感染症危機対応医薬品等の利用可能性確保に関する研究

文献情報

文献番号
202119032A
報告書区分
総括
研究課題名
感染症危機対応医薬品等の利用可能性確保に関する研究
課題番号
21HA2012
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
田辺 正樹(国立大学法人三重大学医学部附属病院 中央検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 智也(国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター)
  • 中野 貴司(川崎医科大学 医学部 小児科)
  • 大曲 貴夫(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
  • 柳原 克紀(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 病態解析・診断学)
  • 吉村 和久(東京都健康安全研究所)
  • 森 由希子(京都大学医学部附属病院 医療情報企画部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
46,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえ、新たな感染症の発生に備える観点から、今後流行し得る既知の感染症や、未知の新興感染症(いわゆる「Disease X」)の対抗手段となる医薬品等(以下、「感染症危機対応医薬品等(MCM:Medical Countermeasures)という。」の利用可能性の確保が喫緊の課題となっている。  
 本研究では、厚生労働省「感染症対応医薬品等の利用可能性確保に関する検討会」等での議論を踏まえ、(1)公衆衛生上の危機となりうる感染症に対応する医薬品(MCM)の利用可能性を検討すること、(2)利用可能なMCMが存在する場合は、個々のMCMについて現在の流通・使用状況等を把握すること、(3)上記検討会で作成された重点感染症の暫定リストに関するアセスメント手法を検討することを目的とした。
研究方法
 「感染症対応医薬品等の利用可能性確保に関する検討会」において、狭議のMCMとして挙げられた3分野(ワクチン・治療薬・診断技術)を主な対象として、以下の5つを柱として研究を実施した。
(1)重点感染症に関する分析及び対応方針の検討
 重点感染症の暫定リストに関するアセスメント手法について、公衆衛生リスク評価とMCMの利用可能性の両面から検討し、リスク評価指標とリスクシナリオの考え方、利用可能性確保・開発の優先度の考え方、総合評価(利用可能性確保の必要性の評価)を行うプロセスを検討した。
(2)重点感染症に対するワクチンの現状・利用可能性の確保の検討
 重点感染症として挙げられたワクチンの米国FDAおよび国内での承認状況について調査した上で、ワクチンの利用可能性確保検討に関するロジック案を検討した。
(3)重点感染症に対する治療薬の現状・利用可能性の確保の検討
 重点感染症として挙げられた感染及びNeglected Tropical Disease: NTD (顧みられない熱帯病)に対する治療薬の米国FDAおよび国内での承認状況について調査した上で、承認薬がある場合とない場合に分け、利用可能性確保に向けたロジック案を検討した。
(4)重点感染症に対する診断技術(検査)の現状・利用可能性の確保の検討
 重点感染症として挙げられた感染症に対する検査及びCOVID-19対応の状況を踏まえ、医療機関及び地方衛生研究所を対象に、検査体制・機器・試薬・検査の課題についてアンケ―ト調査を行い、次の新興感染症発生に備えた検査体制の在り方について検討した。
(5)NDBを用いたMCMの分析
 薬剤の使用動向、検査数、感染者数について、レセプトで把握できるものについてはナショナルデータベース(NDB)を用いて検討を行った。
結果と考察
 重点感染症の該当性を判断する際に考慮すべき事項として挙げられた「公衆衛生的インパクト」と「戦略的視点」に基づき、総合評価する方法(案)を作成し、試験的に総合評価を行った。また、MCM(ワクチン・治療薬)の利用可能性確保が必要と考えられた場合、国内に承認薬があれば確保(備蓄)、海外に承認薬がある(国内未承認)の場合は、国内での利用可能性確保(緊急承認、未承認薬の臨床試験利用等)、国内外に承認薬がない場合は、研究開発支援(国際連携を含む)を行うフロー案を作成した。上記に基づき、重点感染症に対するMCMのワクチン・治療薬の現状の整理を行った。
 診断技術(検査)については、感染症ごとに種々の検査法はあるものの、感染症に対する検査は、基本的に核酸検出検査(PCR検査)にて対応可能であることから、ワクチン・治療薬とは別のフローで整理を行った。
 これらのデスクトップ調査、アンケート調査に加え、NDB等のリアルワールドデータを用いた重点感染症、COVID-19の医療負荷の評価方法の検討を行った。
結論
 重点感染症について、公衆衛生的インパクトと戦略的視点からMCM(ワクチン、治療薬)の利用可能性確保の必要性を総合評価するフロー、及び、備蓄適正と研究開発の方向性に関する検討ロジック案を作成した。また、重点感染症、COVID-19に対するアンケート調査を踏まえ、MCMとしての検査体制確保の在り方について検討を行った。

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202119032C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 重点感染症の該当性を判断する際に考慮すべき事項として挙げられた、「公衆衛生的インパクト」と「戦略的視点」に基づき、総合評価する方法(案)を作成し、試験的に総合評価を行った。また、MCM(ワクチン・治療薬)の利用可能性確保が必要と考えられた場合、国内に承認薬があれば確保(備蓄)、海外に承認薬がある(国内未承認)の場合は、国内での利用可能性確保(緊急承認、未承認薬の臨床試験利用等)、国内外に承認薬がない場合は、研究開発支援(国際連携を含む)へ進むフローを作成した。
臨床的観点からの成果
 診断技術(検査)については、医療機関、地方衛生研究所を対象に重点感染症の検査に係るアンケート調査を行った。既知の感染症(希少疾患)については、どの施設で検査可能かどうかを把握しておく一方で、緊急時として、パンデミックなど比較的長期間にわたり大量の検査が必要な感染症と、パンデミックほどの検査数は必要ないものの、一定数の患者に対して、迅速に診断を確定する必要があるバイオテロや突然の集団感染などに分けて、対応を検討することが良いと考えられた。
ガイドライン等の開発
特記事項なし。
その他行政的観点からの成果
 重点感染症の該当性の評価方法やMCMの利用可能性確保を検討する上でのロジック(案)について、「感染症対応医薬品等の利用可能性確保に関する検討会」等の資料として活用されることや国の備蓄、研究開発支援を検討する上での一助となることが期待される。また、医療機関や地方衛生研究所のアンケート結果については、今後、都道府県等が予防計画を策定する際の参考資料となることが期待される。
その他のインパクト
特記事項なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fukuyama K, et. al.
Medical resource usage for COVID-19 evaluated using the National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups of Japan
PLOS ONE  (2024)
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0303493

公開日・更新日

公開日
2024-05-27
更新日
2024-06-07

収支報告書

文献番号
202119032Z