地方衛生研究所における感染症等による健康危機の対応体制強化に向けた研究

文献情報

文献番号
202127008A
報告書区分
総括
研究課題名
地方衛生研究所における感染症等による健康危機の対応体制強化に向けた研究
課題番号
20LA1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
高崎 智彦(神奈川県衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所)
  • 皆川 洋子(愛知県衛生研究所  生物学部ウイルス研究室)
  • 大西 真(国立感染症研究所)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
  • 岡本 貴世子(国立感染症研究所感染症危機管理センター)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 大石 和徳(富山県衛生研究所)
  • 木村 博一(群馬パース大学 保健科学部)
  • 貞升 健志(東京都健康安全研究センター 微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
2,430,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が猛威を振るう中で令和3年度も2年度に引き続きやはりSARS-CoV-2ウイルス遺伝子検査を主とした研究内容となった。その状況下でほとんどの実地研修は開催できず、より地方衛生研究所(地衛研)のSARS-CoV-2ウイルス遺伝子検査の実態調査、Web研修や次年度の研修のための動画を作成することとした。SARS-CoV-2の検査は各変異株用のリアルタイムPCR、次世代シークエンサーによる全ゲノム解析と多岐にわたっている。検査の数的能力が優先されている現状だが、マイクロピペットの管理法の習得などいずれ精度管理の重要性が指摘される時期が来る時に備えた。先行研究班で微生物検査担当者を対象にコンピテンシーリストが作成されているが、COVID-19パンデミックを経験して、ウイルス検査部門のためのコンピテンシーリスト修正案を検討することとした。検査部門の自主的な取り組みとして、ヒヤリハット調査を通年で試行し、検査担当者間で共有するためのプラットフォームを検討した。
研究方法
地方衛生研究所(地衛研)の現状に即したマニュアル作成やPCRの精度維持にも重要であるマイクロピペットの管理法が、今後の研修の場で活用できるよう令和2年度に地衛研の6ブロックにマイクロピペットリークテスタと容量テスターを各1台配備したが、北海道、四国にも各1台、沖縄にリークテスタを1台配備し、それらの使用法の動画を制作し、使用の難易度、動画の有用性などをアンケ―ト調査した。SARS-CoV-2の遺伝子検査に関して、変異株の出現に伴い変異株用リアルタイムPCR、次世代シークエンサーによる全ゲノム解析と地衛研で実施しているSARS-CoV-2遺伝子検査について、経時的(流行・変異株)にその状況を調査した。また、変異株用にリアルタイムRT-PCR法も開発した。HIV確認検査操作法の動画を制作した。先行研究班で作成した微生物検査担当者を対象としたコンピテンシーリストについて、ウイルス検査部署において必要な項目を追加したコンピテンシーリスト案を作成した。さらに、検査の質の自主管理の取り組みとしてヒヤリハット情報収集を行いその有用性を検討した。
結果と考察
COVID-19の病原体診断は、検査キャパシティーの拡充が最優先される中、流行が拡大するにつれてその検査の主体は民間検査会社へとシフトした。その後、新たな変異株が出現するたびに検査の主体は新規に構築された「変異株用の検査系」による検査が地衛研に戻り、その方法がが普及するとともに民間検査会社へとシフトした。このタイムラグをいかに短くするかは今後の検査体制を考えるうえで重要な課題である。また、COVID-19後にもウイルス遺伝子検査機能を維持し、他のウイルス感染症診断も含めて、民間検査会社や医療機関の検査室との連携を図るために相互の情報交換や共通のマニュアル作りも必要である。
平成28年度の感染症法の改正に伴い、地衛研における病原体検査の質を確保するため、検査の精度管理は重要である。PCRをはじめ種々の検査に欠かせないマイクロピペットの管理を研修できるように配備した。次年度以降の実地研修で役立つものと思われる。また制作した「HIV確認検査」操作法の動画は実地研修の反応待ち時間や、ウェブ研修において有効活用できると考えられる。微生物検査担当部署の共通コンピテンシーリストについて、新型コロナウイルス流行の経験も踏まえてウイルス検査担当部署に特化したリスト案を作成した。ヒヤリハット調査は、検査の質の自主管理法として有用である。令和3年度も実施したがヒヤリハットの共通因子はPCR検査のプロセスに関する事項であった。今後さらにそのプラットフォームを改良しつつ継続して実施することが重要である。
