新型インフルエンザワクチンの性状及び免疫原性の正確、かつ迅速な評価方法に関する研究

文献情報

文献番号
200838053A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザワクチンの性状及び免疫原性の正確、かつ迅速な評価方法に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田中 明子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 笠井 道之(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 矢野 茂生(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 板村 繁之(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本で開発中の新型インフルエンザワクチンは、強毒性に関与する遺伝子の一部を改変して作成したワクチン株を、ホルムアルデヒドにより不活化した後、アジュバントを加えた製品である。現在流通しているHAワクチンと異なるこの製剤の品質管理には、粒子性やウイルス核酸の状態、多様な成分により惹起される免疫誘導能の正確な評価などについての新しい手法が要求される。本研究では、3つの角度から新規品質管理手法の検討を行った。
研究方法
2008年度ワクチン株3種類を増殖、精製したのち、ホルムアルデヒドで不活化したもの、及び市販(全4社)のHAワクチンを購入して、解析に用いた。粒子形状の測定には、動的光散乱測定装置を用いた。ワクチン等不活化ウイルスからの核酸の分離とPCR、細胞にワクチンを添加した後のNF-kBの活性の測定などは、常法に従った。
結果と考察
ホルムアルデヒド処理したインフルエンザウイルスは、平均粒子径に差はないものの、超音波処理に抵抗性を示す等、形状が変化することが、明らかになった。ワクチン中の核酸については、製造所間で差はあるが、プロテアーゼによる処理などにより、不活化ウイルス粒子からのみならず、HAワクチンからもウイルス核酸が分離出来、PCR増幅後の同定、定量も可能であり、目的の株が正確に複製されているかどうかを不活化後でも検証できることがわかった。転写因子(NF-κB)の下流にレポーター遺伝子を組み込んだヒト由来細胞株を用いてワクチンの免疫誘導能力の評価を行う系を構築した。測定を経時的に行うことにより、ワクチン中のウイルス分子の不活化プロセスをより厳密に管理することが可能となった。
結論
ワクチン中のウイルス粒子や核酸の性状について検討した。動的光散乱装置を用いることにより、ウイルス粒子の形状の変化を簡便、かつ精密に測定することができた。また、製造所間で差はあるが、市販のHAワクチンからも核酸が分離出来た。PCR増幅後の同定、定量も可能であり、不活化後でもその配列を検証できることも明らかになった。 NF-κB活性発現を指標にしたワクチンの免疫誘導能力の評価系を構築し、正確かつ簡便な測定が可能になった。これら3種類の方法を組み合わせることにより、ワクチンの不活化プロセスをより精緻に解析、制御することが可能になった。より正確で、迅速な手法の開発にむけて、研究を続けている。

公開日・更新日

公開日
2009-04-21
更新日
-