男児外陰部異常症および生殖機能障害と化学物質:個体感受性と暴露量に関するゲノム疫学研究

文献情報

文献番号
200839018A
報告書区分
総括
研究課題名
男児外陰部異常症および生殖機能障害と化学物質:個体感受性と暴露量に関するゲノム疫学研究
課題番号
H20-化学・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 勤(国立成育医療センター研究所 小児思春期発育研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 大迫誠一郎(東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター、)
  • 曽根秀子(独立行政法人国立環境研究所 環境リスク研究センター)
  • 安彦行人(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 米元純三(独立行政法人国立環境研究所 環境リスク研究センター)
  • 洲鎌盛一(国立成育医療センター 総合診療部)
  • 小島祥敬(名古屋市立大学大学院医学研究科 腎・泌尿器科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
34,254,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、男児外陰部異常症および生殖機能障害と化学物質の関連性を個体感受性と暴露量の両者の観点から解明することである。そして、環境リスク評価開発することである。
研究方法
遺伝的感受性は、エストロゲン受容体遺伝子、男性ホルモン産生経路の遺伝子、ダイオキシン関連遺伝子を主として、関連解析をおこなった。また、環境化学物質の暴露とメチル化異常の関連について、解析した。暴露量については、分析のための準備を行った。また、成育コホートとの連携を進めた。
結果と考察
エストロゲン受容体遺伝子と遺伝的感受性:われわれは、エストロゲン受容体αをコードするESR1遺伝子に約35 kbのハプロタイプブロックが存在し、AGATAという特定ハプロタイプのホモ接合体が顕著な外陰部異常発症感受性(オッズ比:尿道下裂13.75、停留精巣9.0)を有することを世界で初めて見出した。さらに、エストロゲン受容体αをコードするESR1の特定ハプロタイプが、イタリア人小児外陰部異常に関連すること、2,2,44 bpの微小欠失と絶対連鎖不平衡することを見いだした。さらに、精子形成障害が、ESR1ではなく、エストロゲン受容体βをコードするESR2の特定ハプロタイプと有意に関連することを見いだした。
 
男性ホルモン産生経路の遺伝子、ダイオキシン関連遺伝子と遺伝的感受性:停留精巣、尿道下裂及びマイクロペニス疾患群と正常群の間で優位な関連性の差が、ダイオキシン関連遺伝子であるARNT2のrs12148133と、男性ホルモン産生関連遺伝子であるCYP17A1のrs743572に認められた。

環境化学物質の暴露とメチル化異常の関連:尿道下裂患者の外陰部皮膚組織が入手しえた5検体において、SRD5A2の低メチル化が見出された。

暴露量の測定:プロトコルの確認と、臍帯で種々の環境化学物質を測定した。

成育コホートとの連携:成育出生コホートでの前向き研究において参加者1565人中32例の泌尿生殖器系の異常を認めた。そのうち男児外陰部異常として診断された児は尿道狭窄6例、停留精巣6例、尿道下裂 2例、両側遊走精巣2例、陰嚢水腫1例であった。
結論
当該年度においては、外陰部形成障害あるいは精子形成障害とエストロゲン受容体、男性ホルモン産生経路関連遺伝子、ダイオキシン関連遺伝子との関連性の同定、外陰部異常症とメチル化異常、暴露量の測定の準備と、大きな進展が見られた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
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