国、都道府県の医療費適正化計画の重点対象の発見に関する研究

文献情報

文献番号
200901010A
報告書区分
総括
研究課題名
国、都道府県の医療費適正化計画の重点対象の発見に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-023
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
印南 一路(慶應義塾大学 総合政策学部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀真奈美(東海大学 教養学部)
  • 古城隆雄(慶應義塾大学 SFC研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,706,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今期の目的は、1)これまでの分担研究を総括し、各研究の位置づけを明確化すること、2)医療費適正化政策を含む医療政策の目的と理念について提起すること 3)今後の医療費適正化計画が進むべき方向と課題を明確にすることの三つである。
研究方法
次の9つの研究を実施した。1)医療費適正化の在り方―医療政策の目的と理念、2)医療費適正化政策の歴史的変遷と課題 3)研究協力6府県の医療費適正化計画に関する評価レポート 4)受診指数の推定におけるベイズ統計の活用 5)保健事業における地区組織活動と医療費適正化の取り組みの実態-全国調査の結果について-6)保健予防対策の重点支援地域の発見―ベイズ推計による補正を施した受診指数と死亡率データの活用― 7)血管性認知症、虚血性心疾患、脳卒中患者の発症前受診行動の分析 8)フランスの医療費適正化政策と日本への示唆 9)先進諸国における医療費の増嵩要因に関する文献レビューである。
結果と考察
1)の研究では、問題解決一般論と実際の医療問題の批判的検討を通じて、医療政策の目的論と理念論を展開した。2)の研究では、医療費適正化政策を含む全般的な医療政策の展開を確認し、医療費適正化政策が、医療費負担率(GDPに占める医療費の割合)の安定化に寄与したかを考察した。3)の研究では、研究協力6府県の医療費適正化計画の内容を精査し、各府県の計画に対する評価レポートをまとめ、共通する課題について考察した。4)の研究では、小地域の指標を推定すると推定精度が低下する問題について、ベイズ統計に基づく補正の有用性と効率に関する知見をまとめた。5)の研究では、全国の全市区町村における地区組織活動と医療費適正化の取り組みに関する実態状況を明らかにした。6)の研究では、脳血管疾患患者と脳血管疾患の危険因子である高血圧患者を対象に、複数の指標を用いて重点的に支援するべき市町村を対策度別に明らかにした。7)の研究では、分析対象疾病を発症した患者のうち、発症前に医療機関に受診していた患者が42.3%であることを示し、早期受診の必要性を確認した。8)研究では、フランスにおける医療費の適正化とは、医療の効率的な提供と受診行動の合理化により、結果として無駄な医療費を減らすことを目的とした試みであることを示した。9)の研究では、医療費の増嵩に関する諸外国の先行研究を整理した。
結論
現在の第一次医療費適正化計画は、健診に関する目標と在院日数の短縮化に関する目標しか掲げられていないが、次期の医療費適正化計画では、医療へのアクセスを可視化し、重点支援地域を明確にすることが求められると思われる。

公開日・更新日

公開日
2010-07-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200901010B
報告書区分
総合
研究課題名
国、都道府県の医療費適正化計画の重点対象の発見に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-023
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
印南 一路(慶應義塾大学 総合政策学部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀真奈美(東海大学 教養学部)
  • 古城隆雄(慶應義塾大学 SFC研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2006年度の医療制度改革関連法案により、国および都道府県に策定が義務付けられた医療費適正化計画は、保健・介護・健康増進関連の計画との整合性を確保した包括的な計画として位置づけられている。本研究の目的は、適正化重点対象グループの発見のための分析方法を開発すること、また、医療費適正化計画の実態把握と計画に対する具体的な提案を行うことを通じて、国および都道府県の医療費適正化計画の策定を支援することにある。
研究方法
研究全体は、合計20の分担研究報告書からなるが、これらはⅠ 医療費の決定要因・増嵩要因、適正化重点対象疾病の医療費決定要因に関する先行研究レビュー(5分担報告書)、Ⅱ 医療費適正化重点対象グループの発見方法の開発(6分担報告書)、Ⅲ 海外の医療・介護供給体制と医療費適正化政策の動向調査(3分担報告書)、Ⅳ 医療費適正化計画の実態把握と課題発見(6分担報告書)に整理できる。研究の本体はⅡおよびⅣであり、ⅠとⅢは側面支援的な研究という位置づけである。
結果と考察
第一は、医療費を適正化する方法として、国及び都道府県といった上位の自治体が下位の自治体や二次医療圏の適正化するべき医療費総額に関する目標を定め、地域状況に最も明るい立場にある市町村が、最終的に適正化重点対象グループと具体的な方法を決定するというアプローチを提起した。特に、地域独自の保健活動が活発化することも選択肢に入れることが期待される。
第二は、適正化を重点的に行うべき疾病(適正化重点対象疾病と定義)を整理し、グループ(疾病、性、年齢)別区分医療費を相対比較することで重点対象を発見する手法が有効であることを示した。ただし、医療費だけの相対比較は危険であり、医療へのアクセスを考慮すべきである。
第三は、医療費適正化政策の歴史および医療政策の目的論、理念論に照らすと、医療費適正化は医療全体の適正化を意味し、重要領域への投資も含まれることを示した。現在、医療へのアクセス、とりわけ救急救命医療、急性期医療へのアクセスが、重要な政策課題となっている。現在の第一次医療費適正化計画は、健診に関する目標と在院日数の短縮化に関する目標のみ掲げているが、次期の医療費適正化計画では、医療へのアクセスを可視化し、重点支援地域を明確にすることが必要だろう。
結論
本研究全体から、現状の医療費適正化計画の課題と次期計画に向けての課題と改善方法を一定程度明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2010-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-11-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200901010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療費適正化を進める上で必要となる、国、都道府県、市町村の役割分担のあり方、医療費や介護費の分析を通じて医療費適正化の重点対象グループを明らかにする方法、現状の医療費適正化計画の課題と次期計画に向けての改善方法を明らかにした。
臨床的観点からの成果
該当なし
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
本研究で培った医療費分析の方法や重点対象グループの検討方法については、山形県の医療費適正化計画と広島県江田島市の健康日本21の計画の一部に採用され、活用されている。
その他のインパクト
山形県の村山医療圏内の市町村を対象に、医療費分析の方法について、講演を行った。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
古城隆雄
医療費の適正化対象地域の特定方法に関する分析と考察
公共選択学会 本大会論文  (2007)
原著論文2
印南一路 古城隆雄
医療費適正化計画の問題点--全国統一的な目標設定よりも重点的な目標設定を
社会保険旬報 , 2362 , 6-11  (2008)
原著論文3
古城隆雄 印南一路
血管性認知症、虚血性心疾患、脳卒中患者の発症前受診行動の分析
日本循環器病予防学会誌 , 45 (1) , 22-31  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2016-06-27