血液製剤の安全性向上をめざした高圧処理による病原体不活化法の研究

文献情報

文献番号
200838043A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤の安全性向上をめざした高圧処理による病原体不活化法の研究
課題番号
H19-医薬・一般-029
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤は、病原体のスクリーニング法の導入によって安全性は飛躍的に向上した。しかし、血液を介して感染する病原体は多種あり、これらを全てスクリーニングすることは困難である。また、輸血用血液に対してはいくつかの方法があるが、安全性や有効性等から導入には慎重な意見もある。本研究班では、食品の無菌化に用いられている高圧処理技術を血液製剤の病原体の不活化に応用し、血液製剤の新しい不活化法の開発を目指した。
研究方法
昨年度の研究から病原体の不活化には3000気圧の高圧処理が必要であることが判明し、一部の血漿タンパク質は3000気圧では失活した。今年度は、4℃で高圧処理し、凝固第7、9、11、13因子、フィブリノゲン、ATIII、フォンビルブラント因子、プラスミーノゲン、プロテインC、プロテインS等の活性を検討した。さらに、エンべロープを持つウイルスとして日本脳炎ウイルス(以下JEV)、持たないウイルスとしてパルボウイルスB19(以下B19)を用いて室温又は4℃で3000気圧の高圧処理を行ない、不活化効率を比較検討した。また、高圧処理による病原体不活化効果を増強する因子を検索する目的で、仮性狂犬病ウイルスを用いて各種ディフェンシンを添加した場合の高圧処理効果、及び酸性下での高圧処理の効果について検討した。
結果と考察
4℃での3000気圧処理によって凝固第13因子の活性は著しく低下したが、他の血漿蛋白の活性はほぼ維持できた。また、B19は4℃と室温では高圧処理による不活化効果に変化が認められなかったが、JEVにおいては4℃では不活化効果が減弱した。高圧処理による病原体不活化効率の増加は各種ディフェンシンでは認められなかった。一方、酸性下に高圧処理することによって不活化効率は増強し、中性条件では不活化効果認められなかった2500気圧において、感染性のウイルスは検出感度以下まで不活化できた。凝固因子に対する酸の影響の解析はこれからであるが、検討した酸性条件は市販されている血液製剤と同等であり、少なくとも一部の血液製剤には応用が期待できる。
結論
低温条件で高圧処理することによって、各種血漿蛋白の活性は維持できたが、ウイルスによっては不活化効果が減弱することがあることが判明した。また、酸性下に高圧処理することで不活化効果が増強し、中性条件よりも低い圧でより効果的な不活化効果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200838043B
報告書区分
総合
研究課題名
血液製剤の安全性向上をめざした高圧処理による病原体不活化法の研究
課題番号
H19-医薬・一般-029
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤は、病原体のスクリーニング法の導入によって安全性は飛躍的に向上した。しかし、血液を介して感染する病原体は多種あり、これらを全てスクリーニングすることは困難である。本研究班では、食品の無菌化に用いられている高圧処理技術を血液製剤の病原体の不活化に応用し、輸血用血液にも応用できる安全で効果的な新しい不活化法の開発を目指した。
研究方法
高圧処理装置を用いて、0?4000気圧までの各圧におけるウイルスの不活化効率、各血漿蛋白の活性、血漿分画製剤の活性と変性について解析した。ウイルスの不活化はアルブミン又は血漿分画製剤に容量が10%以下になるようにウイルス液を添加して検体とした。また、高圧処理による凝固因子等の失活を抑えるために低温度(4℃)で高圧処理し、室温との差を比較検討した。さらに、不活化効果を増強する因子を検索するために各種のデフィンシン添加や酸性条件での高圧処理を行ない、不活化効果の増強の有無を検討した。
結果と考察
検討したウイルスの多くは3000気圧の高圧処理によって有効な不活化効果が得られた。室温で血漿を3000気圧の高圧処理を行なうと活性化部分トロンボプラスチン時間(以下APTT)とプロトロンビン時間(PT)は著しく延長したが、4℃で同様の高圧処理を行なうとAPTTやPTの延長を抑制することができた。詳細に解析すると凝固第7、9、11因子、フィブリノゲン、ATIII、フォンビルブラント因子、プラスミーノゲン、プロテインC、プロテインSの活性は保持できたが、第13因子は4℃でも著明に失活した。また、第8因子は50%の活性を維持した。一方、フィブリノゲン、ATIII、第9因子の活性は4000気圧でも保たれ、人免疫グロブリンは3600気圧まで変性しなかった。また、酸性条件下で高圧処理を行なうことによって不活化効果の増強が認められた。中性条件では不活化効果認められなかった2500気圧においても感染性のウイルスは検出感度以下まで不活化できた。
結論
輸血用血液に高圧処理法をそのまま応用することは、現状では困難であるが、新しい病原体の不活化法として血漿分画製剤への応用は可能であると考えられる。また、酸性条件等による高圧処理によってこれまで効果がなかった低圧においても不活化効果が得られることを発見し、輸血用血液にも応用できる可能性を見いだした。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-01-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200838043C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高圧処理によって病原体を不活化する方法は食品分野で既に導入されているが、血液製剤の不活化法として応用可能か検討した。多くウイルスは3000気圧で不活化されること、3000気圧処理では凝固第8因子と13因子が失活したが、それ以外の因子の活性は保たれ、特にフィブリノゲン、アンチトロンビン3、凝固第9因子は4000気圧でも活性が保たれた。血漿分画製剤の更なる安全性確保のための新しい機序の不活化法として応用可能であると考えられた。また、高圧処理による不活化効率の増強条件の発見は他に報告がない。
臨床的観点からの成果
高圧処理による病原体の不活化は、化学物質の添加が不要なため安全性の高い方法と考えられる。輸血用血液製剤への応用は凝固第8因子と第13因子が失活するため、このままでの導入は困難である。しかし、高圧処理効果を増強する条件を発見した結果、これまで効果が期待できなかった低圧でも不活化効果が得られ、新鮮凍結血漿の不活化法として応用できる可能性がある。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
輸血用血液に対する病原体の不活化法は血漿分画製剤に比べ、開発が遅れており、高圧処理による不活化法は輸血用血液への新しい不活化法に発展する可能性がある。また、不活化法としては従来の方法と全く機序が異なる方法であり、従来法では不活化し難かった病原体に効果的である可能性もある。さらに他の生物学的製剤の病原体不活化法として応用できる可能性がある.
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-