生活習慣・健診結果が生涯医療費に及ぼす影響に関する研究

文献情報

文献番号
200901013A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣・健診結果が生涯医療費に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-026
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋裕子(奈良女子大学 保健管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,106,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
喫煙、肥満、運動不足などの生活習慣リスクを有する者では、様々な疾病の発生率が上がるため、医療費が増加する。しかし、そのようなハイ・リスク者の平均余命は短いので、生涯医療費まで増加するかどうかは明らかでない。
本研究の目的は、上記の生活習慣や健診結果(高血圧・高血糖など)が平均余命と生涯医療費に及ぼす影響を分析し、疾病予防の長期的な医療経済効果を解明することである。
研究方法
宮城県大崎保健所管内の40歳から79歳の国民健康保険加入者全員約5万2千人を対象に、平成6年度に生活習慣などのアンケート調査を実施し、翌年1月以降の医療費と死亡・異動を平成21年度まで追跡した。
喫煙習慣(喫煙・非喫煙)、歩行時間(1日1時間以上・未満)、血圧(正常血圧・正常髙値血圧・高血圧)、血糖(血糖正常・高血糖)、脂質(脂質正常・脂質異常)に関する健診成績について、40歳の平均余命と40歳以降の生涯医療費を計算した。
本研究は所属施設の倫理委員会で承認されている。
結果と考察
男女で同様の結果だったので、40歳男性の結果だけを示す。
喫煙習慣:平均余命は非喫煙群44.7年に対して喫煙群で3.7年短く、生涯医療費は前者1491.4万円に対して後者で6.7%低かった。
歩行時間:平均余命は1日1時間以上歩行群43.5年に対して1時間未満群で1.5年短かったが、生涯医療費は前者1282.8万円に対して後者で5.5%高かった。
血圧レベル:平均余命は正常血圧群46.5年に対して高血圧群で1.7年短かったが、生涯医療費は前者1334.3万円に対して後者で22.0%高かった。
血糖レベル:平均余命は血糖正常群46.0年に対して高血糖群で2.1年短かったが、生涯医療費は前者1476.0万円に対して後者で5.3%高かった。
脂質レベル:平均余命は脂質正常群46.6年に対して脂質異常群で2.7年短かったが、生涯医療費は前者1458.3万円に対して後者で1.1%高かった。
結論
運動不足・高血圧・高血糖・脂質異常の者では、短命であることに加えて生涯医療費も高かった。健康的な生活習慣の実践や生活習慣病の適切な予防・管理により、平均余命の延長と生涯医療費の低減、そして良好な健康レベルでの生存期間の延長がもたらされる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200901013B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣・健診結果が生涯医療費に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-026
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋裕子(奈良女子大学 保健管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
喫煙、肥満、運動不足などの生活習慣リスクを有する者では、様々な疾病の発生率が上がるため、医療費が増加する。しかし、そのようなハイ・リスク者の平均余命は短いので、生涯医療費まで増加するかどうかは明らかでない。
本研究の目的は、上記の生活習慣や健診結果(高血圧・高血糖など)が平均余命と生涯医療費に及ぼす影響を分析し、疾病予防の長期的な医療経済効果を解明することである。
研究方法
宮城県大崎保健所管内の40歳から79歳の国民健康保険加入者全員約5万2千人を対象に、平成6年度に生活習慣などのアンケート調査を実施し、翌年1月以降の医療費と死亡・異動を平成21年度まで追跡した。
喫煙習慣(喫煙・非喫煙)、体格(やせ・普通体重・過体重・肥満)、歩行時間(1日1時間以上・未満)、血圧・血糖・脂質に関する健診成績について、40歳の平均余命と40歳以降の生涯医療費を計算した。
本研究は所属施設の倫理委員会で承認されている。
結果と考察
男女で同様の結果だったので、40歳男性の結果だけを示す。
喫煙習慣:平均余命は非喫煙群44.7年に対して喫煙群で3.7年短く、生涯医療費は前者1491.4万円に対して後者で6.7%低かった。
BMIレベル:平均余命は、普通体重群で39.9年に対して肥満群で0.5年短かったが、生涯医療費は前者1313.2万円に対して後者で13.7%高かった。
歩行時間:平均余命は1日1時間以上歩行群43.5年に対して1時間未満群で1.5年短かったが、生涯医療費は前者1282.8万円に対して後者で5.5%高かった。
血圧レベル:平均余命は正常血圧群46.5年に対して高血圧群で1.7年短かったが、生涯医療費は前者1334.3万円に対して後者で22.0%高かった。
血糖レベル:平均余命は血糖正常群46.0年に対して高血糖群で2.1年短かったが、生涯医療費は前者1476.0万円に対して後者で5.3%高かった。
