シックハウス症候群の診断・治療法及び具体的方策に関する研究

文献情報

文献番号
200840009A
報告書区分
総括
研究課題名
シックハウス症候群の診断・治療法及び具体的方策に関する研究
課題番号
H18-健危・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 一男(独立行政法人国立病院機構相模原病院)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川眞紀(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター )
  • 坂本龍雄(名古屋大学大学院 医学系研究科 小児科学講座)
  • 西間三馨(国立病院機構福岡病院)
  • 木村五郎(国立病院機構南岡山医療センター)
  • 岡本美孝(千葉大学大学院 医学研究院 耳鼻咽喉科)
  • 田中宏幸(岐阜薬科大学 機能分子学大講座 薬理学研究室)
  • 池澤善郎(横浜市立大学大学院 医学研究科 生体システム)
  • 中村陽一(横浜市立みなと赤十字病院 アレルギーセンター)
  • 内尾英一(福岡大学 医学部 眼科)
  • 小倉英郎(国立病院機構高知病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
16,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シックハウス症候群(SHS)の定義・診断基準の統一を図り、SHSとしての健康障害の発症病態機序に関して基礎・臨床医学的研究を進め、診療マニュアルを作成し、一般臨床医でもSHS患者の診断・治療等の診療を可能にするとともに、医療経済学的・社会医学的視点からの検討も行うことで、SHSの疾患概念の確立を図る。
研究方法
相澤班との合意でのSHSの定義と診断基準の見直しと確定、医療経済学的視点からの研究として、SHS患者へのQOL・医療関連費用調査、各個別研究では、最終年度として、臨床研究での患者収集とデータの蓄積と3年間のまとめ、基礎的研究としては、前年度からの動物実験を進め、SHSの病態機序の解明を図った。また、相澤班との合同作業として、一般医療機関において診療可能とすべくSHS診療マニュアルを作成した。
結果と考察
本年度の研究として、これまで取り上げてこられなかったSHS患者の実態調査を昨年度から開始し、症例数の増加を図り、最終結果をまとめた。共同研究として、昨年度策定した(暫定的)診断基準を本年度は、さらに相澤班との合同班会議で検討し、確定した。しかしながら、これらは、現時点での確定版であり、今後の研究の進展によっては、また改訂することがあると思われる。今後は、この基準を用いての患者調査等の疫学研究や一般診療医での診断の役に立つことを期待したい。個別研究は、これまで2年間実施してきた各研究の進展を図り、最終年度として、各研究毎にその総括を行い、全体の研究をまとめて、マニュアルの内容にエビデンスを与えることを目標とした。しかしながら、SHSの発症要因、病態機序については、未だ解決したとは言い難く、今後の臨床例の蓄積とその背景因子及び原因物質の特定に向けて、更なる研究の推進が望まれる。
結論
SHS(狭義)は、アレルギー疾患と症状は類似するも異なる病態機序により発現している独立した疾病分類とすべき疾患である。SHSについては、疾患分類としての確立と病態機序の解明、さらに治療・予防法の確立等の医学としての研究の推進とともに、現在社会問題ともなっているSHS患者に対する環境対策、援助対策等が重要な課題である。そのためにも、一般診療医が本疾患を診療可能とするための診療マニュアルの普及とできる限り多くの患者の方々の実態を調査することが必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200840009B
報告書区分
総合
研究課題名
シックハウス症候群の診断・治療法及び具体的方策に関する研究
課題番号
H18-健危・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 一男(独立行政法人国立病院機構相模原病院)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川眞紀(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 坂本龍雄(名古屋大学大学院 医学系研究科 小児科学講座)
  • 西間三馨(国立病院機構福岡病院)
  • 高橋清(国立病院機構南岡山医療センター)
  • 木村五郎(国立病院機構南岡山医療センター)
  • 岡本美孝(千葉大学大学院 医学研究院 耳鼻咽喉科)
  • 永井博弌(岐阜薬科大学 機能分子学大講座 薬理学研究室)
  • 田中宏幸(岐阜薬科大学 機能分子学大講座 薬理学研究室)
  • 池澤善郎(横浜市立大学大学院 医学研究科生体システム)
  • 中村陽一(横浜市立みなと赤十字病院 アレルギーセンター)
  • 内尾英一(福岡大学 医学部 眼科)
  • 小倉英郎(国立病院機構高知病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SHSの定義・診断基準の統一を図り、SHSとしての健康障害の発症病態機序に関して基礎・臨床医学的研究を進め、診断・治療の手引きを作成し、一般臨床医でもSHS患者の診断・治療等の診療を可能にするとともに、医療経済学的視点・社会医学的視点からの検討も行うことで、SHSの疾患概念の確立を図る。
