メタボローム解析およびバイオマーカーを用いた化学物質の有害性評価手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200839010A
報告書区分
総括
研究課題名
メタボローム解析およびバイオマーカーを用いた化学物質の有害性評価手法の開発に関する研究
課題番号
H19-化学・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
曽我 朋義(慶應義塾大学 環境情報学部 および 先端生命科学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
37,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、低分子バイオマーカーを用いて、化学物質およびその代謝物の毒性を評価するもので世界でも初めての試みである。
平成20年度は、ラットでもこの方法論が適用できるか検討した。さらに、親水性、脂溶性の両方の化学物質の親電子毒性を測定する方法を開発した。具体的には、肝臓がん細胞であるHepG2を培養後、親水性、脂溶性の化学物質を投与し、γ-Gluペプチドバイオマーカーの増減を測定することにより、投与物質が親電子毒性を持つか予測するシステムを開発した。
平成21年度には、バイオマーカーを用いて腎や肝臓に毒性を示す化学物質、金属、有機溶剤等を探索する評価システムを開発する。
研究方法
1)培養細胞とγ-Gluペプチドバイオマーカーを用いた化学物質の親電子毒性評価法の開発。
2)マウスとγ-Gluペプチドバイオマーカーを用いた親水性化学物質の親電子毒性評価法の確立。
3)γ-Gluペプチドバイオマーカーによる脂溶性化学物質の親電子毒性測定評価システムの確立。
結果と考察
本研究では、マウスに酸化活性毒性を示す化学物質(親電子物質)を投与後、肝臓内の代謝物質を網羅的に測定し、肝毒性を示すバイオマーカーの探索を行った。その結果、親電子物質(酸化活性毒性)を解毒する際に肝臓のグルタチオンが枯渇したことを示す14個のγ-Glu-Xジペプチド、γ-Glu-X-Glyトリペプチド類を発見した。これらのγ-Gluペプチド類は、化学物質の投与によって生体内に生じた親電子物質を抱合・解毒するためにグルタチオンが消費された際にγ-グルタミルシステインシンテターゼが活性化され、各種のアミノ酸を基質として生合成されていることも解明した。腹腔内投与法では疎水性化学物質の投与が困難だったため、経口投与法を用いた親水性および疎水性化学物質の投与法も確立した。マウスに各種の化学物質を経口投与し、γ-Glu-Xペプチド類バイオマーカーの増減を測定することにより、マウスに投与した化学物質あるいは化学物質が生体で代謝されて生じた物質が親電子物質であることを示すシステムを開発した。
結論
本研究で開発した肝臓内のグルタチオンが枯渇したことを示すγ-Glu-Xペプチド類バイオマーカーを用いた親電子物質の探索法は、化学物質のみならず生体内で生じた代謝物が親電子物質であることを探索する有望な方法論である。今後は、原因は不明だが肝毒性を示す化学物質も数多くマウスに投与し、本法によってそれらの化学物質あるいはその代謝物質が親電子物質であるか検討し、その結果を公表する予定である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-