地域における健康危機に対応するための地方衛生研究所機能強化に関する研究

文献情報

文献番号
200840026A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における健康危機に対応するための地方衛生研究所機能強化に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 健清(福岡県保健環境研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 長井 忠則(北海道立衛生研究所)
  • 前田 秀雄(東京都健康安全研究センター)
  • 織田 肇(大阪府立公衆衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域における健康危機管理体制の一翼として、地方衛生研究所の機能強化が求められている。そこで、本研究は健康危機発生時に対応するため、微生物、化学物質を網羅的かつ迅速に分析する手法を検討し、それぞれの有効性を疫学的に評価することと、地研の疫学機能における課題と対策を明らかにし、その機能強化を図ることを目的とする。
研究方法
細菌部門では、一般的な食中毒原因菌について、Real Time PCR法の実証的試験を行った。食中毒事例の有症者便、食材について検証した。ウイルス部門では、本年度は、呼吸器ウイルスを対象としたMultiplex RT nested PCR法及びエンテロウイルスを対象としたPCR法による同定型別法について、患者検体に応用し、評価した。また、化学部門では、ヒ素、カドミウム、鉛、及び水銀を対象とし、酸で希釈後測定する方法と、マイクロウェーブ分解装置で処理し測定する方法を、標準的な迅速スクリーニング分析法として検討した。疫学部門では、アウトブレイク探知ガイドラインを作成し、過去の事例で検証を行った、また、地方衛生研究所に求められている疫学機能や、所内の連携について検討した。
結果と考察
細菌では、1日以内(分離培養法では5-7日)で十分な感度で、妥当な結果を得ることができた。ウイルス部門では、呼吸器ウイルスの系では、本法では1-2日程度(分離培養法では1週間)で十分な感度の結果が得られた。エンテロウイルスの系についても、検体から妥当に検出された。化学部門では、2法ともに、ヒ素、カドミウム及び鉛では、平均回収率、変動係数とも良好で、水銀では一部に問題があったが、スクリーニング法としては問題がなく、検査時間の大幅な短縮(約2日→2-6時間)が可能であった。また、疫学部門では、感染症アウトブレイク探知ガイドラインの実用化が可能であること、保健所の疫学調査を支援する機能が強く求められていること、地研内での検査部門と疫学部門の協力、相互理解が全体としての疫学機能の向上に必要であることが示唆された。
結論
本研究において検討した網羅的かつ迅速な診断法は、食水系感染症原因細菌、呼吸器ウイルス、エンテロウイルス、重金属について、実用化が可能と考えられた。今後は、地方衛生研究所全体で活用できる方法として提示することを目指す。また、疫学的機能の強化については、アウトブレイク探知のためのガイドラインの作成や、保健所に対する疫学機能の支援、地方衛生研究所内で疫学部門と検査部門の日常的な連携を図ることなどが有効であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2009-04-24
更新日
-