薬剤師の社会的役割を踏まえた医師との地域医療連携のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200838067A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤師の社会的役割を踏まえた医師との地域医療連携のあり方に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-019
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
大野 勲(東北薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 水柿 道直(東北薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 患者本位の医療を提供するためには、薬局薬剤師の役割、位置付けを明確にし、より効果的な医師ー薬剤師の連携=医薬連携、を推進することが必要である。しかし、現時点では、薬剤師にとっては処方箋が医師からの唯一の情報であり、一方、医師から見れば服薬指導の内容や薬剤師が持つ患者情報を知る由もない。この医師と薬剤師の薬物治療における情報と意識の隔たりは医療の連続性を欠くものであり、何よりも患者にとって不幸なことである。そこで、患者情報の共有化を含めて薬物治療における効果的な医薬連携が進まない現状および原因を把握し、今後の連携のあり方や進め方を、地域医療における薬剤師の役割を踏まえながら、明らかにすることを目的として本研究を実施した。

研究方法
Ⅰ.アンケート調査の実施と総括
 医師、保険薬局薬剤師および患者を対象に、患者情報提供について、要否、提供内容・手段および提供に当たっての問題点などをアンケート調査した。
Ⅱ.医薬情報交換の試行
 処方箋の発行医師(病院医師)と受領薬剤師(薬局薬剤師)の間で、確認事項報告書(試作)を用いて患者情報の交換を試行した。
Ⅲ.医薬共同の勉強会の実施
 喘息をテーマに診断から治療までの勉強会を実施した。

結果と考察
 医師、薬剤師とも情報交換を必要と感じておりながら、現状は不十分としている。その原因として、お互いのニーズの不明、コミュニケーション不足、情報交換の手段や時間がないことが挙げられた。患者のほとんどは、病名も含めた患者情報が薬剤師に伝えられていると思っていた。医薬情報交換の試行では、提供された情報が互いに業務に有用であったこと、患者さんは診療時間内に医師に伝えられなかったことあるいは聞けなかったことを薬局に来てから薬剤師に初めて話すことが決して少なくないことが明らかにされ、医師と薬剤師の情報共有の必要性が改めて浮き彫りにされた。
結論
 今年度の研究結果から、薬剤師の医師との地域医療連携のあり方の一つが、医師との患者情報の共有であることが確認できた。この情報共有を進めるには、共同の勉強会など普段からのコミュニケーションと情報共有制度の整備が必須である。制度としては、医師と薬剤師が共用できる情報交換ツールと医師による薬剤師への患者情報提供の診療報酬算定が必要である。また、最低限の共有すべき情報としての病名が何らかの形で薬剤師に伝わるような制度設定が必要であろう。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-