地域の健康危機管理を担う保健所職員等の資質向上に関する研究

文献情報

文献番号
200840003A
報告書区分
総括
研究課題名
地域の健康危機管理を担う保健所職員等の資質向上に関する研究
課題番号
H18-健危・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 元(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 内田博文(九州大学 大学院法学研究院)
  • 光石忠敬(光石法律特許事務所)
  • 角野文彦(滋賀県健康福祉部健康推進課)
  • 郡山一明(救命救急九州研修所)
  • 箱崎幸也(自衛隊中央病院 内科)
  • 田中良明(杉並区 荻窪保健センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
2,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、健康危機管理を担う保健所等の職員の資質向上を目指した体系的研修教育プログラムを作成することを目的とした。危機管理の際に問題となる人権に関わる法理の整理・教育、また人権保護システムの検証・構築も合わせて重点課題とした。教育訓練の具体的方法や研修媒体の開発を重視し、成果は自治体・保健所における危機管理訓練・研修において、実際に役立てられるものを意図した。
研究方法
 初年度(平成18年度)は、(1)健康危機管理教育体系開発のための論点整理、健康危機管理事例、過去の訓練の方法や教材に関する情報を、既存出版物の収集、自治体へのヒアリング等を通じて収集した。また、(2)健康危機管理に関連した人権保護・救済に関与する国内外の法制度についての情報を収集し、論点・運用上の課題の整理に着手した。これらを踏まえて、教育訓練教材の開発を本格化、危機対応の基礎的な考え方や予備知識を獲得するための教材、机上訓練用の演習シナリオ教材の開発を進め複数の出版を行った。また、自治体での危機管理訓練においてこれら教材を用いて訓練・評価を行い、教材・演習の改良を行った。
結果と考察
危機管理対応の訓練教材を作製した。自治体・保健所職員を対象とした演習を実施し、そのフィードバックを基に改訂を進めた。医科学的用語・概念、政策選択・実施に関わる行政手続き、根拠法令・規則など各々の側面について、特に解説を要する事項、難解な点を洗い出し、標記の改訂、語句の解説、また図表やプレゼンテーションの工夫など、教材・演習の改訂を実施した。感染症法による強制入院、学校閉鎖のあり方、外来診療から入院治療、プレパンデミックワクチン事前接種、タミフルの備蓄、リスク管理からみた新型インフルエンザ対策の実施要領、新型インフルエンザ・パンデミックの蓋然性の把握と評価等について、国内外のガイドライン・知見を基に整理して提示した。これら教材には、基本的な考え方や知識と共に、常に最新の動向を追った知見や方策の知悉という両側面を重視した。
結論
本研究が目的とした自治体・保健所職員の危機管理能力の資質向上には、多岐にわたる事項を明確に整理しながら教育・訓練・学習を進めていく必要がある。自治体職員、保健所職員が他の関連機関・部局と共同し、必要に応じ危機管理におけるリーダーシップを担っていくためには、継続的な教育プログラムの実施・参加を図る仕組み作りと共に、これらの効果を評価し有効性を高めていく制度等も今後の課題であろう。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200840003B
報告書区分
総合
研究課題名
地域の健康危機管理を担う保健所職員等の資質向上に関する研究
課題番号
H18-健危・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 元(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 内田博文(九州大学 大学院法学研究院)
  • 光石忠敬(光石法律特許事務所)
  • 角野文彦(滋賀県健康福祉部)
  • 郡山一明(救命救急九州研修所)
  • 箱崎幸也(自衛隊中央病院 内科)
  • 田中良明(杉並区 荻窪保健センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康危機管理を担う保健所等の職員の資質向上を目指した体系的研修教育プログラムを作成することを目的とした。危機管理の際に問題となる人権に関わる法理の整理・教育、また人権保護システムの検証・構築も合わせて重点課題とした。教育訓練の具体的方法や研修媒体の開発を重視し、成果は自治体・保健所における危機管理訓練・研修において、実際に役立てられるものを意図した。
研究方法
(1)健康危機管理教育体系開発のための論点整理、健康危機管理事例、過去の訓練の方法や教材に関する情報を、既存出版物の収集、自治体へのヒアリング等を通じて収集、(2)健康危機管理に関連した人権保護・救済に関与する国内外の法制度についての情報を収集し、論点・運用上の課題を整理した。危機対応の基礎的な考え方や予備知識を獲得するための教材、机上訓練用の演習シナリオ教材の開発を進め複数の出版を行った。また、自治体での危機管理訓練においてこれら教材を用いて訓練・評価を行い、教材・演習の改良を行った。危機管理に関連した人権保障については、現行法令の適用可能性と運用上の問題点について整理して教材とした。
結果と考察
国内外の関連資料の収集、論点整理を行った後、教材作成を開始、逐次、自治体が(保健所職員を対象として)実施する危機管理演習にて試用してフィードバックを得た。特に、原因が不明な段階からの危機対応、また新型インフルエンザ対策の各フェーズを題材とした机上訓練シナリオ、自治体の多部門間連携、リスクコミュニケーションには重点を置いた。また、危機管理に際しての人権保障の考え方と制度についても、情報収集と論点整理を行い、その上で、危機管理の各局面に沿った問題の列挙と対応、それらの法的根拠についての解説を作成した。特に、新型インフルエンザ等感染症発生時の危機対応のシナリオに沿って、法的に問題となる事項の検討を行い解説を行った。これらの成果に基づき、自治体職員の危機管理能力の向上に資する、総合的な教育訓練教材が作成された。
