医薬品等の個人輸入における保健衛生上の危害に関する研究

文献情報

文献番号
200838071A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品等の個人輸入における保健衛生上の危害に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-023
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 谷本 剛(同志社女子大学 薬学部)
  • 奥村 順子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
  • 本間 隆之(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インターネット等を介した医薬品個人輸入に関する消費者意識や、個人輸入品の保健衛生上の実態、諸外国における対策について調査・研究を行い、保健衛生上の施策検討の科学的基盤を得る。
研究方法
1.個人輸入に関する消費者実態調査は、インターネット上で実施する質問票による横断調査型研究。
2.抗肥満薬試買調査は、個人輸入代行業者のウェブサイトからダイエット目的とした製品を購入。サイト及び入手製品の観察、製品の真正性、製造販売業者の合法性を調査。
3.シブトラミン製剤の品質はHPLCによる含量試験。
4.諸外国における対策は国際会議への参加、文献収集及び情報整理による。
結果と考察
1.13,229人の回答者の5%を越える消費者に医薬品の個人輸入経験があった。入手した医薬品による副作用と思しき症状が発現した例も約15%あり,適正な使用方法がわからぬままに使用した可能性も示唆された。また、医薬品個人輸入を行う消費者は「偽造医薬品や品質不良品の混入」や、「重大な健康被害の発生」を知っており、啓発に際して考慮する点と思われる。
2.ウエブサイト上の輸入代行業者32サイトから医療用抗肥満薬シブトラミン製剤9種類を入手した。ウェブ上での効能等の記載、処方せん提示なし、個人輸入制限量を超過した送付、外国語の添付文書、信憑性不明の日本語説明書の挿入、説明皆無の製品、齟齬体制の欠除が観察され、適正使用が計られていない。
3.個人輸入したシブトラミン製剤(32品目)は概ね適切な含有量を示し、製造国間での品質の差異も認められなかった。しかし海外発送業者から個人消費者へ送付される医薬品に品質保証はなく、過去には禁止品や偽造品も確認されている。
4.海外の規制は、西欧先進国で国内のインターネット販売については処方せん薬の販売制限や販売店の認証制度が導入されている。国際的レベルでの規制やルールは欧州評議会の「規範」が唯一であり、WHOの「国際偽造医薬品・医療機器対策タスクフォース(IMPACT)」で作業中の「偽造医薬品・医療機器のインターネット取引対策ガイダンス」の動向が注目される。
結論
インターネットによる医薬品の個人輸入は相当数の国民に浸透しているが、個人消費用に国際流通する医薬品は薬事法の規制の枠外にあり、国際的な規制も存在しない。品質保証も服薬指導も行われておらず、健康被害の発生も報告されていることから、一般生活者が自己判断で医薬品を個人輸入・使用しないよう一層の啓発が望まれる。また、IMPACTによる偽造薬インターネット取引ガイダンスの作成など国際的取組が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2010-03-17
更新日
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