結論
COVID-19の遺伝子検査能力拡充の結果、地衛研、民間検査会社、医療機関、大学等でもウイルス遺伝子検査が実施可能になった。それぞれの特徴を生かして、互いに連携を密にし、他の感染症にも応用するべきである。今後は民間検査会社や医療機関の検査室との連携をはかり、他のウイルス感染症の診断にも拡張すべきである。地衛研での病原体検査体制は整えられている中で、先行研究で作成されたコンピテンシーリストに追記する形で、新型コロナウイルス流行の経験を踏まえ、ウイルス検査担当部署に特化したリスト案を作成したが、今後もさらに改訂し、実際に使用する施設の拡大が重要である。検査の質の自主管理の取り組みとしてヒヤリハット情報収集を行った。今後も検査精度の維持向上のために継続して実施することが望まれる。しかし新人の教育、技術継承や兼務体制など、人員不足にかかる課題についてさらなる検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-10-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202127008B
報告書区分
総合
研究課題名
地方衛生研究所における感染症等による健康危機の対応体制強化に向けた研究
課題番号
20LA1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
高崎 智彦(神奈川県衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所)
  • 皆川 洋子(愛知県衛生研究所  生物学部ウイルス研究室)
  • 大西 真(国立感染症研究所)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
  • 岡本 貴世子(国立感染症研究所ウイルス第三部第二室)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 大石 和徳(富山県衛生研究所)
  • 木村 博一(群馬パース大学 保健科学部)
  • 貞升 健志(東京都健康安全研究センター 微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が猛威を振るう中で本研究班は、やはりCOVID-19すなわちSARS-CoV-2ウイルス遺伝子検査を主とした研究内容となった。その状況下でほとんどの実地研修は実施できず、より地方衛生研究所(地衛研)のSARS-CoV-2ウイルス遺伝子検査の地衛研における実情に沿ったマニュアル作成、実態調査、Web研修や次年度の研修のための動画を作成し、検査能力の拡大と精度向上を図った。SARS-CoV-2の検査はリアルタイムPCR(市販のキットも含む)、変異株用のリアルタイムPCR、次世代シークエンサーによる全ゲノム解析と多岐にわたっている。検査の数的能力が優先されている現状だが、マイクロピペットの管理法の習得などいずれ精度管理の重要性が重視される時に備えた。先行研究班で微生物検査担当者を対象にコンピテンシーリストが作成されているが、COVID-19パンデミックを経験して、ウイルス検査部門のためのコンピテンシーリスト修正案を検討した。検査部門の自主的な取り組みとして、ヒヤリハット調査を通年で試行し、検査担当者間で共有するためのプラットフォームを検討することとした。
研究方法
地衛研の現状に即したマニュアル作成やPCRの精度維持にも重要であるマイクロピペットの管理が、今後の研修の場で活用できるよう地衛研の6ブロックにマイクロピペットリークテスタと容量テスターを各1台配備し、北海道、四国にも各1台、沖縄にリークテスタを1台配備し、それらの使用法の動画を制作し、使用の難易度、動画の有用性などをアンケ―ト調査した。SARS-CoV-2の遺伝子検査に関して、変異株用リアルタイムPCR、次世代シークエンサーによる全ゲノム解析と地衛研で実施しているSARS-CoV-2検査について、経時的(流行波・変異株)にその状況を調査した。細菌検査に係る入門動画、「HIV確認検査」操作法の動画、東京都微生物検出情報の音声版を研修用に制作する。先行研究班で作成した微生物検査担当者を対象としたコンピテンシーリストを用いた人材育成に関して、地全協に加盟している83機関(都道府県47機関、市区36機関)にアンケート調査を実施し、都道府県と市区別に集計・解析した。また、ウイルス検査部署において必要な項目を追加したコンピテンシーリスト案を作成した。さらに、検査の質の自主管理の取り組みとしてヒヤリハット情報収集を行いその有用性を検討した。
結果と考察