研究方法
1.医療経済学的研究としての共同調査研究を2課題、2.個別研究(臨床研究)を7課題、個別研究(基礎研究)を3課題、4.合同班研究[相澤班、秋山班]として、本研究班の最終目標である(1)シックハウス症候群診断基準の作成、(2)シックハウス症候群診断マニュアルの作成、を行った。
結果と考察
3年間の本研究班の研究の結果としては、SHS(狭義)は、アレルギー疾患と症状は類似するもアレルギー疾患とは異なる病態機序により発現している独立した疾病分類とすべき疾患であるということで班全体の合意が得られた。医療機関調査からは、本疾患の診療報酬上の取り扱いの不十分さによる医療経営上の困難さが浮き彫りにされ、また、SHS患者の実態調査では、SHSの疾患としての医療者の認知及び社会的認知を望む声が多く、環境対策についての要望が多かった。これら医療経済学視点からの調査では、行政としての対応の必要性が高いことが示された。各個別研究では、未だSHSの病態機序はおろか、診断確定法、治療法については、不明の点が少なからずあり、今後の更なる研究の必要性が明らかになった。一般の医療施設でもSHS診療を可能とするべく診療マニュアルが作成されたことは、大きな成果であるが、今後は、病院経営上、我が国の保険診療の中で、十分実施可能な診療報酬の配慮を望むところである。
結論
SHSは、アレルギー疾患と症状は類似するもアレルギー疾患とは異なる病態機序により発現している独立した疾病分類とすべき疾患である。SHSについては、疾患分類としての確立と病態機序の解明、さらに治療法から予防法の確立等の医学としての研究の推進とともに、現在社会問題ともなっているSHS患者に対する環境対策、援助対策等が重要な課題となっているが、そのためにも、一般診療医が本疾患を診療可能とするための診療マニュアルの普及とできる限り多くの患者の方々の実態を調査することが必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200840009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
シックハウス症候群(狭義)は、アレルギー疾患と症状は類似するもアレルギー疾患とは異なる病態機序により発現している独立した疾病分類とすべき疾患である。未だ明確な病態機序は不明ではあるが、動物実験を中心とした基礎研究により、ホルムアルデヒドを中心とする化学物質曝露により、各種免疫系関連サイトカイン、ケモカインの関与が明らかになってきた。また、日常診療の場からの情報の蓄積、診断法の実施、治療法の実施等の積み重ねにより、今後の本疾患の研究及び日常診療における方向性を示すことができた。
臨床的観点からの成果
相澤班との共同研究として、シックハウス症候群の定義、診断基準を明らかにし、アレルギー疾患、精神神経疾患との相違を明確にしたことにより、今後の一般医レベルでの診療を可能にした。また、カプサイシン負荷試験、静脈血酸素分圧測定、functional MRI、化学物質負荷試験、皮疹の層別化、環境化学物質濃度の測定、等の診断法としての可能性や高脂血症治療薬であるコレスチミドによる治療の可能性、等について検討されてきた。まだ、確立とまではいかないが、今後の方向性は示すことができたと考える。
ガイドライン等の開発
相澤班と共同で一般臨床医向けの診療マニュアルを作成した。その概要は、[構成]1)シックハウス症候群の概念[a.シックビル症候群、b.シックハウス症候群対策・研究の歴史的背景、c.概念合意事項(定義、診断基準)2)診断の手順(a.問診・アンケート、b.検査法:臨床検査・日常暴露評価、c.鑑別疾患:アレルギー(小児科、内科、皮膚科、耳鼻科、眼科)、中毒、精神心理、感染症、3)対応(a.医学的対応:初診時の対応・専門外来への紹介/専門外来医療機関名簿・診断書の対応、b.行政的対応)、4)Q&A
その他行政的観点からの成果
シックハウス症候群を診療している7施設における診療実態から、本疾患の診療報酬上の取り扱いの不十分さによる医療経営上の困難さが浮き彫りにされたことは、今後の医療政策上に何らかの対処法を求めることの必要性を明らかにした。また、患者の実態調査により、患者の経済上の負担とQOLの阻害が大きいことが明らかになり、シックハウス症候群の医学的認知度と社会的認知度において未だ不十分な点が多いこと、行政としての対応の必要性が高いことが示された。労災認定審査に本研究で作成した診断基準が参考にされた。
その他のインパクト
本研究参加研究者は、各地域でのシックハウス症候群に関連したマスコミの取材等に逐次応じている。日本アレルギー学会、日本臨床環境医学会等の学術大会や認定医セミナー等で本研究班の成果をもとに演者、講師を務め医師や一般の方々に情報提供を行った。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
24件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
鳥居新平、平山耕一郎、秋山一男他
シックハウス症候群と未分類の多糖化学物質過敏症の分離の試みーシックハウス症候群の定義及び症状ー
アレルギー , 55 , 1515-1530  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-11-24
更新日
-