文献情報
文献番号
200901003A
報告書区分
総括
研究課題名
保育環境の質尺度の開発と保育研修利用に関する調査研究
課題番号
H19-政策・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
秋田 喜代美(東京大学 大学院教育学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 小田 豊(国立特別支援教育総合研究所)
- 芦田 宏(兵庫県立大学 環境人間学部)
- 鈴木 正敏(兵庫教育大学 学校教育研究科)
- 門田 理世(西南学院大学 人間科学部)
- 野口 隆子(十文字学園女子大学 人間生活学部)
- 箕輪 潤子(川村学園女子大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,066,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、第1に、保育の質、特に保育過程の質という実践の側面に関する国際的政策や学術研究動向を調査すること、第2にその調査研究動向をふまえて、日本の保育所の園文化に応じた形で今後長期的に使用できる保育環境の質尺度(幼児版、乳児版)を開発すること、さらに第3に、その開発した尺度を保育所での園内研修や自己評価等の場での保育研修に利用することで、方法の有効性や活用法を開発検討することにある。
研究方法
①保育の質に関する文献・資料の収集と検討、国内外の共同研究者や有識者との意見交換を実施した。②日本の保育・園文化に応じた尺度(幼児版・乳児版)の開発:パイロットスタディや調査の知見をふまえ、引き続き研修等を実施し、さらに尺度の洗練化・改善をおこなった。DVD作成にあたってベルギーのオリジナルSICS作成者の協力のもと評定を実施し、信頼性と内容の妥当性を検討した。また、台湾の共同研究者の協力のもと台湾版と日本版との比較検討をおこなった。さらに、3歳未満児を対象として1保育所に協力を頂き保育者と意見交換をおこないながら乳児版尺度の開発を試みた。③幼児版尺度を用いた保育所での園内研修ならびに保育者養成校での活用:研修のための幼児版ブックレット及びDVDを作成し、それらを利用しながら保育者を対象とした7か所における園内研修、ならびに保育者養成大学2大学における学生を対象に、有効性と利用可能性を検討した。
結果と考察
尺度の学術研究上の信頼性や妥当性とともに、園での実践における研修ならびに養成機関での使用の有用性は明らかにされた。各園の実態を踏まえた創意工夫によってそれぞれ独自の利用をしたり、保育者間の同僚との話し合いを引き出す点や、保育のよさへの視点が得られやすいことなどが示された。養成機関において、新たな子ども理解や自分の視点の振り返り、視点の相対化など、多くの学生において有効性が示唆された。今後開発した幼児版、乳児版について時間をかけて数園で実際に利用しての変化を分析し、他の尺度利用との関連を検討していくこと、またその中で見出された本尺度の課題の検討により改訂を実施することなどが残された課題である。
結論
最終年度である本年度においては、「子どもの経験から振り返る保育プロセス」の尺度の幼児版が実践的に使用可能であることを示すと共に、乳児版について幼児版作成の経験を踏まえて開発を行なった。また他の現在の保育の質の尺度や動向との関連から、本尺度は園での実践向上の有用性を指摘した。今後、本尺度活用の分析についてはさらに質向上との関連を丁寧に分析していくという課題も残されている。
公開日・更新日
公開日
2010-06-04
更新日
-