輸血副作用の原因遺伝子ハプトグロビン欠失アリルの迅速簡便な診断法の確立と輸血前診断への臨床応用

文献情報

文献番号
200838056A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血副作用の原因遺伝子ハプトグロビン欠失アリルの迅速簡便な診断法の確立と輸血前診断への臨床応用
課題番号
H20-医薬・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
神田 芳郎(久留米大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐川 公矯(久留米大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血後アナフィラキシーショックの原因の一つとして血漿蛋白欠損が知られているが、日本人ではハプトグロビン 欠損症が最も高頻度で出現し、2005年度から各種血液製剤の添付資料の「慎重投与の項」に記載されるようにもなった。本研究計画は、ハプトグロビン欠損症のうち先天性無ハプトグロビン血症の原因遺伝子ハプトグロビン遺伝子欠失アリル(Hpdel)の、臨床現場でも利用可能な迅速診断法を確立し、より安全な輸血医療の遂行を目的とする。
研究方法
TaqManプローブを用いたリアルタイムPCR法により希釈した血液サンプルを鋳型とし、1サンプルにつき1つのチューブでHpdelの接合性を判定するシステムをさまざまな実験条件で検討した。さらにこの実験系を発展させてハプトグロビンの主要な遺伝子型Hp1, Hp2の判定とHpdelの検出を同時におこなうtriplex PCR法について検討した。
一方で、初期費用が低く、幅広い機器で利用可能であるSYBR Green Iを指標としたリアルタイムPCR法による判定法を確立するために様々なプライマーの組み合わせでも条件を検討した。
結果と考察
TaqManプローブを用いたリアルタイムPCR法により希釈した血液サンプルを鋳型とし、1サンプルにつき1つのチューブでHpdelの接合性を判定するシステムが構築できたため、現在輸血前患者の検体を用いて血液から直接の遺伝子判定を開始している。この系では現在、最良の結果を得るための血液の希釈法を検討中である。
ハプトグロビンの主要な遺伝子型であるHp1/Hp1、Hp2/Hp1、Hp2/Hp2の判定とHpdelの検出を同時におこなうtriplex PCR法をデザインし、多数検体でこの判定法の結果が従来の判定法の結果と一致することを確認した。
SYBR Green Iを指標としリアルタイムPCR法では10種類程度のプライマーの組み合わせを検討しており、Tm値の違いからHpdelの接合性を判定できるプライマーの組み合わせを検索している。このようなプライマーの組み合わせを決定できれば、今後はTaqManプローブ法と並行して輸血前患者検体を用いて血液から直接の遺伝子判定を行ってゆきたいと考えている。
結論
希釈血液を直接鋳型とするTaqManプローブ法を用いたHpdelの接合性を判定するシステムを構築し、現在この方法を用いて輸血前患者検体を用いて血液から直接の遺伝子判定を実施中である。今後はこれらの結果をもとに様々な迅速診断法を確立しそれぞれを比較することにより、臨床現場で利用できる最適な診断法を確立してゆく予定である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
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