水道スマートメータ―導入に向けたデータ利活用の検討

文献情報

文献番号
202127013A
報告書区分
総括
研究課題名
水道スマートメータ―導入に向けたデータ利活用の検討
研究課題名(英字)
-
課題番号
20LA1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大瀧 友里奈(国立大学法人一橋大学 大学院社会学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、スマートメータから得られるデータの利活用の可能性を検討し、その利点を具体的に示すことにより、スマートメータ導入の促進に寄与することである。そのため、①ディープラーニング手法によるデータの解析、②見える化の方法など需要サイドから手法検討、③多様な料金制度の検討、という3つのアプローチを行う。
研究方法
①ディープラーニング手法による解析 
これまでに取得済みの水使用量および水使用行動のデータを用いて、解析に適した形へのデータクリーニング手法や、水使用量データの特徴にあったディープラーニング手法を探索した。
あわせて、機械学習によるデータ分類の国内外の研究をサーベイし、ディープラーニング手法を探索した。

②需要サイドからの水使用データ活用手法の検討
データの利活用で先行している、電力使用量の活用について東京電力およびその関連会社、グリッドデータバンクラボへのヒアリング調査を行った。
また、水使用データの活用について検討し、プロトタイプを提案し、一般家庭を対象にしたアンケート調査を行った。

③多様な料金制度の検討
多様な料金制度の活用が先行している電力について、分析事例のサーベイと検証を行った。
結果と考察
各研究項目の詳細は、分担研究報告に記載するため、要点のみ記載する。
① ディープラーニング手法による解析
各家庭毎に1秒間総流量データから使用用途を識別することは95%を超える精度で可能であることを確認した。複数の異なる家庭の流量データを普遍的に識別することを目指し、1秒毎の時系列総流量データをディスアグリゲートした利用目的ごとの時系列流量データへの変換について、系列から系列への写像として捉え、Transformerで直接変換する手法での実験に取りかかっている。
また、GAN(敵対的生成ネットワーク)を用いて、実流量測定データと区別できない人工流量データを大量に生成する研究に着手すべく、実流量測定データの波形切り出し作業を行った。今後は、これらの手法の中で最高の精度が得られたものについて、異なる粒度で測定し、性能とコストで比較を行う予定である。

②需要サイドからの水使用データ活用手法の検討
スマートメータデータを活用したサービスとして考えられている「見える化」に関連する諸問題やスマートメータデータを活用した多様な料金体系に対する需要家の理解について検討した。家庭での水の使用量は、人の在/不在に大きく影響されるため、新型コロナ流行に伴うステイホームやテレワークの普及は人々の家庭での水使用行動や水使用量を大きく変化させている。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出により、フィールド実験は大きく影響を受ける。2021年度も前年度に引き続き人々の生活様式が不安定であったため、緊急事態宣言があけるのを待ち、いくつかの方法での短期的なフィールド実験を行った。
まず、各家庭の水使用量をCO₂排出量に関連させた情報提示を、自分の水使用量の知らせるナッジおよびサステイナブルな水の使い方に関するチップスを活用した形で行い、情報提示による水使用量の短期的な変化を比較した。その結果、高消費家庭においてチップスの提示が水使用量の削減につながることが明らかになった。
また、水道事業の継続性への理解を高める手法として、エピソード的未来記憶を用いた。その結果、将来を鮮明に想像できることがリスク認知度と相関しており、将来を鮮明に想像させる工夫が必要であることが明らかになった。

③多様な料金制度の検討
電力における多様な料金制度の知見を踏まえ、水道に応用した場合について検討を行った。一連の先行研究から、短期の水需要へのデマンド・レスポンス(DR)は非弾力的で不均一であり、また非線形の料金制度の下では需要家の行動変容と関係を見極める必要があるが、スマートメータによる粒度の高い消費データが得られるようになれば、従前は費用対効果の観点から困難だった各需要家の消費実態に応じた新たな節水条件付きの料金などを開発・導入を検討する余地があることが考察できた。
実際、欧州諸国でのスマートメータ導入によるDRの実験はおおむね成功しており、利用可能な水資源のより効率的な管理を促進するために水道料金制度を活用する可能性は高い。特に、真夏の水需要は、水不足とインフラ分布の両方に重圧をかけており、そこにscarcity pricingを導入することは検討の余地があるだろう。
結論
①ディープラーニング手法による解析、②需要サイドからの水使用データ活用手法の検討、③多様な料金制度の検討についての成果を踏まえ、来年度の具体的なフィールド実験や検証につなげていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2025-09-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-09-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202127013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
3,983,000円
差引額 [(1)-(2)]
17,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 603,571円
人件費・謝金 275,300円
旅費 0円
その他 2,204,635円
間接経費 900,000円
合計 3,983,506円

備考

備考
自己資金506円 

公開日・更新日

公開日
2022-10-20
更新日
-