脂質レベル:平均余命は脂質正常群46.6年に対して脂質異常群で2.7年短かったが、生涯医療費は前者1458.3万円に対して後者で1.1%高かった。
結論
肥満・運動不足・高血圧・高血糖・脂質異常の者では、短命であることに加えて生涯医療費も高かった。健康的な生活習慣の実践や生活習慣病の適切な予防・管理により、平均余命の延長と生涯医療費の低減、そして良好な健康レベルでの生存期間の延長がもたらされる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200901013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
各種の生活習慣が医療費に及ぼす影響などについて、これまでに英文論文を6編発表し、さらに3編を現在投稿中である。論文は、Preventive medicineやHealth Policyなどの一流誌に掲載され、国内外で大きな注目を集めている。本研究では5万人超の地域住民の医療費を14年以上にわたって追跡しており、このテーマに関する世界最大規模のコホート研究として高く評価されており、今後さらなる学術的発展性が期待されている。
臨床的観点からの成果
血圧・血糖・血清脂質のレベル別に平均余命と生涯医療費を計算するという本研究の試みは世界的にも例がないもので、ユニークな資料として国内外で注目を集めている。本研究の成果を用いることにより、臨床現場における患者教育がさらに効果的に行われるだけでなく、生活習慣病の予防と治療に関して医療資源をより効率的に使用するための戦略を検討することが可能となった。
ガイドライン等の開発
本研究の成果に基づいて、研究代表者は疾病予防対策の費用対効果を具体的に示すとともに、医療保険に予防原理を導入することにより国民における疾病予防と健康増進の取組みにインセンティブを付与するべきであるという提言を「週刊社会保障」誌などに発表した。今後、その提言が実地に行われることにより、わが国における健康づくりの拡充、そして国民医療費の適正化が望まれている。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は、健康づくり国民運動「健康日本21」や特定健康診査・特定保健指導の推進について、費用対効果の面からエビデンスを提供したものである。今後、研究成果の普及に努め、もって厚生行政上の諸施策の推進に貢献していくものである。
その他のインパクト
本研究成果は、日本経済新聞、読売新聞、NHKのニュース番組などで報道されるなど、社会的にも大きな注目を集めた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野HP (http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohmori-Matsuda K,Tsuji I, et al.
The joint impact of cardiovascular risk factors upon medical costs.
Preventive Medicine , 44 , 349-355  (2007)
原著論文2
Hozawa A, Tsuji I, et al.
Attributable Risk Fraction of Prehypertension on Cardiovascular Disease Mortality in the Japanese Population: The Ohsaki Study.
American Journal of Hypertension , 22 (3) , 267-272  (2009)
原著論文3
Naganuma T, Tsuji I, et al.
Green Tea Consumption and Hematologic Malignancies in Japan: The Ohsaki Study.
American Journal of Epidemiology , 170 (6) , 730-738  (2009)
原著論文4
Kuriyama S, Tsuji I, et al.
Factors Associated With Psychological Distress in a Community-Dwelling Japanese Population: The Ohsaki Cohort 2006 Study.
Journal of Epidemiology , 19 (6) , 294-302  (2009)
原著論文5
Hozawa A, Tsuji I, et al.
Green tea consumption is associated with lower psychological distress in a general population: the Ohsaki Cohort 2006 Study.
American Journal of Clinical Nutrition , 90 (5) , 1390-1396  (2009)
原著論文6
Hayashida K, Takahashi Y, Tsuji I, et al.
Difference in lifetime medical expenditures between male smokers and non-smokers.
Health Policy , 94 (1) , 84-89  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-