経済統合及び人口減少下における雇用戦略と社会保障の連携及び家族政策の可能性に関する国際比較研究

文献情報

文献番号
200901037A
報告書区分
総括
研究課題名
経済統合及び人口減少下における雇用戦略と社会保障の連携及び家族政策の可能性に関する国際比較研究
課題番号
H21-政策・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
井口 泰(関西学院大学 経済学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、東アジアを中心とする経済統合と人口減少下における雇用戦略と社会保障政策の連携の方策及び将来における総合的な家族政策の可能性を明らかにすることを目的とする。
研究方法
本研究では、①関係するデータの収集及び入力・蓄積、②マクロ又はミクロデータの解析、③研究者、政策担当者などのヒアリング調査、法令及び政策動向の分析や、日欧を中心とする国際比較などを実施している。
結果と考察
①人口変動に加え、工程間分業や雇用の非正規化などの動きも、地域労働市場において、失業だけでなく、無業の拡大を含めた意味で、需給ミスマッチを拡大する要因なっていることが立証された。
また、②非正規雇用や無業の増加は、親との同居率を高め、又は、親からの自立の機会を遅らせる。これが、晩婚化又は非婚化を進める結果、全般的に出生率を低下させるほか正規雇用で親から独立している場合も、育児支援などの両立支援政策の遅れから、予定子ども数を低下させる。これらの事実が立証された場合、非正規雇用化や無業化が、一般的に出生率を低下させることを指摘できる。
③このように、日本だけでなく、フランスやドイツでは、失業給付の受給も終了したか受給権のない人々が増加し、最低生活保障の仕組みと労働市場への再参入を促す仕組を同時に機能させるため、市町村と国の出先機関の間で共同の仕組をどのようにつくりだすかが重要課題となっている。
さらに、④国内の移民・外国人については自国民の場合以上に、地域・自治体レベルでの権利の確保と義務の履行を実現するため、言語講習を含めた制度的インフラの整備が重要になっているといえよう。
結論
①東アジアの地域経済統合と国内の人口変動は、国内の労働市場における需給ミスマッチを拡大する作用を及ぼしている。失業者ばかりでなく、無業者の増大は、深刻な問題を提起しよう。
独仏などの諸国の経験を踏まえれば、②雇用保険のみならず、生活保護を含めた給付制度の見直しと、安定所(ハローワーク)と自治体(市町村)の分担と連携の在り方などの労働市場のシステムの改革とセットで行うことが不可欠である。
さらに、④地域労働市場の需給ミスマッチを緩和することによる地域経済活性化の視点と、東アジア全体の経済統合の推進の観点を併せて、地域・自治体レベルの外国人政策(「定住外国人対策」又は「多文化共生政策」)を前進させる必要があると言えよう。

公開日・更新日

公開日
2010-06-04
更新日
-