ナノマテリアルの遺伝毒性及び発がん性に関する研究

文献情報

文献番号
200839021A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの遺伝毒性及び発がん性に関する研究
課題番号
H20-化学・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
戸塚 ゆ加里(国立がんセンター研究所 がん予防基礎研究プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 増田 修一(静岡県立大学 食品栄養科学部)
  • 渡邉 昌俊(横浜国立大学大学院工学研究院医工学)
  • 市瀬 孝道(大分県立看護科学大学)
  • 葛西 宏(産業医科大学 産業生態科学研究所職業性腫瘍学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
39,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化粧品や商業用品等に頻繁に用いられている種々のナノマテリアル(フラーレン、カオリン、カーボンブラック、酸化チタン、マグネタイト等)および将来的に商業用品等への応用が期待されるナノマテリアル(カーボンナノチューブ)の遺伝毒性や発がん性についてin vitro及びin vivo実験系を用いて検討した。
(149)

研究方法
In vitro実験として、前立腺正常及びがん細胞株に各種ナノマテリアルを曝露させ、生存細胞数、形態的および遺伝子発現の変化、DNAの酸化損傷について検討した。In vivo試験として、野生型およびトランスジェニックマウスに各種ナノマテリアルを気管内投与し、誘発されるDNA損傷性および突然変異原性の解析を行った。また、これらナノマテリアルによって誘発された変異スペクトルについても解析した。更に、マウス気道への繰り返し投与による肺発がんへの影響について検討している。(226)
結果と考察
培養細胞を用いた試験においては、酸化チタン,フラーレン、カーボンブラック曝露では,前立腺細胞の増殖能には影響を与えなかったが、hOGG1遺伝子発現の変化が正常細胞とがん細胞の間で差が認められた。また、マグネタイトおよび酸化チタンで処理した培養細胞において、添加量に依存して細胞DNA中の酸化傷害である8-OH-dG の増加がみられた。ICRマウスに青石綿、カーボンナノチューブ、フラーレンを気管内投与し、肺細胞におけるDNA損傷性をコメットアッセイで検定したところ、いずれのナノマテリアルも用量依存的に有意なDNA損傷性を示した。カーボンブラック、フラーレン及びカオリンの遺伝毒性を、トランスジェニックマウスを用いて検討した結果、これらナノマテリアルの投与により、肺における変異頻度がコントロールと比較して上昇することがわかった。変異スペクトルを解析した結果、全てのナノマテリアル投与群でG:C→C:Gがコントロール群と比べて増加していた。更に、ナノ素材の発がん性を明らかにする目的でカオリン、フラーレン、カーボンブラック粒子を繰り返し気管内投与して肺の腫瘍発生率について現在検討している。(529)
結論
商業用品等に用いられている種々のナノマテリアルがin vitro及びin vivo実験系において遺伝毒性を示す事が示唆された。(63)

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-