生体内埋設型医療機器の素材に係わる生物学的な安全性評価に関する研究-発がん性を主体とした再評価と国際調和-

文献情報

文献番号
200838051A
報告書区分
総括
研究課題名
生体内埋設型医療機器の素材に係わる生物学的な安全性評価に関する研究-発がん性を主体とした再評価と国際調和-
課題番号
H20-医薬・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
関田 清司(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 児玉 幸夫(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 高木 篤也(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 大室 弘美(武蔵野大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、人体に埋植される生体由来を含む種々の人工材料の安全性に関する従来の動物実験の問題点を見直すこと、及び、可能性としての「細菌共存環境」がげっ歯類特有の異物好発がん性の誘因であることを検証するとともに、異物発がんメカニズムを遺伝子レベルで明らかにすることである。
研究方法
板状のプラスチックまたはガラスの皮下移植手術をマウスに実施し、無菌環境下あるいは非無菌環境下で長期飼育を行い、その発癌率を比較する。発癌高感受性のp53遺伝子ヘテロ欠失無菌マウスを作製し、同様に埋植手術を行い、その発癌率を比較する。さらに、術野の厳重消毒と簡易消毒の異物発がんに及ぼす影響を調べるため、p53ヘテロ欠失マウスを用いた比較実験を開始した。異物発がんメカニズムを明らかにするため、これらの試験の埋植部位の組織を対象にした遺伝子発現解析を定量的マイクロアレイ解析法(Percellome法)を用いて調べる。埋設材料の有害性に関する調査研究のため、内外の文献を収集整理するとともに、医療用埋設材料の安全性試験に関する情報収集を行う。
結果と考察
p53+/-マウスで、埋植部位に腫瘍発生が認められ、プラスチックに比べ、ガラスでより強い腫瘍誘発性が認められた。ガラスを埋植した群では、コンベンショナルな条件下で飼育したマウスはgerm freeの条件下で飼育したマウスより早期に腫瘍発生が認められた。埋植による腫瘍形成メカニズム解析として、埋植異物周囲に形成される反応組織、腫瘍を対象としたマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行うため、経時的に組織を採取した。安全性試験における手術環境及び手技等における無菌性に関する文献情報の収集、及び、国内のGLP施設に対するアンケート調査を行なった。これらの結果、「細菌共存環境」が埋植材料の発がんを促進することが示唆された。
結論
医療用埋設物安全性評価の正確性の向上のため、マウスの長期無菌飼育試験の基盤を確立し、「細菌共存環境」が埋植材料の発がんを促進する要因であることを示唆する知見を得た。また、調査研究として医療素材の移植実験に関する情報を整理した。

公開日・更新日

公開日
2009-05-14
更新日
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