医薬部外品成分の白斑誘導能の評価体系に関する研究

文献情報

文献番号
202125032A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬部外品成分の白斑誘導能の評価体系に関する研究
課題番号
21KC2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 伊藤 祥輔(藤田保健衛生大学 衛生学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,127,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ロドデノール(RD)配合薬用化粧品(医薬部外品)による白斑の発症に関しては、チロシンと共通の4-置換フェノールの構造を持ち、チロシナーゼの阻害活性を期待されたRDがチロシナーゼにより代謝され、オルトキノン体に変換されることが判明しており、この代謝と白斑発症との関連が示唆されている。本研究では、in vitroでのチロシナーゼとの反応性、チロシナーゼを発現させた細胞での代謝物の解析、医薬部外品に使用される可能性のある物質のチロシナーゼによる代謝物の構造と性質の解析を行って評価法の確立を目指す。
チロシナーゼによる酸化に続いてSHペプチドと結合させる試験系を水溶性の低い被験物質にも適用するため、同様のペプチドを用いる試験法において用いられる有機溶媒及びチロシナーゼの活性に対する有機溶媒の影響について調査を行う。
「フェノール性化合物のチロシナーゼによるオルトキノンへの代謝活性化」を、ヒトチロシナーゼ高発現293T細胞での代謝物解析により評価する方法について、今年度は白斑関連p-クレゾール(CRE)および発症報告の無いルシノール(RUC)を追加して検討する。
研究方法
Direct Peptide Reactivity Assay(DPRA)及びAmino Acid Derivative Reactivity Assay(ADRA)を用いた近年の研究報告について調査し、マッシュルーム由来チロシナーゼについてBRENDAデータベースにより調査を行った。293T細胞にヒトチロシナーゼを一過性に発現させ、24時間後に薬物処理を開始し、2時間後の細胞および培地を回収した。細胞生存率決定にはATP含量を、細胞内グルタチオンはグルタチオン-S-トランスフェラーゼの基質となる含量を測定した。細胞および培地の代謝産物は昨年度までに確立した方法により、HPLC電気化学検出法により解析した。
結果と考察
DPRA及びADRAではアセトニトリル、2-プロパノール、アセトン、5%DMSO含有アセトニトリルなどの溶媒が使用されていることがわかった。酸化を受けた被験物質のペプチドとの結合に関してはこのような水と混和する溶媒であれば影響は与えないと考えられた。また、チロシナーゼを用いた研究においてリン酸溶液が使用されていることがわかった。今後予備実験により有機溶媒存在下における活性が低下する場合には、有機溶媒でなくリン酸溶液を検討することも考慮すべきと考えられた。
オルトキノンが細胞内SH基との反応性が高いことを利用し、システイン、グルタチオン付加体の分析を検討した。白斑誘導の知られる7種のフェノール/カテコール誘導体(RD、ラズベリーケトン、4-S-システアミニルフェノール、モノベンジルエーテルヒドロキノン、4-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルカテコールおよびCRE)については、オルトキノン体がグルタチオンおよびシステイン付加体として検出された。一方、RUCや2-S-システアミニルフェノールについては、相当する代謝物は検出されなかった。さらに、オルトキノンへの代謝活性化は細胞内グルタチオン量への影響をもたらすことが判明した。
引き続き本法の汎用性を明らかにするために、白斑誘導性について報告は無いが、4-置換フェノール類であり、サプリメントとして広範に使用されているレスベラトロール(RES)およびエクオール(EQ)について解析を進めた。その結果、濃度依存的にオルトキノン体のチオール付加体が産生することが確認され、本法の適用範囲拡大がなされた。
結論
チロシナーゼによる酸化に続いてSHペプチドと結合させる試験系を水溶性の低い被験物質にも適用するため、同様のペプチドを用いる試験法において用いられる有機溶媒及びチロシナーゼの活性に対する有機溶媒の影響について調査を行ったところ、アセトニトリル、2-プロパノール、アセトン、DMSOやその混液、またリン酸溶液が使用されていることがわかった。
化学白斑発症の鍵と想定される「チロシナーゼによる代謝活性化」をヒトチロシナーゼ高発現細胞の代謝物分析により評価する方法を確立した。オルトキノン代謝物産生が細胞内グルタチオン低下をもたらすことが示された。白斑誘導性4-置換フェノール類に共通する代謝活性化の細胞での評価法の確立を受け、本法を同様な4-置換フェノール構造を有するが、白斑誘導の報告がないRESならびにEQに適用した。その結果、両者から濃度依存的にオルトキノン体のチオール付加体が産生することが確認され、皮膚への大量塗布の危険性が懸念された。

公開日・更新日

公開日
2022-08-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202125032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,127,000円
(2)補助金確定額
2,127,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,931,776円
人件費・謝金 0円
旅費 29,350円
その他 168,240円
間接経費 0円
合計 2,129,366円

備考

備考
自己資金2366円

公開日・更新日

公開日
2022-08-03
更新日
-