公衆浴場におけるレジオネラの消毒方法に関する研究

文献情報

文献番号
200840030A
報告書区分
総括
研究課題名
公衆浴場におけるレジオネラの消毒方法に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-015
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 卓郎(国立感染症研究所 細菌第1部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉 文明(国立感染症研究所 細菌第1部)
  • 秋山 茂(北里大学・医療衛生学)
  • 坂上 吉一(近畿大学農学部・公衆衛生学)
  • 神野 透人(国立医薬品食品衛生研究所・衛生化学)
  • 縣 邦雄(アクアス㈱・つくば総合研究所)
  • 杉山 寛治(静岡県環境衛生科学研究所・公衆衛生細菌学)
  • 泉山 信司(国立感染症研究所・寄生動物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,561,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
入浴施設は『浴槽水の有機物 → 細菌繁殖 → 宿主アメーバ等の繁殖 → レジオネラ増殖』という汚染の構図が成立しており、最も汚染の起きやすい環境である。現行の残留塩素による消毒を中心とした汚染防止対策には多くの問題を抱えている。そこで、遊離残量塩素の代替方法としてクロラミン消毒の効果について、ならびに浴槽システムの洗浄・消毒について検討する。
研究方法
昨年の有機モノクロラミンの検討に引き続き、無機クロラミンによるレジオネラ属菌、宿主アメーバ、従属栄養細菌等に対する消毒効果を検討する。無機のモノクロラミンを用いて各種微生物に対する消毒効果(Ct値)を求め、併せて皮膚一次刺激性について検討する。また、レジオネラを含むバイオフィルム形成菌に対する洗浄・消毒剤の検討、浴槽水中の塩素消毒に伴う副生成物による暴露評価を実施する。
結果と考察
Legionella pneumophila血清群1に対する無機モノクロラミンの不活化効果はpH 7.5で全残留塩素濃度として1.0 mg/L、3.0mg/L および5.6 mg/L で4.3-log 以上の不活化効果を得るのにそれぞれの接触時間は10分、5分、2分以内、pH 8.8の条件では1.1 mg/L、3.1mg/L、6.1mg/Lで20分、9分、5分であった。これより、4-log程度の不活化に要するCt値は中性域で10未満、高pH領域で25~30mg・min/L程度であった。また、レジオネラ属菌の宿主アメーバNaegleriaに対してきわめて効果的で、4-log10程度の不活化効果はpH7.5から9.0の範囲でCt値5~8mg・min/Lと計算された。本剤の皮膚一次刺激性試験の結果は50mg/Lの濃度において「無刺激物」と判定された。次亜塩素酸-Naによる消毒副生成物のクロロホルムは公衆浴場、次いで室内遊泳プールでの経気道暴露の寄与率が高いことが確認された。
結論
レジオネラや宿主アメーバ(Naegleria)に対して無機モノクロラミンは高い消毒効果を示し、高pH 領域においても十分な消毒効果を示すことが確認された。本剤は皮膚一次刺激性試験において「無刺激物」と判定され、次亜塩素酸-Naの代替消毒剤として有望である。最終年度は実機レベルにおける無機モノクロラミンの消毒効果を実証し、普及に向けた検討を行う。

公開日・更新日

公開日
2009-05-14
更新日
-