風しん第5期定期接種の対策期間延長における風しん予防接種促進に関する研究

文献情報

文献番号
202119034A
報告書区分
総括
研究課題名
風しん第5期定期接種の対策期間延長における風しん予防接種促進に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21HA2014
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
多屋 馨子(神奈川県衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 大竹 文雄(大阪大学大学院経済学研究科)
  • 堀 愛(筑波大学 医学医療系)
  • 森 嘉生(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 森野 紗衣子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
87,160,000円
研究者交替、所属機関変更
研究代表者多屋馨子の所属機関が、令和4年4月より国立感染症研究所感染症疫学センターから神奈川県衛生研究所に変更になりました。

研究報告書(概要版)

研究目的
昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生の男性を対象とした第5期風疹定期接種の実施率がCOVID-19の流行等で低迷し、2024年度末までの延長が承認された。第5期定期接種を促進し風疹対策に繋げることを目的とする。
研究方法
第5期風疹定期接種前検査として承認されている市販の迅速キット使用実現性について調査し、様々な職種を対象にアンケートを実施する。IgM抗体陽性時の対応を検討する。クーポン券送付と抗体検査実施率の関係を検討する。第5期定期接種世代への啓発にナッジを活用し、行動経済学的に有効なメッセージを発信する。行動の阻害要因を明らかにし、解決策を提示する。企業から従業員への検査受診勧奨の働きかけ、産業医から企業等での受診勧奨取組の具体例収集やアンケートを行い、取組企業の参考となる方法を提案する。
結果と考察
抗体検査結果に基づく予防接種アルゴリズム、第5期風疹定期接種対象者への説明用、啓発用資材、迅速キット運用マニュアルを作成した。遠心機保有医療機関は26.4%であった。迅速キット使用実施困難な理由として、医療機関の多忙、人員不足、煩雑等が挙げられた。IgG抗体陰性者に、当日中に結果を説明した割合は96%、MRワクチンの接種又は接種予約を行った割合は95%(当日接種59%、当日接種予約36%)であった。IgM抗体陽性者はいなかった。IgG抗体陰性者率が高く、抗体価既知の健常成人血清パネルを用いて検討した結果、HI抗体価16以上の検体で迅速キット陽性であったのは24.6%と低かった。令和4年度にクーポン券を再発行した市区町村は73%で、約半数が4月発行であった。クーポン券再発行割合と抗体検査受診割合は相関係数0.36で弱い正の相関があった。情報介入なしの抗体検査受診意思保持者は51.4%で、厚労省メッセージで8.9ポイント、認識修正リーフレット提示で12.4ポイント、動画説明で17.4ポイント上昇した。動画説明を強制的に見せることは効果が高く、クーポン券送付で抗体検査受検率は19.6ポイント、ワクチン接種率は5.6ポイント上昇した。2023年2月4日風疹の日イベントをライブ配信し、アーカイブ動画配信を実施したところ2023年4月22日時点で408回視聴された。2分30秒版と15秒版のコミカルな動画を作成しYoutube広告として流した結果、2023年2~3月の視聴回数は234万回に達した。行動経済学的視点から啓発資材を制作し自治体配布とHP公開を行った。健診での風疹抗体検査実施状況は企業によりばらつき、2022年は少なかった。実施阻害要因は、受診勧奨に法的根拠が乏しい、接種制度が複雑、企業や対象者に制度が周知されていないことが挙げられた。実施促進要因は、風疹を事業継続のリスクとしてとらえている、先天性風疹症候群を女性が就労する上での脅威ととらえていることが挙げられた。
自治体からのクーポン券送付、職場での啓発、受けやすい環境づくりが必要と考えられた。迅速キットは利便性が高いが、使用したロットは、第5期風疹定期接種基準を判定するには感度が不十分で、IgG抗体検出感度低下の原因究明が必要である。第5期風疹定期接種の啓発には、利他的メッセージと小児期に風疹ワクチンを受けているはずという誤解を解消する必要がある。テレビ、SNS、鉄道車両内などで動画を見せることは、抗体検査受診意欲向上効果がある。接種率上昇に繋がりにくかった理由として、COVID-19の感染拡大で、外来診療が逼迫し、抗体検査予約が取りにくい状況にあったことが考えられた。企業からは健診機関から職員の抗体検査を勧めても希望しない企業があること、個人情報保護の点から法定外項目である風疹抗体検査の実施は望ましくないと考える企業があること、他の性・年齢に配慮した公平性の観点で、対象者だけでなく全従業員に実施したいと考える事業者がいることが挙げられた。健診機関からは、広報資材が不足していること、制度の周知は手間がかかることが挙げられ、行政主体で制度を周知しないと検査数を増やすのは難しいことが示唆された。風疹抗体陰性者のためにMRワクチンを常に医療機関に保管しておくことも課題とされた。

結論
クーポン券個別郵送は効果があった。迅速キットは抗体検査から予防接種まで単回受診で完結する可能性が示唆されたが、IgG抗体の検出感度の検討が必要である。利他的なフレーミングで情報提供し、誤認識を修正する情報提供、強制的に情報を目にするような手法強制的に情報を目にするような手法が効果的であった。現行の法的位置づけでは風疹抗体検査受診勧奨に限界がある。2023年2月までの第5期風疹定期接種前抗体検査実施率は29.0%、予防接種実施率は6.3%と低いことから、接種率が上昇しなければ再び風疹の国内流行が発生することが懸念される。

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202119034C

収支報告書

文献番号
202119034Z