旅館及び公衆浴場における伝染性の疾病の範囲の設定のための研究

文献情報

文献番号
202127023A
報告書区分
総括
研究課題名
旅館及び公衆浴場における伝染性の疾病の範囲の設定のための研究
課題番号
21LA1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
山岸 拓也(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター第四室)
研究分担者(所属機関)
  • 土橋 酉紀(国立感染症研究所 実地疫学研究センター)
  • 福住 宗久(国立感染症研究所 実地疫学研究センター)
  • 黒須 一見(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
旅館業法(昭和 23 年法律第 138 号)においては、「営業者は、宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められる場合を除いては、宿泊を拒んではならない。」とされている一方、公衆浴場法(昭和 32 年法律第 139 号)においては、「営業者は伝染性の疾病にかかっている者と認められる者に対しては、その入浴を拒まなければならない。」と規定されている。旅館業や公衆浴場等の不特定多数が集まる場所で感染する可能性が高い疾病や、入浴において感染する疾患についての文献調査や事業者に対する宿泊拒否及び入浴拒否を行った感染症の具体例や可能性を調査するため
研究方法
2021年に旅行業者、関係団体へのインタビュー、公衆浴場組合員へ感染症発生状況や感染対策実施状況に関するアンケートを実施し、2022年8月に旅館での病原体検出調査を実施した。
結果と考察
過去10年間で旅館や公衆浴場において感染症に関連した事例でメディアに報道されたものはレジオネラ等17事例であった。また、全国公衆浴場生活衛生同業者組合連合会への聴取では、銭湯において感染症で困った事例は確認されていなかった。2022年3月に実施した都道府県公衆浴場生活衛生同業者組合員へのアンケートは、国内で協力が得られると考えられた同組合連合会の対象(主に理事ながいる都道府県)の対象者530の配布に対して回収410(77%)であり、過去5年間にCOVID-19以外の感染症で利用客から苦情や連絡をうけた件数は10件(2%)、過去に感染症を疑う症状で利用客の利用を断った件数が79件(19%)であった。その内訳は、発疹や皮膚の炎症が65件(82%)と最も多く、ついで水虫4件(5%)、激しい咳や風邪症状4件(5%)であった。ただし、利用客とトラブルになった事例は16件(4%)であった。公衆浴場では感染症ということが明確ではない皮膚疾患での店舗による利用拒否が過去5年間に2割弱の店舗で行われていた。店舗による利用拒否に関しては、利用客の利用を拒むことのではなく、有症状の利用客が訪れた時に医療に繋げる仕組みが重要と考えられた。また、1ホテルにおける現地調査では、旅館室内4カ所で採取した空気2000LからSARS-CoV-2や呼吸器感染症のウイルスの遺伝子は検出されず、環境表面からも新型コロナウイルスや下痢症ウイルスの遺伝子は検出されなかった。ただし、環境表面では、一般細菌が浴室扉取手(清掃前、2.8×103 CFU/ml)、朝食ビュッフェ客席机(清掃後、1.0×103 CFU/ml)、朝食ビュッフェ炊飯器開閉ボタン(清掃前、4.1×103 CFU/ml)、エレベーター出入口脇ボタン(清掃後、階数・開閉)(3.2×102 CFU/ml)から、大腸菌群が朝食ビュッフェ炊飯器開閉ボタン(清掃前、1.0×10 CFU/ml)から検出された。CO2濃度は固形燃料の使用もあり、夕食中に1100ppmまで増加していたが、それ以外は概ね700ppm以下であった。
結論
本旅館においては、従業員や利用客のウイルス感染のリスクは低いが、一般細菌の検出状況から、ビュッフェでの利用客の手袋着用は意義が乏しいが、食事前後や食事中の利用客の手指衛生が重要であることが示唆された。来年度は、さらに旅館における現地調査を進め、加えて旅館業事業者に対する感染症発生状況と感染対策に関するアンケート、及び海外における旅館業に関係する法規を確認していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2024-08-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-11-09
更新日
2024-08-28

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202127023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
4,927,000円
差引額 [(1)-(2)]
73,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,455,755円
人件費・謝金 0円
旅費 121,369円
その他 350,633円
間接経費 0円
合計 4,927,757円

備考

備考
自己資金757円

公開日・更新日

公開日
2023-01-19
更新日
-