子育て世帯のセーフティーネットに関する総合的研究

文献情報

文献番号
200901031A
報告書区分
総括
研究課題名
子育て世帯のセーフティーネットに関する総合的研究
課題番号
H21-政策・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大石 亜希子(国立大学法人 千葉大学 法経学部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 彩(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 野口 晴子(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 久保田 まり(東洋英和女学院大学 人間科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、次世代育成支援の観点から子育て世帯を巡るセーフティーネットのあり方を、経済学、社会学、発達心理学の専門家を交えて総合的に研究する。具体的には、(1)人生の出発時点における格差の実態とそれをもたらす要因を、女性の避妊行動を含む世帯形成過程や社会経済的属性について把握するとともに、(2)世帯の社会経済的属性と子どもの健康格差の関係を分析し、(3)母子世帯や外国籍世帯の子ども、要保護児童など不利な条件の重複する脆弱な世帯の子どもの属性とセーフティーネットのあり方を考察する
研究方法
1)マイクロデータによる実証分析、2)児童養護施設の視察、専門家ヒアリング、3)インタビュー調査、4)専門家を討論者に招き、2010年2月にワークショップを開催。
結果と考察
第1に、子どもの出生時点においても少なからぬ格差が存在する。特に、ライフステージの違いを考慮しても、所得格差をはるかに上回る大幅な資産格差が存在する。第2に、子どもの出生に至る前段階の、妊娠あるいは避妊という現象についても社会経済的要因との関連が強いことが明らかになった。第3に、子どもの置かれた社会経済状況によって子どもの間に健康格差が生じている。第4に、虐待・ネグレクトを防ぐためには、親や子どものハイリスクを早期に同定し、継続的介入に至るまでの「途切れのない援助」を実施することが必要である。第5に、生活保護のスティグマを防ぎ、子どもへの貧困の連鎖を防ぐためには生活保護で全ての給付を行う現在の制度を見直し、普遍的な社会手当を拡充することが望まれる。第6に、正規・非正規間の格差は外国人労働者やその世帯にいる子どもなどの医療保険加入行動にも大きな影響を及ぼしている。
結論
低所得層の子どもがライフイベントによって極端に悪化した状況に陥らないために、主に住宅や教育、医療面でのセーフティーネットの整備が求められる。虐待対策としては、我が国においても、地域保健師やソーシャルワーカーを中心とした家庭訪問サービスや、多職種から構成される協働チームと包括的援助プログラムの開発・実践が求められる。同時に、被保護母子世帯の就労を通じた自立を困難にする要因として、被保護者本人の要因だけでなく、労働市場における男女間の賃金格差や正規・非正規労働者間の格差があるため、是正に向けて社会保険制度の見直しなどセーフティーネット機能の強化が求められる。

公開日・更新日

公開日
2010-06-04
更新日
-