家庭用品規制法における有害物質の指定方法のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
202126004A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用品規制法における有害物質の指定方法のあり方に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
19KD2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 井上 薫(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
22,729,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
家庭用品規制法では、家庭用品に含有される物質のうち人の健康に被害を生ずるおそれのある21種類の有害物質について対象家庭用品中の基準が設定されている。近年、様々な化学物質が使用された多種多様な家庭用品が開発され、想定外の目的や方法で家庭用品に化学物質が使用されたことによる、健康被害の発生も報告されている。このような、家庭用品を取り巻く状況変化に応じた、新たな有害物質の指定や対象家庭用品の見直し等が必要である。有害物質の指定は、指定候補物質の健康被害報告、諸外国規制、学術文献等の資料をもとに審議されるが、候補物質の選定方法やその資料となる情報の収集方法は定められておらず、随時検討しているのが現状である。本研究は、家庭用品規制法における有害物質指定候補物質の明確な選定基準及び方法など、指定のあり方を提案することを目的に、諸外国の家庭用品中化学物質の規制基準の設定方法等を調査すると共に、家庭用品の特性を考慮した化学物質の毒性及び曝露情報に関する情報源を探索し、その提供内容の有用性について評価する。これらの情報等に基づいて、有害物質を含有する家庭用品のリスク評価手法について検討し、有害物質の指定のあり方を提案する。
研究方法
化審法の優先評価化学物質(242物質)を対象に、有害性及び曝露情報(製造輸入数量及び用途情報)のスコア化法を検討した。人健康の有害性に関するスコア化は、慢性影響は化審法のスクリーニング評価、評価Ⅰまたは評価Ⅱにおける公表されている有害性クラスあるいは有害性評価値を調査し、短期曝露による影響(急性毒性、刺激性(皮膚、眼、呼吸器)、感作性(皮膚、呼吸器))は政府による化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)分類結果を調査し、有害性クラス、有害性評価値、GHS区分に応じて条件を設定し、それぞれスコア付けした。さらに、各物質の慢性及び短期曝露影響のスコア合計を有害性スコアとして、優先順位付けに供した(最大60点)。皮膚感作性について、OECDテストガイドラインあるいはPubMed検索による学術論文の調査等を実施し、最近の国内外の動向に関する情報を収集・整理した。曝露情報に関するスコア化は、製造・輸入数量は年度ごとに6段階にスコア付けし、2015~2019年度の5年間の平均スコアを用いて優先順位付けした。用途情報は、独立行政法人製品評価技術基盤機構「身の回りの化学製品」や学術文献、国内の製造・販売メーカーのホームページ及び米国のConsumer Product Information Database 等を情報源として分類し、6段階にスコア付けした。製造・輸入数量及び用途別スコアを合算し、曝露スコアとして算出した(最大60点)。最終的に、各物質の有害性スコアと曝露スコアを合わせ、総合スコアを算出した(最大120点)。
結果と考察
対象242物質の総合スコアを算出したところ、家庭用品用途が確認できなかったヒドラジンが比較的高いスコアを示した。そこで、家庭用品用途が確認できない物質を除外したところ、スコア付けされたのは196物質であった。欧州連合の化学品の登録、評価、認可及び制限に関する欧州議会及び理事会規則の高懸念物質(SVHC)及び制限物質、並びに我が国の室内濃度指針値策定物質の指定状況を調べ、それぞれの物質の総合スコアを比較した。その結果、下位スコアを付けるSVHC及び制限物質はほぼなかった。特に、70点以上のスコアを付けた物質は、ほとんどが制限物質に相当し、上位2位までのスコアの4物質は全て制限物質であった。また、我が国において室内濃度指針値が設定されている13物質のうち、本調査で対象となっている9物質は、1物質を除いて、71~101点と上位に位置していた。そのため、考案したスコア化法は妥当と考えた。ただし、曝露情報については主要用途と家庭用品用途との使用量の差異や輸入製品中化学物質が把握できていないこと、また有害性の情報が得られないために総合スコアが低くなる物質が存在することなどに注意する必要がある。
結論
化審法の優先評価化学物質を例に、有害性及び曝露情報に関してスコア付けし、家庭用品規制法において指定を優先すべき有害物質候補をリスト化することができた。既存の信頼性の高い情報を効果的に収集することによって、妥当なスコア付けが可能であることを明らかにした。本研究で考案したスコア化方法は、家庭用品規制法における有害物質候補の選定基準及び選定方法として提案できるものと考えられる。なお、このスコア化方法については、第三者評価による妥当性の検証と必要に応じて修正を行うことが望ましい。

