感染症パンデミックに即応する臨床研究のための体制についての国際調査および我が国の将来の体制整備に向けた研究

文献情報

文献番号
202119038A
報告書区分
総括
研究課題名
感染症パンデミックに即応する臨床研究のための体制についての国際調査および我が国の将来の体制整備に向けた研究
課題番号
21HA2018
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
飯山 達雄(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 臨床研究センター インターナショナルトライアル部)
研究分担者(所属機関)
  • 柴田 大朗(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究支援センター 生物統計部)
  • 神代 和明(国立大学法人東北大学 大学院医学研究所)
  • 齋藤 浩輝(聖マリアンナ医科大学 医学部救急医学)
  • 市川 雅人(国立国際医療研究センター 臨床研究センターインターナショナルトライアル部)
  • 園田 美和(国立国際医療研究センター 臨床研究センター インターナショナルトライアル部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
29,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本事業では、COVID-19パンデミックに対する国内外の研究開発の動向を振り返り、パンデミックなど保健医療上の緊急事態に必要な医療プロダクトを迅速に開発するための臨床試験基盤を検討することを目的とする。臨床試験を含む開発プロセスの様々なステークホルダーの連携を考慮して、パンデミックに即時対応可能な基盤を平時から構築するために、想定シナリオ、研究デザイン、薬事戦略、政策、予算、人材育成、体制維持など多面的に検討する。
研究方法
 本事業は、パンデミックにおける国内外の実際の研究開発プロセスとタスクに関する調査と分析、課題の抽出と対策、平時からのpreparednessの提案に向け、以下のSub-Project(SP)を計画した。
SP1 医療関係者、COVID-19関連臨床試験の試験代表医師、ARO/CRO調査
SP2 国民パネルを通じた薬剤・ワクチン開発への臨床試験への認知度・意識調査
SP3 国内の規制当局、企業、公的研究支援機関等調査
SP4 海外の規制当局、企業、公的研究支援機関等調査
SP5  SP1-4の結果を踏まえた体制整備の検討
更にヒアリングを実施し、基盤のあり方を検討した。
結果と考察
 SP1~5を進める中で以下の様に項目を再構成し、データをまとめ分析した。

「COVID-19関連臨床試験の代表医師へのインタビュー調査」
 COVID-19の治療法開発に関わった本邦の臨床研究の代表医師(PI)に対する半構造化面接及びテーマ分析を行なった。その結果、「構造的な障壁」「それぞれが模索した最適解」「かなわなかったエビデンス創出」の3テーマが抽出された。これら制度・システムの構造的な障壁を取り除く必要がある。

「感染症指定医療機関への意識調査」
 全国の感染症指定医療機関に対し、COVID-19パンデミックにおける臨床研究の経験、将来の有事下の臨床研究への参加意向、臨床研究体制構築について調査した。有事下では診療業務が優先されることや、臨床研究に割く各種リソースの不足が明らかになった。感染症指定医療機関が将来有事下で臨床研究へ参加するために、人的・金銭的リソース支援、臨床研究に関わる人材育成、ステークホルダー連携促進が必要である。

「ARO・CROへの質問紙調査」
 パンデミック下で必要な医薬品を迅速に開発するために、①臨床研究支援部門における臨床試験実施に関する阻害・促進要因、及び②臨床試験に携わる専門家の臨床研究コンピテンシーを調査した。パンデミック下の臨床研究支援の主な課題は「被験者確保・維持」、「試験サイト・試験実施病棟との協力」、「試験サイト準備」「試験の質の管理(モニタリングなど)」であった。臨床試験で確保できる症例数は感染症流行や治療・予防の普及状況に強く影響を受けるため、ネットワークによる効率的な症例数確保や、限られた症例数を想定した試験デザインが必要である。即座に試験対応ができるよう、関係者の研修や認定制度等でのコンピテンシー向上も必要である。

「国民パネル調査」
 匿名化国民ウェブパネルを通じてパンデミック下のワクチン・治療薬開発のための臨床試験の認知度及び参加意欲を調査した。臨床試験の参加理由としては、他に予防・治療の方法がなかったことや社会貢献につながること、不参加理由としては安全性の懸念が挙げられた。不参加とした中の一部は、医療側や政府からの説明内容によっては参加を検討すると回答した。臨床試験の認知度は高いが、参加意欲を高めるには効果的な情報発信が必要である。

「国内外ステークホルダー調査」
 日本、英国、米国におけるCOVID-19治療薬の臨床試験についてデスクレビューにて調査し、感染症領域の臨床試験のステークホルダーへのインタビューと合わせて課題と教訓を洗い出した。
結論
 将来のパンデミックを含む保健医療上の緊急事態下で迅速な研究開発に貢献する臨床試験基盤について以下の強化が必要と考えられた。
1 感染症分野の研究開発活動における司令塔組織の構築と機能整備
2 感染症分野の臨床試験に関わるステークホルダーとの平時からの連携促進
3 臨床試験デザインの進歩とそれを実行できる環境の整備
4 国際連携
5 人材確保とキャパシティビルディング
 恒常的な基盤組織による実務経験の積み上げや、ステークホルダー間で緊急時における臨床試験の方針や手順等の共有や標準化を図ることで、臨床試験の企画実施が効率化できる。有事の際に研究開発に関わる産学官医のステークホルダーがそれぞれの立場に応じて感染症と臨床試験に関する知識をcommon senseとして有することが求められる。パンデミックに対応する関係者においては、平時より想定シナリオに対する基本プロトコルの準備や緊急事態を意識した情報共有の仕組みづくり、トレーニングの機会などにも努めたい。

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202119038C

成果

専門的・学術的観点からの成果
先端的な臨床試験デザインを日本主導で実施するための体制提案・整備ロードマップ検討にあたり、(SP1)「COVID-19関連臨床試験の試験代表医師インタビュー調査」(SP2)「国民パネル調査」(SP3)「規制当局インタビュー」(SP4)「海外研究開発体制に関する調査」についてそれぞれ調査を開始するとともに、R4年5月末までに隔週計5回の会議を開催している。
臨床的観点からの成果
前項の調査分析を進めながら並行して、パンデミック下での必要な医療プロダクトの迅速な開発から臨床使用までのプロセス、実施に際しての公衆衛生、医療対応と研究開発活動との現場での調整などを検討している。
ガイドライン等の開発
現在未定
その他行政的観点からの成果
検討会議において、関係する行政官の方にも参加して頂き、本研究班の検討内容が実際の行政上の改善にも反映できるように、実務的な側面や関連施策について情報提供や意見交換の機会を持っている。
その他のインパクト
パンデミック下において迅速な研究開発を促進するため、研究開発プロセスのうち治験部分を中心に、トランスレーショナルリサーチ、他のエビデンス、公衆衛生や医療の対応などとの連携、調整も踏まえて情報分析、課題抽出、新たな提言につなげ、本邦の基盤の再整備に貢献したい。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
202119038Z