化学物質の子どもへの健康影響に関するエピジェネティクス評価法の開発

文献情報

文献番号
200839016A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の子どもへの健康影響に関するエピジェネティクス評価法の開発
課題番号
H20-化学・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
牧野 恒久((社)有隣厚生会 東部病院)
研究分担者(所属機関)
  • 中澤 裕之(星薬科大学薬品分析化学教室)
  • 塩田 邦郎(東京大学大学院農学生命科学研究科細胞化学教室)
  • 杉野 法広(山口大学医学部産婦人科教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
26,477,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は次代の社会の担い手である子どもを取りまく環境中のどのような化学物質が健康影響を及ぼすか、どの程度の生体暴露量が健康障害に結びつくかなどを、新しいエピジェネテイクスの手法を用いて解明することを目的とした。本研究の特色は、子どもの健康障害が懸念される多数の化学物質の中から、いくつかの絞り込まれた化学物質の生体暴露量測定法の開発、信頼しうる暴露量の入手、その暴露量の範囲内での健康評価法の開発をワンセットして研究を遂行する点にある。
研究方法
 本研究では平成19年までに牧野を研究代表者として行われた厚労省科学研究において、子どもの健康障害が懸念される以下の化学物質を研究対象とした。すなわち、樹脂の難燃材として多用され母乳汚染が懸念されるポリ臭素化ジフェニルエーテル、樹脂の可塑剤であるフタル酸エステル類、ピレスロイド系および有機リン系農薬、撥水剤として多用される有機フッ素系化合物、喫煙に関するニコチン、コチニン、24種の重金属類などである。研究の第一年度は、杉野班による周産期の生体試料とくに母体血、臍帯血、母体尿、羊水、胎脂などの採取法の検討と、中澤班による感度・特異性に優れた測定法とくに質量分析法の開発を始めた。分析班の暴露情報に基づいて塩田班ではまずマウスES細胞を用いて、生体暴露量の範囲内でこれら化学物質のDNAメチル化プロファイル変化を解析した。
結果と考察
 杉野班ではヒト周産期試料を採取するに当たり、夾雑物質が含まれない試料採取法を確立した。
中澤班ではヒト血清中のニコチン・コチニン同時分析法、各種農薬の体内代謝産物の質量分析法、MEHPやDEHPなどのフタル酸エステルの分析法、毛髪・羊水中の多元素一斉分析法などを開発した。塩田班では化学物質のスクリーニングとしてマウスES細胞のヘテロクロマチン変化からエピ変異原性を捉える方法を確立した。さらにゲノムワイドDNAメチル化解析から、有機リン系農薬の代謝産物DEP,生体必須微量元素セレンなどが暴露量の範囲内でDNAメチル化プロファイルを変化させる遺伝子を同定した。同時にマウスiPS細胞のDNAメチル化プロファイルを解析したところマウスES細胞のDNAメチル化状況と類似していることを見いだした。
結論
 第一年度の研究結果から導かれる結論として、化学物質あるいはその代謝産物の一部が生体暴露量の範囲内で、DNAメチル化プロファイルを変化させることが証拠付けられた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
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