バイオテロの曝露状況の推定、被害予測・公衆衛生的対応の効果評価のための数理モデルを利用した天然痘ワクチンの備蓄及び使用計画に関する研究

文献情報

文献番号
200840012A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオテロの曝露状況の推定、被害予測・公衆衛生的対応の効果評価のための数理モデルを利用した天然痘ワクチンの備蓄及び使用計画に関する研究
課題番号
H19-テロ・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 内山巌雄(京都大学)
  • 庵原俊昭(独立行政法人国立病院機構三重病院)
  • 一戸貞人(千葉県市原健康福祉センター・市原保健所)
  • 加來浩器(防衛医科大学校)
  • 大日康史(国立感染症研究所)
  • 菅原民枝(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
初期の患者発生の状況から曝露地点、曝露日時、曝露量を予測することによって推定感染者の絞り込み、潜伏期間にある感染者の救命、最終的な発症者の推定、必要な医療資源の確保への時間的な余裕を与えることを目的としてバイオテロによる曝露状況の推定アルゴリズムを開発する。
研究方法
バイオテロによる患者が発生し、その状況が把握されている状況に関して、サーベイランスの情報のみが利用可能、つまり患者自宅のみが既知の場合、学校や職場等の目的地も既知の場合、さらに積極的疫学調査の結果一定期間の自宅、目的地、出発・到着時刻、経路、立ち寄り先が既知の場合、の3つの状況を設定する。また、水痘罹患時急性期の抗体上昇について、既接種者、未接種者の別で検討した。
結果と考察
自宅のみが既知の場合には単純重心、人口重心、人口モーメント最小化の3種類の推定を行う。目的地も既知の場合には、時間は未設定で経路案内サービスを利用して移動経路の検索を行い、得られた経路情報は手入力によりシステム登録し、患者が最接近する地点を探索する方法をもちいる。一定期間の自宅、目的地、出発・到着時刻、経路、立ち寄り先が既知の場合には、経路案内サービスに時間、場所の情報を入力して移動経路の検索を行い、患者が最接近する地点・日時を探索する。また、他のウイルス感染症と異なり水痘の場合には、ワクチン未接種者では急性期においてはIgM抗体もIgG抗体も上昇しないこと、一方ワクチン接種者では、抗体上昇している可能性が高いことが、明らかとなった。つまり、水痘ワクチン未接種の天然痘疑い患者に対して水痘の抗体を調べても、水痘である診断を下せない。その意味からも、水痘のワクチン接種は、水痘罹患時に天然痘を早期に否定するためにも必要である。
結論
バイオテロによる曝露状況の推定アルゴリズム開発に関しては、自宅のみが既知の場合の暴露地点の推定は非可住地域を排除できる人口モーメント最小化が最適だと考えられる。
天然痘対策としての水痘のウイルス学的検討から検査においても水痘の鑑別診断は困難であることが示唆された。逆に水痘の根絶の必要性、そのための水痘ワクチンの定期接種化が重要であり、また天然痘の早期探知のために水痘のサーベイランスの強化が重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-19
更新日
-