ナノマテリアルの経皮毒性に関するトキシコキネティクスおよびトキシコプロテオミクス等の融合による有害性評価法・リスク予測法の開発

文献情報

文献番号
200839013A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの経皮毒性に関するトキシコキネティクスおよびトキシコプロテオミクス等の融合による有害性評価法・リスク予測法の開発
課題番号
H19-化学・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
堤 康央(大阪大学 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中川 晋作(大阪大学 薬学研究科)
  • 八木 清仁(大阪大学 薬学研究科)
  • 角田 慎一((独)医薬基盤研究所)
  • 今澤 孝喜((独)医薬基盤研究所)
  • 吉岡 靖雄(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
65,862,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦のナノマテリアル(NM)産業は世界トップレベルの技術力を誇っており、21世紀の日本産業/経済の発展を牽引するものと期待されている。特に我が国では、ナノシリカやナノ酸化チタン、ナノ白金コロイドなどを含有した様々な食品・医薬品・化粧品が既に市場に出回っており、産業界の世界的競争力の向上や雇用の創出等に大きく貢献している。しかし一方で近年、欧米各国を中心として、NM特有の物性に起因した革新的機能が、二面性を呈してしまい、予期しにくい毒性(NanoTox)を発現してしまうことが懸念されている。以上の観点から本研究では、NMの物性-動態-安全性との連関を解析し、科学的根拠に基づいた安全性情報を集積すると共に、基盤となる安全性評価法を開発することを目指す。本研究の成果は、NMの物性から動態と安全性を予測できる方法論の開発やNMのリスクマネジメントを可能とするのみならず、国民の健康(安全)確保、そして安心の確保に貢献するものである。
研究方法
本研究では、化粧品NMとして汎用されている直径が70、300、1000 nmのナノシリカ(それぞれnSP70、nSP300、nSP1000)を用いた。これらのナノシリカをマウス尾静脈内より投与した際の生存率評価・血液生化学検査を指標に急性毒性を評価した。また、これらのマウスから各主要臓器を回収し、電子顕微鏡を用いてナノシリカの局在を解析した。
結果と考察
nSP300やnSP1000投与マウスでは全く有害事象が観察されなかったのに対して、nSP70投与マウスにおいてのみ急性致死毒性が認められた。また、nSP70マウスにおいては顕著な炎症反応の亢進と肝障害の所見を認めた。また、ナノシリカ投与マウスの肝臓におけるナノシリカの局在を観察したところ、nSP300ならびにnSP1000は肝クッパー細胞(KC)に蓄積していたのに対して、nSP70はKCのみならず肝実質細胞にまで到達していた。以上の結果から、ナノシリカの急性毒性には粒子径減少に伴う体内動態変化が関与している可能性が示唆された。
結論
NMの物性-動態-安全性との連関解析は、安全なNMの設計指針の策定や適切な行政規制を実施するにあたって必須の検討項目であることが示された。これらの検討によって得られる情報はNMを安全に使用するための指針の抽出や安全性予測法を開発する上で必要不可欠であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
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