文献情報
文献番号
200901008A
報告書区分
総括
研究課題名
所得・資産・消費と社会保険料・税の関係に着目した社会保障の給付と負担の在り方に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-021
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
金子 能宏(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
- 岩本 康志(東京大学 大学院経済学研究科)
- 小塩 隆士(一橋大学 経済研究所)
- 田近 栄治(一橋大学 大学院経済学研究科)
- ホリオカ、チャールズ・ユウジ(大阪大学 社会経済研究所)
- 山田 篤裕(慶應義塾大学 経済学部)
- 八塩 裕之(京都産業大学 経済学部)
- 稲垣 誠一(一橋大学 経済研究所)
- 西山 裕(北海道大学 公共政策大学院)
- 濱秋 純哉(内閣府 経済社会総合研究所)
- 東 修司(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
- 米山 正敏(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
- 野口 晴子(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
- 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
- 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
- 酒井 正(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
- 黒田 有志弥(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,706,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
所得・資産格差が問題となっている今日、社会保障の給付と負担の在り方を、格差の要因の分析や再分配政策の効果分析に基づいて検討することが求められている。その際、社会保障財源には公費負担があり、税制にも控除制度など再分配機能があるので、社会保険料と税を関係づけて検討する必要がある。また、所得は引退に備えた消費・貯蓄選択を通じて資産ひいては生涯所得と関係するので、生涯所得でみた負担と給付の関係も考慮する必要がある。従って、本研究では、ライフサイクルを通じた持続可能な社会保障制度構築に資するため、所得・資産・消費と社会保険料・税の関係に着目した社会保障の給付と負担の在り方を実証分析、制度分析、国際比較により総合的に研究する。
研究方法
「国民生活基礎調査」調査票の使用許可を得て、所得・生涯所得の実態とその格差の要因に関する実証分析を行い、その結果を活用し、年金・税制による再分配政策のマイクロシミュレーション分析を行う。ライフサイクルの観点からは、引退過程と健康・受診状況等に関するアンケート調査を実施し分析するとともに、高齢者の介護費用負担可能性等について分析する。制度分析としては社会保障財源の公費投入と年金制度、介護保険、社会保険病院、生活保護の能力活用要件を考察し、国際比較としてOECD所得格差比較研究に協力する共に、成長著しく所得変動の大きい東アジア諸国の分析を行う。
結果と考察
「国民生活基礎調査」再集計に基づく分析では、ジニ係数でみた格差は2000年からは安定的であるが、再分配政策の格差縮小効果は主に高齢層で発生し、若年・中年層ではその効果は限定的であった。再集計結果を活用したマイクロシミュレーション分析では、生涯所得については世代内格差が大きいが、従来の控除制度を整理し国民1人当たり10万円の基礎的税額控除を設定すると再分配機能が高まる結果が得られた。「健康と引退に関する調査」の分析では健康指標の内生バイアスが見いだされ、高齢者の就労と医療給付との関係をみるための実証分析の課題が示された。制度分析では、介護保険の給付と提供体制の課題、社会保険病院の課題が明らかになった。
結論
所得格差は近年、比較的安定的に推移しているが、現行の再分配政策は主に若年層から高齢層への所得移転に基づくため、若年者や子育て世帯など現役世代の低所得者には控除等、税制とも関連づけた効果的な再分配政策を行う必要がある。高齢者に関しては、年金財源の安定的確保、介護・地域医療連携、社会保険病院改革等も課題となる。
公開日・更新日
公開日
2010-06-04
更新日
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