公開日・更新日

公開日
2022-07-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-07-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202126004B
報告書区分
総合
研究課題名
家庭用品規制法における有害物質の指定方法のあり方に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
19KD2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 井上 薫(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
家庭用品規制法では、家庭用品に含有される物質のうち人の健康に被害を生ずるおそれのある21種類の有害物質について対象家庭用品中の基準が設定されている。近年、様々な化学物質が使用された多種多様な家庭用品が開発され、想定外の目的や方法で家庭用品に化学物質が使用されたことによる、健康被害の発生も報告されている。このような、家庭用品を取り巻く状況変化に応じた、新たな有害物質の指定や対象家庭用品の見直し等が必要である。有害物質指定は、指定候補物質の健康被害報告、諸外国規制、学術文献等の資料をもとに審議されるが、指定候補物質の選定方法やその資料となる情報の収集方法は定められておらず、随時検討しているのが現状である。そのため、有害物質指定候補物質の明確な選定基準及び方法などを定めておく必要があり、本研究は家庭用品規制法における体系的な有害物質の指定のあり方を提案することを目的とした。
研究方法
本研究では、諸外国の家庭用品中化学物質の規制基準の設定方法等を調査すると共に、家庭用品の特性を考慮した化学物質の毒性及び曝露情報の収集方法の検討として、それらの情報源を探索し、その提供内容の有用性について評価した。これらの情報等に基づいて、有害物質を含有する家庭用品のリスク評価手法を検討し、有害物質の指定を検討すべき物質の選定のあり方を提案した。諸外国の規制基準については、欧州連合(EU)及び米国等の法規制状況や基準策定方法について調査した。毒性情報については、家庭用品に使用されている、あるいは使用されている可能性がある物質の一部を対象に、健康被害要因として評価すべきと考えられた毒性項目について、化審法のスクリーニング評価における毒性情報収集法が適用可能か検討した。また、国内の人健康影響評価の結果の活用可能性を検討するため、対象物質の評価状況について化審法データベースを調べた。曝露情報については、化学物質の生産量や用途情報を各種情報源から入手し、整理・比較した。また、国内外の研究機関等から示されている各種曝露シナリオ及び曝露量の算出式を調査した。最終的に、化審法の優先評価化学物質(242物質)を対象に、有害性及び曝露情報(製造輸入数量及び用途情報)のスコア化法を検討した。人健康の有害性に関するスコア化は慢性影響及び短期曝露影響についてスコア付けし、そのスコア合計を有害性スコアとして、優先順位付けに供した(最大60点)。曝露情報に関するスコア化は、製造・輸入数量及び用途情報をそれぞれ6段階にスコア付けし、それらを合算して曝露スコアを算出した(最大60点)。最終的に、各物質の有害性スコアと曝露スコアを合わせ、総合スコアを算出した(最大120点)。
結果と考察
諸外国の化学物質の規制や基準策定は、化学物質を有害性及び曝露の観点からスコアリングし、優先順位付けしてから行っていた。家庭用品規制法における有害物質指定の優先順位付けをするためには、既存の法規制のスキームや情報源を利用することが好ましく、化審法にて収集している情報を利用し、必要に応じて家庭用品規制法の意図に即した情報を追加したスコア化法が最も効率的であると考えられた。化審法の網羅的な情報収集法により、経口、吸入、経皮全ての曝露経路における、一般毒性、生殖発生毒性、遺伝毒性、発がん性、急性毒性、刺激性、感作性に関する情報を得ることができた。家庭用品に使用される化学物質の安全性評価のための毒性情報収集法として、段階的収集法を提案した。化学物質の生産量等の情報収集では、国内情報源を優先し、必要に応じて諸外国のデータを利用することが望ましいと考えられた。国内外の研究機関等から示されている各種曝露シナリオ及び曝露量の算出式を調査し、これらの情報は、今後、家庭用品規制法における有害物質候補物質が設定された後、詳細リスク評価を実施する際に有用になるものと考えられた。化審法の優先評価化学物質を対象に、家庭用品規制法における指定有害物質候補リストの作成を想定して、対象化学物質の有害性及び曝露情報のスコア化法を検討した。196物質について既存の信頼性の高い情報を効果的に収集することができ、妥当性のあるスコア化が可能であることを明らかにした。
結論
本研究で考案したスコア化方法は家庭用品規制法における有害物質候補の選定基準及び選定方法として、また、スコア化された優先評価化学物質リストは家庭用品規制法における有害物質候補リストとして提案できると考えられた。今後、第三者による妥当性の検証と必要に応じて修正を行ったうえで、スコア化方法及び有害物質候補リストが確定されることが望ましい。

公開日・更新日

公開日
2022-07-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202126004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
家庭用品規制法の指定候補物質の選定方法やその資料となる情報の収集方法は定められておらず、随時検討しているのが現状である。諸外国の調査結果を参考に、本研究で考案したスコア化方法は、欧州連合で規定される高懸念物質や制限物質、及び我が国の室内濃度指針値策定物質を上位優先にあげ、家庭用品規制法における有害物質候補の選定方法として妥当と考えられる。また、スコア化された優先評価化学物質リストは家庭用品規制法における有害物質候補リストとして提案できるものである。
臨床的観点からの成果
収集した化学物質の有害性や用途に関する情報は、家庭用品によって健康被害が生じたと考えられる症例において、その原因物質の究明に役立つ可能性がある。
ガイドライン等の開発
本研究の成果を基に、家庭用品規制法における検討対象物質選定スキーム(案)が作成され、令和5年度第1回家庭用品安全対策調査会(令和5年12月25日開催)で議論された。
その他行政的観点からの成果
本研究で開発された化学物質の選定方法とこれを用いて作成した優先評価化学物質リストについては、今後、第三者による妥当性の検証と必要に応じて修正を行う。そうした妥当性が評価されたデータ資料をもとにして薬事・食品衛生審議会化学物質安全対策部会及び家庭用品調査会で審議されることで、必要に応じてかつ効率的に家庭用品規制法における有害物質の指定が可能になり、消費者の健康保護を担う厚生労働行政の遂行に貢献する。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
家庭用品安全対策調査会での議論2件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
五十嵐良明
家庭用品中有害物質の基準及び試験方法の改正の経緯と今後について
国立医薬品食品衛生研究所報告 , 140 , 10-20  (2022)
原著論文2
河上強志
レギュラトリーサイエンス教材ポイントシリーズ「家庭用品中の化学物質による健康被害防止に向けた対策」
PHARM TECH JAPAN , 40 (8) , 81-85  (2024)

公開日・更新日

公開日
2022-07-13
更新日
2025-06-03

収支報告書

文献番号
202126004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
22,729,000円
(2)補助金確定額
22,729,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,593,393円
人件費・謝金 6,086,583円
旅費 1,008円
その他 14,048,016円
間接経費 0円
合計 22,729,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-07-28
更新日
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