次期制度改正を見据えた医薬品市販後安全対策の再構築に関する研究

文献情報

文献番号
202125035A
報告書区分
総括
研究課題名
次期制度改正を見据えた医薬品市販後安全対策の再構築に関する研究
課題番号
21KC2006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
成川 衛(学校法人北里研究所 北里大学 薬学部臨床医学(医薬開発学))
研究分担者(所属機関)
  • 下川 昌文(山陽小野田市立山口東京理科大学 薬学部薬学科)
  • 前田 英紀(明治薬科大学 レギュラトリーサイエンス研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品の市販後における安全性等に関する情報について、主として製造販売業者から、副作用・感染症が疑われる症例情報の他、海外規制当局による措置情報、関連する研究論文等の報告を網羅的に求めている。今後、情報技術等の進展により多様な粒度の安全性情報が多く得られるようになることが予想されるとともに、疾患レジストリやReal World Dataの利用環境も整いつつある。情報量の増加と情報の多様化により、従来のように一律にそれらの情報を分析することが効率的ではない面や、解析するためのリソースの問題も生じてきている。このような背景を踏まえ、本研究では医薬品の市販後安全対策について、欧米等の規制や運用の具体的な状況、我が国における市販後安全対策の現状と問題点を網羅的に調査し、新たな市販後安全対策手法を提案することを目的とする。
研究方法
本研究は、(1) 海外における市販後安全対策の規制及びその運用状況に係る調査、(2) 我が国の市販後安全対策に係る現状把握及び問題点の抽出、(3) 新たな市販後安全対策手法の検討及び提案の3つから構成され、研究初年度は、上記(1)及び(2)の研究を進めた。
(1) 海外における市販後安全対策の規制及びその運用状況に係る調査:米国及び欧州における市販後安全対策の規制と運用状況について、規制当局(米国食品医薬品局FDA、欧州医薬品庁EMA)が作成・公表したガイドライン等の文書、関連する法令・規則を参照して必要な情報を収集し、整理した。
(2) 我が国の市販後安全対策に係る現状把握及び問題点の抽出:医薬品の副作用等の企業報告制度に関する現状把握と課題となり得る事項を抽出するため、当該制度の概要を整理するとともに、薬事・食品衛生審議会の公表資料を用いて報告内容の分析を行った。さらに、CiNii(国立情報学研究所(NII)学術情報ナビゲータ)において、我が国の市販後安全対策に係る課題について報告された文献を検索した。また、これまでの本邦における市販後安全対策に関連する活動として以下の3つを取り上げ、状況の分析を行った。①全例調査による製造販売後調査の現状と安全対策への反映、②先駆的医薬品指定制度により承認された医薬品のリスク管理計画書(国際比較)、③製造販売後調査における結果公開(企業ホームページでの結果公開の状況)
さらに、近年、日本で承認された新薬を対象として、市販後の安全性措置(使用上の注意の改訂指示通知)と承認前後の薬剤プロファイルの関係を分析した。あわせて製薬企業関係者及び規制当局関係者の意見も聴取しながら、次年度に実施する製薬企業を対象とした市販後安全対策に関するアンケート調査の準備を行った。
結果と考察
(1) 欧米での市販後安全対策の規制と運用状況に関する調査:米国及び欧州の双方において、自国・地域で管理する副作用データベース(FAERS、EudraVigilance)を用いたシグナル管理をルーチンに行うことがガイドライン等の文書に明示されていた。米国では、薬剤の特徴や有害事象・対象疾患の重症度などに応じて、スクリーニングの頻度・範囲、シグナルの閾値を調整する旨の記載があり、欧州では、ルーチンなシグナル検出方法に関する詳細なガイダンス文書の発出、シグナル管理の効率化を目指したパイロットプラグラムの実施などの取組みが行われていた。企業から規制当局に提出される個別症例安全性報告の対象・範囲については、ICHガイドラインに則って日米欧で概ね共通化されているが、研究報告や外国症例の取扱いに関する詳細については精査の必要がある。
(2) 日本の市販後安全対策の現状分析
多変量回帰分析により、抗悪性腫瘍薬、日本と欧米間の承認時期の差が小さい薬剤、市場での予測患者数が多い薬剤において市販後の安全性措置が講じられやすいことが示され、また、パス解析からは、抗悪性腫瘍薬は効能追加等の回数が多い、新規性の高い薬剤は市場での予測患者数が少ないという関係性が示唆された。これらの情報は、今後、個別の薬剤で市販後安全対策のメリハリをつけていこうとする際の基礎資料になると考える。
結論
研究を通じて、欧米との比較を交えつつ、我が国の市販後安全対策に係る現状を一定程度把握し、問題事項の抽出作業を開始することができた。今後、その運用実態を中心に、情報の収集及び分析を継続していくこととしたい。また、次年度に実施する製薬企業を対象とした市販後安全対策に関するアンケート調査の内容及び手順について検討を行い、調査票のドラフトを作成した。関係者の意見を聴取しながら検討を重ね、準備ができ次第、アンケート調査を実施に移すこととする。

公開日・更新日

公開日
2022-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202125035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,350,000円
(2)補助金確定額
4,062,000円
差引額 [(1)-(2)]
288,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 766,803円
人件費・謝金 1,440,085円
旅費 76,588円
その他 878,881円
間接経費 900,000円
合計 4,062,357円

備考

備考
実績報告にあたり、支出合計の1,000円未満の端数について切り捨て処理を行ったため

公開日・更新日

公開日
2023-06-15
更新日
-