AMRに関するアジア太平洋ワンヘルス・イニシアチブ(ASPIRE)の実行に関する研究

文献情報

文献番号
202119040A
報告書区分
総括
研究課題名
AMRに関するアジア太平洋ワンヘルス・イニシアチブ(ASPIRE)の実行に関する研究
課題番号
21HA2009
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
菅井 基行(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 山岸 拓也(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター第四室)
  • 大曲 貴夫(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
  • 小松澤 均(広島大学 医系科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
121,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.サーベイランスシステムと検査機関ネットワーク
アジア各国のサーベイランスシステムの構築を支援するために、WHO/OIE/FAOが推進する三輪車サーベイランス(ESBL大腸菌に関するヒト、動物、環境における調査)の実施を希望する国と協力し、サーベイランス体制構築のための技術支援を行うとともに、各国で得られたサーベイランスデータを効率的に集計してレポートを作成し、WHOの求める集計データを作成可能な環境を構築することを目的とする。
2.医療マネジメント
薬剤耐性医療関連感染事例のリスク評価ガイダンスのためのツールを作成し、途上国の医療従事者や公衆衛生担当者を対象とした研修、フォローアップを実施することで、途上国における薬剤耐性医療関連感染事例への対応能力支援体制を構築することを目的とする。
3.抗微生物剤のアクセスと規制
欧米及びアジア諸国の抗菌薬のアクセス・規制に関するリスク評価、本邦の各種手引き等の改定・多言語化、地域の医療に応じた抗菌薬適正使用プログラムの作成を行い、多角的な観点からアジア各国の実情にあわせた抗菌薬適正使用の推進に関する体制を構築することを目的とする。
研究方法
-
結果と考察
・菅井基行
(1) 各国で得られたサーベイランスデータを効率的に集計してレポートを作成し、WHOの求める集計データを作成可能なASIARS-Netシステムに関し、レポートの内容をユーザーがカスタマイズできる機能と、同システムに取り込まれた自国の全データをCSVファイルとして出力する機能の設計と調達準備を進めた。また、同システムのトップページを作成する準備を進めた。
(2) 三輪車プロジェクトのプロトコルを使用したESBL保有大腸菌サーベイランスを、主にアジア各国で進めるための準備を行った。これまでにベトナム、インドネシア、マレーシア、ブルネイ、フィジー、フィリピン、エジプトに参加を呼びかけた結果、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、エジプトは参加の意思を表明したため、MOA, MOCなど必要書類作成の準備を進めた。ベトナムについては、受領したヒト血液由来大腸菌の解析の準備を進めた。インドネシアではアイルランガ大とMOAを結び、サンプリングを開始した。マレーシアについては Institute of Medical ResearchとMOCを結び、サンプリング、収集株の解析に関する技術支援を行なった。
・山岸拓也
(1) 11月29日ー30日にアジア太平洋地域6カ国・地域の医療従事者や行政担当者13名(一部オンライン)と国内の感染症対策専門家3名を招いた2日間のワークショップを開催し、薬剤耐性菌アウトブレイク対応のガイダンスに関する意見を集約した。
(2) 薬剤耐性菌アウトブレイク事例への関係者の対応に関しリスク評価のガイダンス案を作成し、WHO西太平洋地域事務局が作成したアウトブレイク対応ガイダンスも使用したAMRアウトブレイク対応の指導者トレーニングをWPROと共同でカンボジアにおいて開催し、講師を務めた。
・大曲貴夫
(1) 欧米およびアジア諸国の抗菌薬のアクセス規制について文献調査のまとめを行った。
(2) 抗微生物薬適正使用の手引き第二版およびダイジェスト版の英訳を作成した。さらに、抗微生物薬適正使用の手引き第二版はベドナム語訳を作成した。
(3) 抗菌薬適正使用プログラムの推進について協力可能な国を探るための情報収集を行った。ブータン保健省とAMR対策の重要性について認識を共有し、協力体制を確立していくことで合意した。またベトナム保健省とも協力体制を構築する方法を模索している。
・小松澤均
(1) アジア諸国とのサーベイランスシステムの構築のため、研究プロジェクトに関する大学間協定の締結作業を進め、オーストラリアのメルボルン大学、インドネシアのエアランガ大学、マレーシアのClinical Research Malaysiaと締結を終了した。
(2) 在宅医療利用者の薬剤耐性菌サーベイランスを行い、利用者101名からの検討を終了した。101名の在宅医療利用者のうち、第3世代セファロスポリン耐性グラム陰性耐性菌は20名から33株分離した。ESBL遺伝子保有株は、blaCTX-M1 6株、blaCTX-M2 2株、blaCTX-M9 1株、blaTEM 6株、blaSHV 2株を認めた。MRSAについては、10名の分離を認めた。
結論
ASPIREに基づき「サーベイランスシステムと検査機関ネットワーク」、「医療マネジメント」、「抗微生物剤のアクセスと規制」について日本のリーダーシップの下にASIARS-Netシステムの改良、アジアにおける三輪車サーベイランスの準備、国際ワークショップで合意を得た上で薬剤耐性菌アウトブレイク対応ガイダンス作成、それに基づくWPROとの合同研修を実施した。

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202119040C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アジア太平洋領域における薬剤耐性(AMR)問題に協働して立ち向かい、「AMRに関するアジア−太平洋ワンヘルス・イニシアチブ(ASPIRE)」に基づき、海外版JANISサーベイランスシステム(ASIARS-Net)のシステム改良、アジア圏での利用に関する啓蒙活動、三輪車サーベイランスの技術支援、薬剤耐性菌アウトブレイク対応国際ワークショップ、WHO WPROとの合同研修、抗微生物薬適正使用の手引きの英・ベトナム語訳の作成、欧米およびアジア諸国の抗菌薬のアクセス規制について文献調査を実施した。
臨床的観点からの成果
特記事項なし
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kutsuno S, Hayashi I, Yu L, et al
Non-deacetylated poly-N-acetylglucosamine-hyperproducing Staphylococcus aureus undergoes immediate autoaggregation upon vortexing.
Front Microbiol. , 13 , 1101545-  (2023)
原著論文2
Yu L, Hisatsune J, Kutsuno S, Sugai M.
New Molecular Mechanism of Superbiofilm Elaboration in Staphylococcus aureus Clinical Strain.
Microbiol Spectr. , 18 (1) , e0280676-  (2023)
原著論文3
K. Kakimoto, S. Nishiki, Y. Kaga, et al
Effectiveness of patient and staff cohorting to reduce the risk of vancomycin-resistant Enterococcus (VRE) acquisition: A retrospective cohort study during a VRE outbreak in Japan.
J Hosp Infect. , 134 , 35-42  (2023)

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
202119040Z