地方衛生研究所における即応体制と相互支援等の確立に対する研究

文献情報

文献番号
202127025A
報告書区分
総括
研究課題名
地方衛生研究所における即応体制と相互支援等の確立に対する研究
課題番号
21LA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
調 恒明(山口県環境保健センター)
研究分担者(所属機関)
  • 吉村 和久(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所)
  • 岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
  • 猿木 信裕(群馬県立がんセンター)
  • 朝野 和典(大阪大学 医学系研究科)
  • 高崎 智彦(BML総合研究所 先端技術開発本部)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
  • 水田 克巳(山形県衛生研究所微生物部)
  • 飯島 義雄(神戸市健康科学研究所)
  • 前田 秀雄(東京都北区保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
10,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2009年の新型インフルエンザでは、感染の拡大に伴い、約2ヶ月半で全数検査を中止した。また、新型インフルエンザでは、既存の迅速検査キットにより医療のための検査は可能であったことから、封じ込めに必要な行政検査数は、従来の地方衛生研究所の能力で何とか対応可能なレベルであり、検査の課題は顕在化しなかったためか、例えば「新型インフルエンザ対応ガイドライン」における都道府県の検査に関する記述は極めて限定的であった。一方、COVID-19では、クラスター対策、院内感染、医療のための検査診断など多くの検査が必要とされ、様々な課題が顕在化しており、ここで課題の抽出とその改善策について検討を行う事は重要である。
本研究では、地方衛生研究所のCOVID-19への対応を確認し、貢献と課題を明らかにすることにより、今後の感染症危機対応の強化につなげる事を目的とする。
研究方法
1.Web会議、研究会の開催
2回の班会議の開催による情報の共有と意見交換及び保健所との連携強化を目的として保健所長会との連携会議を開催した(第2回班会議の資料を末尾に掲載する)。さらに、地方衛生研究所におけるゲノム解析技術の普及と衛生行政への貢献を目的としてゲノム解析に関する研究会を開催した。

2.全国アンケート調査
全国アンケート調査を実施し、地方衛生研究所(地衛研)の新型コロナウイルス感染症への自治体間の相互支援を含めた対応状況、課題を把握する事により、今後の新興感染症発生時における体制の在り方について考察を行った。
結果と考察
【即応体制について】新型コロナウイルス感染症発生時の地衛研と感染研の初期対応についてまとめ、今後の即応体制における課題について考察を行った。今回、新型コロナウイルス感染症発生において、感染研は検査法を開発し、検査マニュアルを感染研と地衛研の共同で作成し、検査試薬は国の予算により全国の地衛研に配布することにより全国の自治体で一律の検査体制が速やかに確立された。しかしこの一連の流れはこれまで予算も含めてアドホックに行われて来たが、今後は、米国のLaboratory Response Networkに見られるように、国及び地方自治体の確立された体制として常に用意されるべきであると考えられた。
【相互支援について】都道府県の地衛研が主に都道府県内の中核市等、政令市から検査を依頼されていた。11の都道府県が、地域ブロックでの広域連携協定等に基づき、他の都道府県に依頼されていた。中核市等は依頼することが多く、政令市はどちらも同程度に行われていた。政令市や中核市等は所属する都道府県の地衛研に依頼することが多く、自治体間の協力の目的は、検査キャパシティを超過した場合やゲノム解析など高度な技術を要する場合などであり、自治体間の協力の利点と課題について示した。都道府県間の相互支援は、初期の検査キャパシティが少ない時、大規模クラスターなど緊急避難的な検査支援であり、基本的には自治体内で完結していたと考えられた。
【保健所長会の連携について】地衛研全国協議会と保健所長会との新たな連携の枠組みを検討するため、東京都北区保健所 前田秀雄所長、枚方市保健所 白井千香所長の参加を得て会議を開催した。両氏とも地衛研から提供されるゲノム解析の基づく分子疫学、患者疫学情報に関する解析などのデータの有用性から、保健所と地衛研の連携の重要性を指摘した。今後、厚生労働科学研究等を通じて保健所長会との連携強化を図る事となった。
結論
感染症検査及び情報処理において地衛研は民間検査機関では果たし得ない重要な役割を担っている事が示された。今後は、厚生労働省、国立感染症研究所(感染研)と一体となった新興感染症発生時の初期対応の体制整備と保健所との連携強化が重要であり、法制化を含めた議論が必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-11-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-11-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202127025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1) 研究成果
2回の班会議の開催による情報の共有と意見交換及び全国アンケート調査を実施し、地方衛生研究所の新型コロナウイルス感染症への自治体間の相互支援を含めた対応状況、課題を把握する事により、今後の新興感染症発生時における体制について考察を行った。また、保健所長会との連携強化の検討を行った。
(2) 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
令和3年8月から行われた厚生労働省健康局健康課と地方衛生研究所全国協議会幹部の「地衛研の機能強化に関する意見交換」では本研究班の検討内容をもとに協議が行われた。
臨床的観点からの成果
(1) 研究成果
「臨床検体を用いたSARS-CoV-2抗原定性検査キットの評価」により抗原定性キットの感度特異度に差があることを示した。地衛研による新型コロナウイルス感染症の院内感染への介入が報告された。地衛研による新型コロナウイルスのゲノム解析が強化された。
(2) 研究成果の臨床的・国際的・社会的意義
地衛研による院内感染への介入事例の共有により院内感染対策の改善が期待される。変異株への置き換わり、ゲノムの比較による分子疫学による感染状況の把握は医療の安全と感染拡大の防止に貢献する。
ガイドライン等の開発
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針」第4版、第5版の改訂に関与した。
その他行政的観点からの成果
令和3年8月から9月にかけて、厚生労働省健康局健康課と地方衛生研究所全国協議会の幹部で、地方衛生研究所の機能強化に向けた意見交換会が5回にわたり実施された。そこでは本研究班のメンバーが参加し研究班の検討内容に基づき議論が行われた。
その他のインパクト
地方衛生研究所が参加する「新型コロナウイルスのゲノム解析に関する情報交換会」を令和3年11月に開催した。

発表件数

原著論文(和文)
14件
原著論文(英文等)
18件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針」第4版、第5版
その他成果(普及・啓発活動)
0件
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針」第4版、第5版

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-11-16
更新日
2024-06-10

収支報告書

文献番号
202127025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,200,000円
(2)補助金確定額
9,506,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,694,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,347,811円
人件費・謝金 0円
旅費 169,426円
その他 132,939円
間接経費 857,510円
合計 9,507,686円

備考

備考
補助金確定額と支出合計の差額1,686円は、研究代表者及び研究分担者の自己資金1,658円及び預金利息28円から支出。

公開日・更新日

公開日
2023-03-17
更新日
-