献検索を行い、国際指標の妥当性としてOECD Health Care Quality Indicator患者経験指標における検討を行った。
結果と考察
受療行動調査の分析では、満足度項目は入院・外来とも性別、年齢が有意に関連していた。経年傾向として、全体の満足度は特に入院で改善しており、医師とのコミュニケーションにも改善がみられた。外来では待ち時間について満足度が下がる傾向がみられたが、病床数が少ない病院群は、病床数が多い群に比べて満足率が高い傾向にあり、診察時間については20分から30分の間が最も満足度が高かった。さらに治療の意思決定を本人が行ったことと満足度への関連(性・年齢調整)が示唆された。入院・外来調査票の各種満足度に関する信頼性評価では高い内的一貫性を認め、全体的な満足度と最も高い相関が得られたのは外来、入院とも“医師との対話”であった。費用負担と各種満足度については、いずれも相関係数は低かった。OECD医療の質における患者経験指標の国際比較では、受療行動調査項目とほぼ類似項目が採用され、特に患者による治療の意思決定への参画が重要視された。
結論
患者の立場に立った医療の質評価は、現在WHOやOECD加盟国等で検討されているが、国際比較に用いるべき指標の妥当性については課題が多い。保健医療システムの異なる諸国の比較には、入院医療における疾病分類(WHO-ICD coding)等の整備や精度の向上、医療内容評価基準の明確化が必要である。また海外諸国では、患者が医療を評価する際に満足度でなく5段階評定としている。さらに、診療アクセスについては地域住民も対象に入れることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200902002C