新型コロナウイルスに感染した御遺体の取り扱いを含む、墓地埋葬に関する法律に関する諸問題の検証研究

文献情報

文献番号
202106039A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルスに感染した御遺体の取り扱いを含む、墓地埋葬に関する法律に関する諸問題の検証研究
課題番号
21CA2038
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
横田 睦(公益社団法人 全日本墓園協会 理事会・事務局)
研究分担者(所属機関)
  • 小松 初男(虎の門法律事務所)
  • 森山 雄嗣(特定非営利活動法人 日本環境斎苑協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,128,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、我が国は超高齢社会であることから、死亡者が年々増加しており、都市部を中心に火葬を行うまでの期間が長期化する場合があるなど、遺体のままの形での管理が珍しいことではなくなりつつあり、結果、公衆衛生上の問題が生じる可能性が高まっている。
他方で、現行の墓地埋葬に関する法律では、人が死亡してから埋葬・火葬されるまでの間の遺体の取扱いについては、基本的に国レベルで明確なルールがない状況である。
こうした背景から、幾つかの地方公共団体では、住民からの要望等を背景として、遺体を安置する施設に関して既存の「まちづくり条例」にて規制の対象となる施設に再定義を行ったり、新たな条例、規則・要綱などを策定し、対応する、というような状況が顕われつつある。こうした現状について、本研究では、包括的に検証を行い、今後、検討をするべき課題などを抽出・整理をした。
そこで本研究では、公衆衛生上の観点から、国内外における遺体の取扱いの状況について明らかにするために、国内外の関連施設の運用事例及び関連ルール等の実態・現状を調査するとともに、関係者からの詳細な意見を聴取し、その実態・現状を踏まえた上で課題への対応に資する方策を検討することを目的とした。
研究方法
本研究では、以下のとおり地方自治体(火葬場)関係及び葬祭事業者関係の分野について調査を実施した。
(1) 地方自治体(火葬場)関係(担当:森山・横田)
ア 地方自治体(火葬場)に対するアンケート調査
(2) 葬祭事業関係(担当:小松・横田)
ア 「遺体安置施設」という歴史の新しい施設を含めた遺体取扱いの関連施設に対するヒアリング調査
イ 関係者を交えたアンケート調査
ウ 関連する条例や海外の法令の調査
(3) 成果物(担当:横田・森山・小松)
(1)及び(2)の結果の解析・取りまとめ
結果と考察
1 火葬場へのアンケート分析結果
アンケートでは、比較的に遺体安置機能を持っていると思われる火葬炉4基以上を保有する火葬場が対象。結果、遺体の安置時間は平均1.7日。多くは2日以下。トラブルも少ない。但し、今後の火葬件数の増加には留意する必要がある。

2 葬儀場(遺体安置施設)へのアンケート分析結果
アンケートでは、(一社)全日本冠婚葬祭互助協会及び全日本葬祭業協同組合連合会の各々の会員・組合員が対象。葬儀場の遺体安置の受入れ体制が「不足している」は206件(27%)。「不足していない」は500件(65%)。「不足」している場合、「既存葬儀場の増設・改築」で遺体安置施設を新たに設けることを検討している。遺体安置に当たり問題となった事例は少ない。

3 葬祭場及び遺体安置施設を規制する条例等の調査研究
(1)施設に対する規制の態様
① 条例により規制を行うケースでは、都市計画的な視点から、まちづくり等を目的とする条例に取り込む形で規制が行われている。
② これに対し、指導要綱等で規制を行うケースでは、施設自体を対象として規制が行われている。
(2)規制の内容に関する検討
①条例による規制を行うケースでは、遺体安置施設等の用途に供する建物の建築や、目的の用途変更に届出を求め、まちづくりへの事業者の協力や近隣周辺住民との調和を定めている。
②指導要綱等による規制を行うケースでは「近隣住民との紛争の未然防止と良好な住環境の形成」を求めている。
(3)今後の課題
遺体安置施設等の施設は、近隣住民との軋轢を生じさせる可能性のある施設であるが、大規模災害時は公衆衛生や地域環境の維持を担う。それ故、運営が適切に行なわれるための準則を定めることの重要性は大きい。

4 海外の葬祭場等を規制する法令・規制等の調査報告
この研究では、「オーストラリア[南オーストラリア州]」「イギリス[イングランド・ウェールズ]」「オランダ」「アメリカ合衆国[オハイオ州]」「台湾」における法、規制、ルールについてまとめた。
結論
今回の調査では葬儀場(葬儀事業者)の調査は(一社)全日本冠婚葬祭互助協会及び全日本葬祭業協同組合連合会に協力いただき、その会員、組合員に施行をした。
こうした団体に所属していない葬儀事業者等については今回の調査で把握していない点に留意が必要ではあるものの、本研究による調査の結果の解析・取りまとめを通じて、人が死亡してから火葬されるまでの遺体の取扱いの現状等を把握した。もとより遺体の取扱いについては、地域の慣習や住民の宗教的感情等によって異なることから、こうした課題への対応自体は、各々の地方公共団体で地域の実情に応じ検討がなされるべきものであり、あるいは葬儀事業者における自律性ある対応が求められるが、そうした検討にあたって参考となるものを取りまとめた。
取りまとめた報告書を葬祭事業者や火葬場等、事業者に周知することにより、その適切な対応の促進に資することが期待できると考えている。

公開日・更新日

公開日
2023-06-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106039C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本報告書は、本研究の調査を通じて把握した遺体の取扱いの現状や、今後検討するべき課題などを抽出・整理し、とりまとめたものである。
こうした課題に対しては、地域の慣習や宗教的感情等の地域の実情に合わせ、葬儀事業者や火葬場等における自律性ある対応が求められるが、これを踏まえつつも、本報告書は、事業者における適切な対応の促進に資することが期待できるものである。
臨床的観点からの成果
特になし。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
遺体安置施設は、周辺地域に影響を及ぼし近隣住民との軋轢を生じさせる可能性がある施設である反面、大規模災害時は地方自治体と連携しながら公衆衛生等の維持に有用な役割を果たす。それ故、各地方自治体が遺体安置施設の実態を把握し、運営が適切に行なわれるための準則を定める重要性は増加しつつある。本報告書で把握した遺体安置施設の実態や条例等の状況は、今後準則を定めようとしている地方自治体にとって参考となるものである。
その他のインパクト
現在、我が国は超高齢社会であり、死亡者が年々増加している一方で、火葬場の新設や拡張は難しく、火葬までの期間、遺体を衛生的かつ安全に管理する「遺体安置施設」の運用・管理の重要性が増している。このような状況を背景に、「遺体安置施設」の適正な運用・管理を確保していかなければならない中、その現状や課題等についてとりまとめた本報告書が果たす社会的意義は大きい。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
202106039Z