結論
危機対応戦略、コミュニケーション戦略、人権保障と法令に関する基礎知識と課題、健康危機シミュレーション(図上訓練や実施訓練)の提示等を取りまとめ、健康危機管理一般に適用可能な包括的教材(出版)の作成を行った。危機対応の戦略的対処・初動対応、国・自治体の機関連携、危機コミュニケーション、法令・法規と運用、演習訓練シナリオ、危機管理のための疫学調査・情報基盤整備を含む総合的な教育訓練教材が開発された。本研究が取り上げた多くの事項は、自治体・保健所のみならず、広く社会での危機管理・対処に資する議論、研究、教育に資するものであると期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200840003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 保健所職員等の健康危機管理能力の向上を目的とした教育訓練教材の作成を行った。これらにおいては、健康危機管理の基本的な考え方を示すと共に、危機管理におけるコミュニケーション研究、法学研究、疫学・医療情報学の現時点での到達点を示すものであり、学術雑誌・書籍にて公開された研究成果(32本の論文、7回の学術発表)は、今後のこれら分野の発展に大きく寄与するものと期待される。また、日本災害医学会を始めとした学会においては、健康危機管理を主題とした複数のシンポジウムに参画した。
臨床的観点からの成果
 健康危機管理を担う保健所等の職員の資質向上を目指した体系的研修教育プログラムを作成した。特に、原因が不明な段階からの危機対応、また新型インフルエンザ対策の各フェーズを題材とした机上訓練シナリオ、自治体の多部門間連携、リスクコミュニケーションには重点を置いた。また、危機管理に際しての人権保障の考え方と制度、法的根拠についての解説を作成した。これらは、従来、未整理の点が多く、危機対応に従事する現場においても、理解の不足が危惧されていた諸点である。本研究の成果は、大きな社会的意義を有するものである。
ガイドライン等の開発
 本研究は多数の自治体(沖縄件、那覇市、鹿児島県、鹿児島市、福岡県、大分県、佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県、滋賀県、北海道、宮城県、仙台市、また陸上自衛隊、厚生労働省東北厚生局、仙台検疫所、在沖米軍など)との共同作業で行われ、その成果は、これら以外の多くの自治体の危機対応計画、また訓練(および訓練教材作成)に寄与した。また、インフルエンザの予防的接種を含む治験的薬剤使用、感染症危機対応に関する人権保障審議において、研究成果を基に審議がもたれた(例、参議院研究会.2007年12月24日).
その他行政的観点からの成果
 本研究においては、健康危機管理を担う保健所等の職員の資質向上を目指した体系的研修教育プログラムを作成した。新型インフルエンザへの対応を始めとして、行政の健康危機管理、またその立案・評価に必須の知識を提供するものである。これら教材には、基本的な考え方や知識と共に、常に最新の動向を追った知見や方策の知悉という両側面を重視した。国際的な視点に立ち、日本の現状を批判的に評価しつつ将来の課題を明らかにしたことで、今後の危機管理に大きく資すものと考えられる。
その他のインパクト
 本研究は、直接には、自治体・保健所等の健康危機管理担当者の教育を大目的としたが、研究成果は、危機管理の重要項目についての基礎と応用を十分解説し、具体的例示を行っている。研究成果としての出版印刷物として、論文・書籍に加えて、一般市民の啓発教材も作成された。また、危機管理における人権に関する研究会・シンポジウムにも参画し、自治体職員、医療関係者、法曹関係者を始めとして、多岐にわたる人々の問題意識の醸成に寄与したものである。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
27件
上梓された書籍6冊を含む。
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
シンポジウム2件を含む。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
16件
健康危機対応ガイドラインの作成、訓練・演習での実地使用を含む。
その他成果(普及・啓発活動)
4件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
佐藤元、箱崎幸也、田中良明、他
リスクコミュニケーションの理論と応用:健康危機管理への応用と課題
安全医学 , 4 (1) , 36-47  (2007)
原著論文2
冨尾淳、佐藤元
SARSの空気感染とは:航空機感染の教訓
プレホスピタル・ケア , 20 (3) , 9-15  (2007)
原著論文3
光石忠敬
人間の尊厳と人権の関係:人間の尊厳は学問・研究の自由、幸福追求権、自己決定権など対立する価値との比較衡量を許すか
臨床評価 , 34 (1) , 93-101  (2007)
原著論文4
光石忠敬
CIOMS生物医学研究指針:人を対象とする生物医学研究の国際的倫理指針
臨床評価 , 34 (1) , 7-74  (2007)
原著論文5
光石忠敬
研究対象者保護法要綱07年試案:生命倫理法制上最も優先されるべき基礎法として(第2報
臨床評価 , 34 (3) , 595-611  (2007)
原著論文6
箱崎幸也
自然災害
防衛医学 , 23 (1) , 10-25  (2006)
原著論文7
佐藤元
新型インフルエンザ等の対応に関する健康危機管理とその実際
産業医学プラザ , 16 (2) , 6-12  (2008)
原著論文8
増田和貴、佐藤元、田中良明、他
大島管内で発生した黄色ブドウ球菌感染事例
へき地・離島救急医療研究会誌 , 8 (1) , 61-66  (2008)
原著論文9
箱崎幸也、三村敬司、高橋亮太、他
新型インフルエンザ対策におけるリスク・コミュニケーション
呼吸 , 27 (7) , 713-718  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-11-24
更新日
-