ナノマテリアルの経皮毒性に関する評価手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200839014A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの経皮毒性に関する評価手法の開発に関する研究
課題番号
H19-化学・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
津田 洋幸(公立大学法人 名古屋市立大学大学院 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
  • 宮澤 眞紀(昭和薬科大学 薬剤学室 薬剤学)
  • 藤井 まき子(神奈川県衛生研究所 理科学部薬事毒性クループ、毒性病理学)
  • 菊地 克子(東北大学学大学病院 皮膚科学講座 皮膚科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
65,862,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノ粒子は化粧品等に用いられているが、皮膚からの吸収の有無や皮膚以外の臓器に移動する可能性等の評価法が確立されていない。本研究では、最も使用の多いナノサイズ二酸化チタニウム(nTD)と酸化亜鉛(nZO)を用い、正常または障害皮膚における透過性、皮膚機能と免疫能への影響、発がんへの関与を明らかにし、それらの評価法を開発することを目的とした。

研究方法
1)皮膚発がん高感受性トランスジェニックラットを用いて、nTDの皮膚発がんプロモーション作用を検討し、人工皮膚を用いて透過性を検討した。2)ラットの正常および障害皮膚にnTDおよびnZOを塗布し、曝露局所、他臓器への移動についてICP-MSを用いて定量測定した。3)角質除去したマウスの耳介皮膚に、nTDとハプテン(DNCB)を同時に塗布し、耳介リンパ節の重量と細胞増殖を測定した。
4)ミニブタ摘出皮膚を用い、脱毛皮膚および損傷皮膚およびにおけるnTDの透過性を検索した。5)ヘアレスマウスの正常および障害皮膚にnTDの反復塗布を行い、角層水分量、角層水分バリア能を計測した。
結果と考察
1)ラット発がん二段階モデルを用いたnTDを塗布した皮膚発がんのプロモーション作用を検索したが、正常皮膚に塗布した実験ではnTDが表皮を通過しなかったため、nTDによる修飾作用は明確には観察できなかった。2)nTDは調製中または塗布時に容易にナノ粒子より大きいミクロンサイズの凝集塊を作り、健常皮膚を透過しないことが分かった。nZOはイオン化して皮膚組織を通過した可能性が考えられた。3)マウス耳介角質除去皮膚にシリコン分散nTDとDNCBを塗布した場合に耳下リンパ節の感作性が増強された。4)良好な分散状態では障害、乾燥および脱毛皮膚から毛根に侵入するが、周囲組織への移行は極めて少ないことが分かった。5)nTDは9日間連続塗布でも角層を通過しなかった。角層を剥離損傷した皮膚においても、1回のみでは経皮吸収は殆どなかった。
結論
nTDは調整段階で凝集塊をつくるため皮膚組織を通過する可能性は極めて低い。良好な分散状態(被覆+シリコンオイル分散等)では障害、乾燥および脱毛皮膚から毛根に侵入するが、毛包や周囲組織への移行は極めて少ないことが分かった。今後、可能な限り良好な分散状態における有害作用について検討し、標準的なプロトコールを構築する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-