COVID-19の病原体診断は、検査キャパシティーの拡充が優先される中、地衛研においてもウイルスRNA抽出工程が不要なキットが使用されはじめたため使用されている現状に即して、地衛研のための追補版を追加したことは有用であった。流行が拡大するにつれてその検査の主体は民間検査会社へとシフトしたが、新たな変異株が出現するたびに検査の主体は地衛研に戻り、変異株用の検査系が普及するとともに民間検査会社へとシフトした。このタイムラグをいかに短くするかは今後の検査体制を考えるうえで重要な課題である。平成28年度の感染症法の改正に伴い、地衛研における病原体検査の質を確保するため、検査の精度管理は重要である。PCRをはじめ種々の検査に欠かせないマイクロピペットの管理法を研修できるように機器を配備した。次年度以降の実地研修で役立つものと思われる。また、初心者向けに制作した細菌検査の基本手技、HIV確認検査の操作法の動画は実地研修の反応待ち時間や、ウェブ研修において有効活用できると考えられる。微生物検査担当部署の共通コンピテンシーリストについて、新型コロナウイルス流行の経験も踏まえてウイルス検査担当部署に特化したリスト案を作成した。ヒヤリハット調査は、検査の質の自主管理法として有用である。令和3年度も実施したがヒヤリハットの共通因子はPCR検査のプロセスに関する事項であった。今後さらにそのプラットフォームを改良しつつ継続して実施することが重要である。
結論
COVID-19の遺伝子検査能力拡充の結果、地衛研、民間検査会社、医療機関、大学等でもウイルス遺伝子検査が実施可能になった。それぞれの特徴を生かして、互いに連携を密にし、他の感染症にも応用するべきである。今後は民間検査会社との連携を図るために相互の情報交換や共通のマニュアル作りも必要である。病原体検査体制は整えられている中で、先行研究で作成されたコンピテンシーリストに追記する形で、新型コロナウイルス流行の経験を踏まえ、ウイルス検査担当部署に特化したリスト案も作成した。検査の質の自主管理の取り組みとしてヒヤリハット情報収集を行った。今後も検査精度の維持向上のために継続して実施することが望まれる。しかし新人の教育、技術継承や兼務体制など、人員不足にかかる課題についてさらなる検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-10-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202127008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「初心者向け細菌検査関連」、「『マイクロピペットの管理』と検査法が新しくなった「HIV確認検査」の動画の作成および「食品からのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)分離状況」の音声データ付きパワーポイントを制作した。実地研修が開催できない場合のウェブ研修での活用、実地研修中の反応待ち時間にも活用できる。
臨床的観点からの成果
体外診断薬の承認を受けた新型コロナウイルスのPCR検査キットについて注意事項も含めた検査マニュアルと『マイクロピペットの管理』に関する動画を作成したが、医療機関の検査室においても活用できる。
ガイドライン等の開発
先行研究で提案された微生物検査担当部署の共通コンピテンシーリストをベースにウイルス検査部署に特化した知識、技能や具体的な項目を加えたウイルス検査部署用コンピテンシーリストを作成した。
その他行政的観点からの成果
新型コロナウイルスのPCR検査のキャパシティーを増やすために、体外診断薬の承認を受けたキットを使用する地衛研も増えたことから、よく使われている3種類に関して使用上の注意事項も含めたマニュアルを作成し、行政検査の質を維持した。
その他のインパクト
「初心者向け細菌検査関連」「マイクロピペットの管理」「HIV確認検査」動画を地方衛生研究所全国協議会のホームページにアップロードした。令和4年度 新興再興感染症技術研修において「マイクロピペットの管理」の動画を活用し実地研修した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
「初心者向け細菌検査関連」「マイクロピペットの管理」「HIV確認検査」動画をホームページ掲載

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-24
更新日
2023-06-22

収支報告書

文献番号
202127008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,150,000円
(2)補助金確定額
3,062,000円
差引額 [(1)-(2)]
88,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,053,860円
人件費・謝金 0円
旅費 24,058円
その他 352,500円
間接経費 632,220円
合計 3,062,638円

備考

備考
自己資金638円

公開日・更新日

公開日
2022-11-15
更新日
-