家庭用化学製品のリスク管理におけるヒトデータの利用に関する研究

文献情報

文献番号
200839008A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用化学製品のリスク管理におけるヒトデータの利用に関する研究
課題番号
H18-化学・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 敏治(財団法人 日本中毒情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 容子(財団法人 日本中毒情報センター)
  • 嶋津 岳士(近畿大学医学部)
  • 大橋 教良(財団法人 日本中毒情報センター)
  • 黒木 由美子(財団法人 日本中毒情報センター)
  • 奥村 徹(佐賀大学医学部 危機管理医学講座)
  • 白川 洋一(社会医療法人財団大樹会 総合病院回生病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトデータを利用して家庭用化学製品等の健康被害事故のリスク管理の基盤となる情報を得る。

研究方法
日本中毒情報センター(JPIC)受信事例調査、医療機関調査、高齢者施設調査、海外の中毒関連機関調査のデータを引き続き利用して急性中毒事故の発生と診療の実態について分析を行なった。JPICから受信状況の速報を発信できる体制を構築すると共に学会で家庭用化学製品による中毒事故の対処と防止に必要な体制を議論した。また、調査A『家庭用化学製品による急性中毒に関する全症例調査』、血中濃度分析を行う調査B『予後評価の必要な物質による急性中毒に関する重症例調査』に該当する症例を225の研究協力施設から前方視的に収集して、健康被害の危険度や血中濃度と症状、転帰との関連を検討した。
結果と考察
家庭用化学製品による不慮の中毒事故は、高齢者では認知症による事故が35%あり、90歳以上は70 歳代の8 倍と高齢になるほど多く、入院加療率は31%、死亡率は1.2%で小児や成人より高いこと、成人と比べ特に多い製品があった。成人の事故は製品により異なるが概ね30歳代と60歳代が多かった。中毒患者の36%は救急車を利用して受診しており1981年の2.2倍であった。診療は病院が主体となっており、特に高度救急医療施設に集中していた。JPICから速報を発信する体制を構築して 10ヵ月間に12社に225件を発信した。所轄官庁への報告義務のある重大事故もあり、本体制の有用性が明らかになった。関連学会のパネルディスカッションでは公的機関であるJPICや中毒学会等が症例を収集して事故情報を発信する体制作りが必要であることが指摘された。
調査Aでは364例を登録し、受診の必要性に関して電話で相談を受けた際に利用するトリアージアルゴリズム(防虫剤、洗剤類等10製品群)を作成した。調査Bでは50例(アセトアミノフェン、サリチル酸、三環系抗うつ薬、有機リン剤、グリホサート、エチレングリコール)を解析し、総じて血中濃度は重症度のよい指標となったが判別ラインとして利用するには問題点も多いことが判明した。
結論
市民には年齢層や性別に応じた事故防止と救急車を含む医療資源の適切な利用の啓発が必要であり、不要な受診を減らすトリアージアルゴリズムの効果が期待できる。化学製品のリスク管理にはヒトデータの収集が必須でありJPICや学会等の公的立場での体制整備が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200839008B
報告書区分
総合
研究課題名
家庭用化学製品のリスク管理におけるヒトデータの利用に関する研究
課題番号
H18-化学・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 敏治(財団法人 日本中毒情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 容子(財団法人 日本中毒情報センター)
  • 嶋津 岳士(近畿大学医学部)
  • 大橋 教良(財団法人 日本中毒情報センター)
  • 黒木 由美子(財団法人 日本中毒情報センター)
  • 奥村 徹(佐賀大学医学部 危機管理医学講座)
  • 白川 洋一(社会医療法人財団大樹会 総合病院回生病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ヒトデータを利用して健康被害事故の発生予防と発生時の対応に資する基礎データを得て家庭用化学製品等のリスク管理の基盤とする。
研究方法
 日本中毒情報センター(JPIC)の10年間の受信事例357,992件、医療機関(大阪府と茨城県の全医療機関8,960施設)受診事例と救急車搬送記録、全国の高齢者施設(2,740施設)等、海外関連機関、家庭用品等の企業174社を対象に中毒事故の発生件数と発生要因を調査する。また、急性中毒症例を前方視的に収集する体制を構築して調査A『家庭用化学製品による急性中毒に関する全症例調査』と調査B『予後評価の必要な物質による急性中毒に関する重症例調査』の対象症例を収集する。調査Aでは重点収集製品23製品群による中毒症例データの重症度を評価する。調査Bでは対象12物質群の症例50症例の血中濃度を分析して症状、転帰との関連を検討する。
結果と考察
 家庭用化学製品等による健康被害事故について年齢層別に原因となった製品と発生状況を明らかにした。医療機関を受診する中毒患者は5.02人/人口100万人/日と推定され、診療は病院が主体となっており、救急車を利用して受診する患者は36%で1981年の2.2倍であった。225の研究協力施設から前方視的に急性中毒症例を収集するシステムを構築した。調査Aでは364例を登録し、受診の必要性に関して電話で相談を受けた際に利用するトリアージアルゴリズムを防虫剤、洗剤類等23製品群について作成した。調査Bでは50例(アセトアミノフェン、サリチル酸、三環系抗うつ薬、有機リン剤、グリホサート、エチレングリコール)の解析から、血中濃度は重症度のよい指標となるが判別ラインとして利用するには問題点も多いことが判明した。調査で得た知見に基づき、家庭用化学製品等による健康被害事故の発生防止を小児、成人、高齢者に分けて啓発する動画資料等を作成し、全国保健所等に配布した。また、企業が独自に把握する事故は少ないことから、企業に自社製品の事故情報をJPICから翌営業日までに提供する速報発信体制を構築してサービスを開始した。
結論
 市民には年齢層や性別に応じた事故防止と救急車を含む医療資源の適切な利用の啓発が必要であり、不要な受診を減らすトリアージアルゴリズムの効果が期待できる。化学製品のリスク管理にはヒトデータの収集が必須でありJPICや学会等の公的立場での体制整備が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200839008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 膨大な実態調査によるデータ及び健康被害危険度を検討して、家庭用化学製品等による健康被害事故の発生状況とその防止策を小児、成人、高齢者の事故に分けて啓発する市民向けのパンフレットと動画資料(DVD)、および事故発生時に医療機関受診の必要性に関して電話で相談を受けた際に利用するトリアージアルゴリズムを作成した。
臨床的観点からの成果
アセトアミノフェン、サリチル酸、三環系抗うつ薬、有機リン、グリホサートの血中濃度と中毒症状の重症度および転帰との関連を解析して、血中濃度は重症度のよい指標となるが、判別ラインという形で利用するには問題点も多いことを明らかにした。また、製品の配合成分である界面活性剤が症状の重症化に関与する可能性が示唆され、商品情報の必要性を確認した。構築したヒト中毒症例収集システムを継続して運用することにより、エビデンスが高く、国際比較が可能なヒト中毒症例を収集でき、化学物質のリスク評価と中毒診療に活用できる。
ガイドライン等の開発
 乾燥剤、義歯洗浄剤、漂白剤、防虫剤、殺虫剤など23製品群について健康被害の危険度に影響する要因(摂取経路、製品の形態、患者の年齢や状態等)を検討して、これらを問診項目として急性中毒症例の医療機関への受診推奨度を判定する「トリアージアルゴリズム」を作成した。
その他行政的観点からの成果
 市民には年齢層や性別に応じた事故防止と救急車を含む医療資源の適切な利用の啓発が必要であることを示唆し、不要な受診を減らすトリアージアルゴリズムの効果が期待できる。本研究により日本中毒情報センターでは化学物質による健康被害事故の発生状況を速報として提供することが可能となった。これにより医療機関、行政、企業等との連携体制が強化され、化学物質による健康被害事故に迅速に対応できるようになる。
その他のインパクト
 健康被害事故の発生防止について小児、成人、高齢者に分けて啓発する動画資料を作成して全国保健所等に配布した。動画資料等を日本中毒情報センターのホームページで配信する、教材として講習会を開催するなど、種々の方法により市民向けの中毒事故に関する啓発活動の実施が可能となった。また、関連学会でパネルディスカッションを開催し、医師、薬剤師、分析者、企業、中毒情報センターのそれぞれの立場から現状と課題を提示し、事故防止のためのより良い連携について議論し、必要な体制を明確化した。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
第23回日本中毒学会東日本地方会パネルディスカッション「消費者の中毒事故の防止と対応のために-より良い連携をもとめて-」、DVD「みんなで防ごう!身近な中毒事故」、23製品群のトリアージアルゴリズム

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-